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老眼とメガネの詳しい話

老眼て何?

それは、まず知ってそうでよくわからない目の基本から。

目はとても度の強いレンズです。度が強いというのは光の方向を変える屈折力が強いということで、ものを見るためには、目を通る光をグッと曲げて目の奥の網膜に集め、その情報を脳に伝える必要があります。虫眼鏡で太陽の光を一点に集められますが、目はその何倍も強いレンズで、ディオプター(D)という単位で表し、約60ディオプターです。

もうひとつ重要なことが、この屈折力を自動的に変えることができるということです。これを調節力といいます。遠くを見る時よりも近くを見る時は、目のレンズの度を強くしないと近くのものに焦点が合いません。では、どれくらい強くするのか?答えは3Dくらいです。遠くを見ている時の目の屈折力を60Dとすると、1D強くすると、目は屈折力61Dのレンズになります。簡単な計算式でどこに焦点が合うか計算できます。1÷1D=1.0mすなわち1m先のものに焦点が合いよく見えます。2D強くすると1÷2D=0.5mなので50cm先がよく見えます。3D強くすると1÷3D=0.33mで33cm先がよく見えます。3D強くすれば目は63Dとなり、手元がよく見えるということです。

さて、ここまで理解すると老眼のことがよくわかります。老眼はこの目のレンズの屈折力を強くする調節力の衰えのことです。これが衰えるから近くが見づらくなります。目にはレンズである水晶体という器官があり、水晶体を膨らませるとレンズの度が強くなり近くが見えます。加齢とともにこの水晶体を膨らませる力が衰えたり、水晶体自体が硬くなったりして、水晶体が膨らまなくなるのが老眼です。40代後半からそうなり、加齢とともに進みます。例えば、50才で調節力が+2Dだとすると、1÷2D=0.5mすなわち遠くから50cmまではよく見えますが、そこからさらに近いところは見づらくなります。例えば60才で調節力が+1Dだとすると1÷1D=1mまでです。

さて、それでは近いところを見るためにはどうしたらいいか?目自体の度を強くできないのならレンズ(メガネ)で補ってあげればいいということになります。手元33cmを見るためには調節力+3Dが必要でした。調節力+2Dの人は1D足りません。そこで+1Dのメガネを掛ければ+3Dとなり手元が見えます。

ちなみに、この調節力の衰え=老眼の進行はかなり年齢に比例し個人差が少ないものです。そう言うと、「私は(あるいは私の周りのあの人は)、60才だけどメガネを掛けなくて新聞を読んでいますよ。」という声が聞かれそうです。そのからくりは、目の性質によります。すなわち、近視とか遠視とかその話です。近視というのは、近くに焦点が合うので遠くが見づらい目です。もともとが60Dでなく63Dの目の人は近視です。3D強い目は1÷3D=0.33mに焦点が合います。その人が調節力を例えば+3D使ったときは66Dです。+6Dとは、1÷6D=0.16mで16cmに焦点が合います。この人は、33cmから遠くはボヤけます。それでは遠くが見えなくて、車の運転もできません。ではどうしたらいいか?マイナス3Dのメガネを掛ければ、63D-3D=60Dになり遠くがよく見えます。-3Dのメガネを掛けた状態で調節力+3Dを発揮すれば、63Dとなり手元も見えます。

ここでちょっと2点説明しておきますと、ひとつは調節力というのはプラスの力、目の度数を強くする力で弱くはできません。だからたとえば63Dの近視の目の人は66Dにできても、自力で60Dにはできません。もうひとつは、近視や遠視というのは目の度数と網膜までの距離との関係で決まるということです。平均的に60Dで眼球の大きさ等が平均的だと遠いものがちょうど網膜で結像するということで、例えば60Dでも網膜までの距離が長い人は近視になります。

