2014年8月 のアーカイブ

レンズカラーについて

レンズにカラーを入れるケースが多くなっています。カラーを入れる理由は3つ、「眩しさ防止」「コントラストの向上」「オシャレ」です。以前はレンズメーカーによって染色可能な色や濃さは違っていましたが、今は主なメーカーは全て統一カラーとなっています。ですから、基本は日本のどのメガネ店でも共通のカラーで対応しています。この統一カラーは「アリアーテ」と言います。(一部ですが、大手メガネチェーン店で独自のカラーを提案しているところもあります。)

このアリアーテは、全部で27色あり、27色を5つのグループに分けています。

グループは、「ナチュラル ベーシック」「クール スタイリッシュ」「エレガント スタイリッシュ」「モード」「スパークリング」です。最初の3グループにはそれぞれに4つのカラーがあり、濃さは5段階選べます。さらに染色方法は、全面=フル(F)とグラデーション(G)があります。モードは6色、スパークリングは9色です。

ナチュラルベーシックを例に説明しますと、色は、ブラウン系のアースブラウンとシャドーブラウン、グレー系のスカイグレーとシャドーグレーの計4色、濃度は10、15、25、35、50の5段階、10はフルだけですが、他はフルとグラデーションが選べます。グラデーションというのは上の方は所定の濃さの色が着いていて、真ん中くらいから下はだんだん色が薄くなっていきます。オシャレの効果がでますが、あまり縦幅の短いフレームではフルと区別がつきません。濃さを表す数字は、色によって違いますが、おおよそ光の透過率(の逆数)に近く、25ですと、25%通さない、逆に言うと光を75%通すというような目安になります。(イエローのように50でも80%以上通す色もあるのであくまでも目安。)10は一番薄く、着いているか着いていないかわからないくらい、あまり目立ちたくないけどさりげなくオシャレにという感じです。オシャレ目的としては、一般的に15がいいと思います。25は明らかに色が着いているのがわかりますが、オシャレ効果も高いと思います。室内では少し暗く感じますが、屋外でのまぶしさ軽減効果は25くらいから確かになります。なお、夜間の運転は透過率が75%未満は適していないので、一部の色を除いて35以上は不適です。モードは濃度が10,15、25の3段階のみ、スパークリングはサングラスカラーの位置づけになり、濃度は50、75、85で50のみグラデーション可、75と85はフルのみです。

実際のアリアーテで用意している色についてはSEIKO(ここをクリック)のホームページで確認してください。

メガネとは何か?(光学的にみて)

前回の調節力についての説明で、近視や遠視のことも少し触れましたが、もし興味がある方がいたら、もう少し説明が必要かと思いましたので、「光学的な側面から、メガネとは何か?」というテーマで述べてみたいと思います。

一言で言うと、『目を、正視で調節力がある状態に近づける道具』ということができます。

目は、約+(プラス)60D(ディオプター)の大変強い凸レンズです。近視の人は調節力を使わない状態(遠くを見る状態)で、60Dより強い度の目を持った人です。(調節力については前回のブログを参考にして下さい。)それで、遠くがぼやけてピントが合いません。例えば、63Dの目の近視の人には、-(マイナス)3Dのレンズを目の前に置くと両方で60D(+63D-3D)で正視の人と同じになります。また、遠視の人は調節力を使わない状態で、60Dより弱い度の目を持った人です。例えば57Dの目の遠視の人は60Dに3D足りないので、+3Dのレンスを目の前に置くか、自身の調節力で目を60Dにします。なお、実際は60Dという目の度数だけでなく、網膜までの距離も関係してきますが、複雑な説明にならないよう、正視=60Dとして説明しています。あと、乱視は目が球体でなく少しラグビーボールのように楕円で、物が歪んで見えます。(乱視も正確にはもっと説明が必要ですが、ここでは簡単に説明しています。)例えば目が水平に対して45°方向が-3D、135°方向が-2Dなら、近視で乱視の人ですが、それぞれのところが、+3Dと+2Dの(球面でない)レンズを目の前に置けば60Dになります。

この、目の前に置くレンズ、これがメガネです。

もうひとつ、調節力がある状態に近づける、ですが、これも前回のブログの内容を理解いただいていることを前提にして説明しますと、調節力が1Dになった老眼の人は、目の前33cmのものを見るためには、33cm=0.33m=3D(1÷0.33)と、自身の(持続可能な)調節力1Dの差+2Dのメガネを掛ければOKです。しかし、ここで問題がおきます。33cm先のものを見るにはそれでいいのですが、その状態ではっきり見えるのは50cmから33cmの範囲で、50cmから先はぼやけてしまいます。前回のブログではここは説明していませんが、老眼(で正視)の人が+2Dのメガネを掛けるということは、遠いところを見るということでは、62Dの近視の人と同じ状態になっているのです。(参考までに62Dの近視の人は、2D(62D-60D)の逆数(1÷2)=0.5mから先はぼやけることになっています。(数字を変えると、64Dの人は、25cmから先がぼやける。))そこで、縦の目線移動に着目して、全ての距離にピントが合うように開発されたのが、境目のない遠近両用メガネです。この遠近両用メガネは累進帯というエリアを持っています。累進とは連続的に変化していくということで、ここではレンズの度数が連続的に変化していきます。この遠近両用メガネは、メガネの上部が遠くを見るエリア、下部が近くを見るエリア、そして上と下をつなぐエリアが累進帯で遠くから近くへ目線移動でピントが合います。現在の科学では調節力が衰えた老眼の人が、調節力自体を取り戻すことは不可能ですが、目線移動で調節力がある状態の見え方に近づけることは可能になりました。それが遠近両用メガネで、調節力がある状態に近づけることができるメガネです。

目の調節力の衰えが老眼、調節についての豆知識

近くのものを見るために、目の中のレンズである水晶体の厚みを増し屈折力を強める(レンズの度を強める)働きを調節と言います。この調節の力が衰えるのが老眼です。調節力を表す単位は、D(ディオプター)で、レンズの度の単位です。調節力は10代が最も強く、20代以降だんだん弱くなります。具体的には10代では10D以上、20才で8.5Dくらい、30才で7Dくらい、老眼が始まったと意識される45才で2.5~3Dくらい、55才で1~1.5Dくらいです。この数字の意味を知っておくとおもしろいかもしれません。逆数にすると、すなわち1÷調節力でどれくらい近くが見えるかが計算できます。例えば、30才の7Dは1÷7=0.14メートル、すなわち本とかを14cmまで近づけても見えます。45才の2.5Dは1÷2.5=0.4m(40cm)、55才の1Dは1mです。もし、30cmで読書をしたいのなら、45才の人はちょっと調節力が足りません。30cmを逆にディオプターで表すと、3.3D(1÷0.3)なので、45才の2.5Dは、その差0.8Dをメガネで補ってあげれば快適に読書ができます。55才では、3.3D-1D=2.3Dのメガネがあれば大丈夫です。老眼鏡の強さで+1.0とか+2.0というのはこのことです。少し補足しますと、人が筋肉を使う場合と同様に、調節力も瞬間最大と持続可能という見方をします。55才の人が1mも離さなくても見えるよ、という場合、それは瞬間最大で、30分や1時間その状態で読書やパソコンは無理です。メガネは持続可能の度数に近い度で作る場合が一般的です。この調節力ですが、かなり年齢に比例(反比例)して衰えます。ほとんど例外なく全員が当てはまります。

ここから先は、「私は50代だけど老眼じゃない。近くがちゃんと見えるから。」という人や「私は、40才だけど近くが見づらい。早くも老眼?」という人向けに解説します。繰り返しますが、全員45才くらいから老眼になります。(正確に言うと20代からもう調節力は衰えているのですが) 個人差はあまりありません。個人差があるのは、それぞれの方の目自体の特徴、すなわち、正視、近視、遠視、(乱視)、で、こちらが上記のような違いの原因です。正視の人の目は調節力を使わない状態(遠くをみている状態)でピントが合います。近視の場合はこの状態でピントが合いません。理由は調節力を使わない状態で目のレンズの度数が正視より強いためです。具体的には、調節力を使わない状態で人の目は約60Dなのですが、近視の人は、例えば62D、その場合、-2Dのレンズ(メガネ)を掛ければ正視の人と全く同じになります。近視の人はメガネを掛けた状態で(遠くが良く見える状態で)は、先ほどの50代の人も近くは見づらいはずです。そして、メガネを外すと近くが見えます。この外した状態がまさしく正視の人が+2Dの老眼鏡を掛けた状態と同じだからです。一方、遠視の人は、調節力を使わない状態で、目が例えば58D、正視の60Dに2D足りません。この場合遠くは見えないかというとそうではありません。2Dの調節力を使えば見えます。しかし、遠視は正視が調節力を使わない遠くを見る時も調節力を使うので疲れます。遠視の人が近くを見る時は、正視よりさらにプラスの調節力を使います。上記の例でいくと、30cmのところを見るのに、正視は3.3D、-2Dの近視でメガネを掛けない場合は1.3D、遠視は5.3Dの調節力が必要です。これが遠視の人が早くに近くが見づらくなる理由です。なお、-6Dの近視の方とか、+3Dの遠視の方とか、人によって度は違います。

目の疲れを軽減するメガネ

目が疲れる原因はいろいろあると思いますが、デスクワークで目が疲れる主な原因は2つあります。ひとつは、調節力を使って目を緊張させた状態で長時間いること、もうひとつは、パソコンの画面から出る短波長の光にさらされることによります

人の目は、遠くを見ている時は調節力を使わずにリラックスした状態で見ていますが、近くを見る時には、無意識に瞬時にピントを合わせています。これは、わかりやすく言うと目の中のレンズである水晶体を膨らませて、レンズの度を強くしています。この状態が調節力を使っている状態で、これが疲れの原因になります。

もうひとつは、最近、液晶モニターのバックライトにLEDが使用されているものが多くなっていて、テレビやパソコン、スマートフォンなどの画面から発せられるLED(ブルーライト)が眼精疲労の原因になると言われています。このブルーライトは波長の短い光で、波長の長い光よりも散乱しやすく、目は頻繁なピント調節を行う必要があるため疲れると言われています。