では、話を戻して、老眼になった時に掛けるメガネのことを説明します。先ほどの話で、普段メガネを掛けていない人が老眼になって近くが見づらいのでメガネを掛けて近くを見えるようにしますが、そのメガネを掛けた状態で遠くを見るとどうなるか?目の度が60Dの人が+1Dのメガネを掛けると61Dの状態で遠くを見るということになります。これは1D分近視の状態で遠くを見ることになります。計算で言うと、1÷1D=1mで、1mから遠くはボヤけます。+1Dのメガネを掛けて近くは見えるようになったのですが、そのメガネを通すと遠くは見えなくて困るので、メガネの掛け外しや鼻メガネ状態が必要になります。

ちなみに、もう一人の63Dの近視の目の人は、調節力が+2Dに衰退すると、-3Dの近視用のメガネを掛けた状態で遠くは60DでOKですが、近く、例えば33cmのとこころは+3Dに対して調節力+2Dでは+1D足りません。-3Dの近視用メガネを掛けた状態では老眼により50cmより近くは見づらいのです。そこで、-3Dのメガネに+1Dして、-2Dのメガネを掛ければ近くはよく見えます。しかし、-2Dのメガネを掛けた状態では元々の63Dの目に-2Dのメガネで61Dで遠くを見るので、60Dに対して+1D近視の状態で遠くを見るため1mから遠くがボヤけます。そこで、-3Dのメガネと-2Dのメガネを状況のに応じて掛け替えるか、近くはメガネを外して、おでこに上げる等して見ます。

そこで便利なのが遠近両用メガネで、最初の人の場合、遠くは0D、近くは+1Dの遠近両用メガネにすれば、メガネを掛けたまま遠くも近くも見えます。次の近視の人の例で言えば、遠くは-3D、近くは-2Dの遠近両用メガネを掛ければメガネを掛けたまま遠くも近くも見えます。それぞれ、メガネの度は違いますが、この2人がそれぞれのメガネを掛けた時の見え方は同じです。遠近両用メガネの遠くと近くの度の差を加入度と言います。この場合、両方のメガネとも加入度は+1Dです。遠近両用メガネはその人の老眼の進み具合に応じて加入度が変わります。レンズの度は0.25Dが基本単位になりますが、老眼になりたての40代後半で加入度は+0.75~1.25くらい。50代で+1.25~2.25くらい。60代以降一般的な視生活では、加入度は+3.00くらいまでです。+3.00とうのは、その人の調節力が0でも33cmが見える度です。

メガネ店では、それぞれの人の調節力を測定して足りない分をちょうど補うような度のメガネを作ります。言いかえれば、その人の(残っている)調節力をしっかり発揮した上で足りない部分をメガネで補っています。メガネを掛けると老眼が進むのではと勘違いしている人もいますが、老眼の進行というのはだいたい加齢に比例し、個人差は若干です。脚の筋肉などは、衰えを遅らせるために日々のトレーニングなどで、60代でも30代なみの人がいるかもしれませんが、調節力はそういう訳にいきません。外見が若く見える60代の人でもさすがに30代に見られることは滅多にないのと同じで、個人差はあっても年相応の調節力の衰え、すなわち老眼になります。これは、学術的にもそうですが、私どもが日々多くの方を検眼していても例外がないことがわかります。すなわちメガネを掛けても掛けなくて老眼は進みます。一番問題なのは、見づらい状態で我慢して見ていることで、目にストレスがかかり眼精疲労や肩こり等の不調の原因にもなります。

今の遠近両用メガネは遠くを見るエリアと近くを見るエリアを連続的に度が変わって滑らかに結ぶエリアがあり、見た目は境目が無く単焦点メガネと変わりません。上下のわずかな視線の移動で遠くから近くまでピントが合います。また、使う人の目の状態や用途に応じて、各メーカーから多種のレンズが発売されています。メガネ店の重要な役割としては、それぞれの方に最適の度数やレンズの種類を選定することと、フィッティング技術などで目とメガネの正確な位置関係を実現することです。人は全体の情報量の80%を目から得ているとも言われています。老眼になっても無理をして見ているということは、ストレスがかかると同時に重要な情報を効率的に入手できないということです。適切な遠近両用メガネでスマートに仕事や生活の質を上げてみませんか?