この2つの疲労原因に対策を打つことにより、デスクワークでの目の疲れを軽減します。まず調節力をサポートするために、レンズの設計技術で、パソコンの画面や近くを見るエリアのレンズの度数を変化させることにより、約30%調節力を軽減させることができます。次に、レンズのコーティング技術で、ブルーライトをカットします。この場合2つの方法があり、透明のレンズのままカットする方法と、薄い染色によりカットする方法です。いずれも、通常のコーティングやカラーリングと違い、短波長のエリアをコントロールする特殊な技術で作られます。前者はレンズは透明ですが、少し光の反射が気になる場合があります。後者は光の反射はありませんが、レンズに薄い色、一般的に薄いブラウンが付きます。

ブルーライトカットメガネ(PCメガネ)

可視光線(波長380nm~780nm)の中で、380nm~500nmの波長の短い領域(短波長)をブルーライト(青色光)と呼んでいます。ブルーライトは、液晶ディスプレイを使ったパソコン、テレビ、スマートフォンやLED光源から多く発せられており、日常的に目に入っています。ブルーライトはエネルギーが強く、目の水晶体内で散乱しやすい性質があるため、まぶしさやちらつき、眼精疲労の原因となります。

メガネレンズメーカー各社から、このブルーライトから目を守る製品が出されています。大きく分けると2つの方式があり、ひとつはレンズ表面のコーティング技術により、ブルーライトを反射させてカットする方法と、もうひとつはレンズの染色技術によりブルーライトをカットする方法です。いずれも短波長の領域のみに作用するような特殊技術で、短波長を約30%カットします。ブルーライトをカットすることにより、まぶしさやちらつきが軽減し、見やすさがアップし、目の疲れを軽減します。

コーティング技術による方式のものは透明のレンズで、染色技術によるものは薄く色がついたメガネとなります。前者は透明ですが少し表面が反射している感じのメガネとなります。後者は反射している感じはありませんが、一般的にはブラウン系の薄いカラーレンズとなります。私は、染色の方を使っていて目の疲れ、特にずっとパソコンの画面を見ている時の目の奥の重たい感じが軽減されるのを実感しています。薄いカラーはオシャレ効果もあるのではないかと思っています。

最近テレビを見ているとニュースキャスターやコメンテイターのメガネで、このブルーライトカットのものをよく見かけるようになりました。このようなメガネを使っている方が増えてきていると思います。

調光メガネ

調光メガネは屋外ではサングラス、室内では透明のメガネに変化するメガネです。屋外でのまぶしさを軽減したりコントラストを高めます。調光レンズは紫外線に反応するので(ちなみに目に対しては100%紫外線をカットします)サングラスと違い、晴れでは濃く、曇りや夕方は薄く色付きます、これは、目にとっては、いつも一定の光量となり、快適な状態が保たれているということになります。欧米では調光メガネが大変普及しています。ファッションと同時に紫外線から目を守る、眩しさから目を守る、といった目のヘルスケアとしての認識も浸透しています。調光メガネの欠点としては、車内等紫外線カットのガラスの中では色が付きづらい、温度によって着き方が変化する(気温が低い方が濃くなる)、色が着いたり消えたりするのに数分かかるといったところです。現在この辺を改良した調光レンズとして、紫外線だけでなく通常の光にも反応するレンズが開発され発売されています。

キングオブサングラス

紫外線を100%カットし、眩しさの原因である乱反射をカットする偏光サングラスはキングオブサングラスとも言えます。偏光レンズは一般のサングラスとは異なり、偏光フィルターをレンズに挟み込んでいます。一般のサングラスは、紫外線や光の量はカットできても、眩しさの原因である、光が反射したギラツキはカットできません。この反射光により、通常私たちはいろいろな方向からの光に包まれていますが、偏光サングラスは偏光フィルターにより一定の方向の光だけを取り入れる事ができます。光のノイズとも言える反射光をカットすることで、水面や路面の反射などのギラツキが消え、ハッキリした視界が得られ、目への負担(疲れ)も軽減させます。

スポーツ用遠近両用メガネ

遠近両用メガネは、遠いところを見るエリア(遠用部)、パソコンの画面やその少し先を見るエリア(中間部)、手元を見るエリア(近用部)、がレンズの中で上から順に配置されています。ゴルフ等のスポーツでは、このうち遠用部の見え方が一番重要で、この遠用部を広くクッキリと見えるようにした設計の遠近両用メガネが適しています。そして、近用部の度数(加入度)を通常の遠近より少し弱めることによって、近くのものは通常の遠近よりすこしだけ離して見ることになりますが、その分側方(レンズの横の方)の収差が少なくなり、目線を横に移動したときの遠近特有の像のユレや歪みが大分解消されます。さらに加入度を弱めるということは、近用部の距離が少し遠くなるので、ゴルフ等足元を見るスポーツでは一般の遠近より見やすくなります。屋外スポーツでは、さらにレンズに機能カラー(コントラストを上げたり、チラツキを削減する)を着ければ、芝目や起伏やボールが見やすくなります。