市民タイムス7月掲載「知っておきたい遠近両用メガネの話」第3話

第3話 「中近メガネの構造と使い方」

老眼対策のメガネとしては、生活のほとんどの場面に対応できる遠近両用メガネが一般的ですが、より快適な視生活を実現するために中近メガネを併用する場合があります。

中近レンズの構造図

中近メガネは遠近両用メガネの設計技術を応用して作られたメガネで、設計上は中間部が20mm~25mmと長く、遠用部が狭い構造になっています。視線のほとんどが中間部と近用部を使うことになります。その結果、お手元からパソコンの画面あたりが遠近両用メガネより広い視界になります。遠用部が狭いのと度数が連続的に徐々に変化している中間部で少し離れたところを見るため、遠いところが少しぼやけたり、遠近両用メガネの見え方に慣れていると、使い始めの時に少し離れたあたりの見え方に違和感を感じる場合があります。では、中近メガネはどういう時に便利かと言うと、長時間のデスクワーク、細かいものを見る場合、また、50代後半以降で遠近でパソコンの画面をアゴを上げて見て疲れる等の場合に便利です。室内程度の距離ならだいたい見る事ができ、掛けたまま歩けます。中近レンズは、近く重視の設計や、遠くもある程度見える設計など、設計上の特徴が遠近両用レンズ以上にハッキリしています。また、メガネ店での度数の決め方やメガネフレームへのレンズのセット位置でも見え方がだいぶ変わります。それで、中近メガネを作る場合は、使用者とメガネ店でよく意思疎通をしておかないと、思惑通りのメガネにならない場合があるので要注意です。遠近両用メガネの場合もそうですが、メガネ店に相談に行く前に、現在見え方でどういう時に不便を感じているか、パソコンを長時間使うか、その場合のパソコンのモニター(画面)の目からの距離や高さなどを説明できるように整理しておくのが良いと思います。

ほかには、近々メガネというものがあります。老眼鏡に少し奥行きを持たせたメガネです。用途はほとんどパソコンを使うとき用で、特に老眼がだいぶ進んだ60代以降でパソコンを楽に見たい場合です。掛けたまま歩くのには適していません。

あと、老眼鏡を使う場合、既製老眼鏡は安くて便利ですが、目のためには測定に基づいた正確な度数と、瞳とレンズの焦点の正しい位置関係から作られたメガネをオススメします。

シニアの快適視生活

40代後半からの視生活を快適にするメガネとして、「遠近両用メガネ」「中近メガネ」「近々メガネ」「老眼鏡」があります。前者3つは、累進レンズというジャンルに入ります。累進レンズとは、1枚のレンズの中で、連続的に度数が変わる領域を持っているレンズのことを言います。

遠近両用メガネは、上部に遠いところを見るエリア、下部に近くを見るエリア、真ん中にそれを結ぶ中間エリア=累進帯(長さ11~14mm)が設計されています。目線を使い分けることで、遠くから近くまですべてに焦点があう万能メガネです。

では、何故、中近メガネや近々メガネというものが存在するのかということですが、遠くから近くまで自然に焦点が合うということは、30代くらいまでは、当たり前のことなのですが、これを可能にしているのが目の調節力で、無意識のうちに目(水晶体)を膨らませて、目というレンズの度を変えています。この調節力が衰えるのが老眼で、調節力がないと、焦点は一定の距離だけになってしまいます。それを補うのが、遠近両用メガネ等ですが、いろいろな生活シーンで若いころと同じような快適な視生活にするためには、道具としてのメガネを使い分ける必要があります。具体的には、デスクワークや読書等、近いところを見る時間が長い場合、また、かなり細かいものを見る場合、50代以降で調節力がだいぶ衰えてきた場合、等で、遠近両用メガネにプラスして、もう一本メガネがあると快適です。

遠近両用メガネは1枚のレンズの中で、遠くから近くまで焦点が合うように、各エリアが詰め込まれていて、その結果、遠くを見るエリアは比較的広いのですが、近くを見るエリアや中間エリアは少し狭くならざるを得ません。その狭いエリアを使って、長時間近いところを見たり、非常に細かいものを見るのは疲れます。また、調節力の衰えは年齢に比例して進行するので、それに合わせて、遠くと近くのレンズの度数の差も大きくしなくてはなりません。累進レンズは、レンズの横の方に「もの」が少し歪んで見えたり、ボヤけたりするエリアが存在し、慣れると気にならなくなりますが、度数の差が大きくなるほど、このエリアが大きくなります。したがって度数の差の弱いレンズよりも、各エリアのスペースが狭くなる、すなわち、近いところをより狭いエリアで見る事になります。

中近メガネはこのような時に快適に近くを見る事ができるように、遠近両用メガネより中間エリアや近いところを見るエリアを広くしたメガネです。特に中間エリアはかなり広く、24mmくらいあります。遠近両用に比べると、遠いところを見るときに少しもの足りなさを感じるかもしれませんが、室内程度の遠さは大丈夫なので、室内では掛けたまま歩いたりして過ごせます。パソコンを使うときに、遠近両用では目が疲れたり、アゴを上げる姿勢で首や肩が凝ったりすることがある場合、中近を使えばかなり楽になります。

老眼鏡は、累進帯がない単焦点レンズで、手元のみが良く見えます。メガネ全体どこで見ても手元はよく見えるので、読書や手元の作業等に便利です。しかし、手元だけなので、少し離れたところもボヤけ、掛けて歩くことは不可能です。

老眼鏡に少し奥行きを付けたのが、近々メガネです。老眼鏡だとパソコンの画面は、かなり近くにしないと見づらくなりますが、近々メガネは手元+少し離してもパソコンの画面くらいまで見えます。

このようにな特徴のある各メガネを上手を使い分け、効率良い仕事や、趣味を楽しまれている方がたくさんいらっしゃいます。見づらさや、見る事による疲れなどの不具合を感じていらっしゃる場合、メガネにより解決できるかもしれません。

今回は、シニアのメガネを説明しましたが、1人ひとりの目の状態や視生活環境は千差万別なので、その方に最適のメガネは、いろいろお聞きしながら、メガネの知識と技術を総動員して作りあげています。

中近メガネで解決

♪中近メガネはこんな方にオススメ♪

☆パソコンやデスクワーク、読書の時間が長い方

☆50代半ば以降で遠近メガネでパソコン等が見づらくなってきた方

☆室内でのお仕事の方

【何故中近メガネがよいか?】 遠近両用メガネはオールマイティの常用メガネとして必要ですが、遠いところを見るエリア(遠方)、パソコンの画面やその少し先位を見るエリア(中間)、手元を見るエリア(近方)、がレンズの中に配置されていて、遠用部が一番広く配置される為、中間部と近用部はコンパクトになっています。(下図左参照) 老眼の度が進んでくると(加入2.00以上 55才以上)、設計上中間部はさらに狭くならざるを得ません。

通常の視生活では問題ありませんが、長時間のパソコン、読書、細かい物を見る、等では狭いエリアを多用するので見づらくなったり、疲れたりします。また、少しアゴを上げて画面を見たりするので姿勢的に疲れる場合もあります。中近メガネは遠用部より中間部と近用部を広く設計したメガネです。(下図右参照) 欠点は遠用部が狭いため車の運転等遠くを見る事には適していません。しかし室内くらいの距離ならOKですので、一般の老眼鏡のように掛けたままでは歩けないことはなく便利です。パソコンの画面や手元は圧倒的に遠近より広いので楽です。

遠近両用メガネ相談会実施中

まちゼミ(松本まちなかゼミナール)で「遠近両用メガネのしくみと快適な使い方」をテーマにセミナーを行ったところ「知りたい事が聞けてよかった」というお声を多数いただきました。そこで、引き続き個別相談会という形で実施したいと思います。