2026年7月 のアーカイブ
著書 遠近両用メガネや中近メガネを快適に使いこなすコツ
遠近両用メガネや中近メガネを快適に使いこなすコツ
老眼とメガネのことがわかる本
はじめに
私は地方都市でメガネ店を経営しており、日々お客様に接しています。ただメガネを販売するだけでなく、お一人お一人に、できるだけ詳しく目のことやメガネのことをご説明していますが、ご自身の目のことやメガネのことについて、なかなか詳しく聞く機会がなかった、という声をよく聞きます。
そこで、10年ほど前から地元の地方紙に「老眼世代の快適視生活講座」と称して、老眼と遠近メガネのことを中心にコラムを載せており、おかげ様で「いつも読んでいますよ」とか「ためになります」という声をお聞きしています。
今回特に、老眼で見え方にお悩みの方の一助となればと、今までの記事の内容を整理して書籍として出版しました。毎月の記事を読み返すと、似た内容で書かれていることもあり、今回出版するにあたって重複内容はできるだけ削除しましたが、一部繰り返しの説明になっていることはご容赦ください。
人生100年時代、40代中ごろからなる老眼とは人生の後半ずっとお付き合いしていかなくてはなりません。情報の80%は目から入ると言われています。老眼を快適に過ごす方法を知っているかいないかでは、後半の人生のクオリティーに差が出ると言っても過言ではないと思います。本書はいろいろなテーマで、老眼とメガネのことを説明しているので、目次を見て気になるところだけみていただいても、きっとお役に立てるだろうと思います。
表題の遠近両用メガネは、遠近メガネ、遠中近メガネ、単に遠近、などと呼ばれますが、違うカテゴリーのメガネがあるわけではなく、みな同じものを指しています。半世紀以上前までは、遠と近だけの境目のあるメガネ(バイフォーカル)が存在しましたが、現在はそういう遠近は少なくなり、境目がなく遠くから近くまですべての距離にピントが合うメガネに置き換わっています。しかし呼称だけは昔と一緒で遠近両用や遠近となっています。同じカテゴリーのメガネですが、いろいろな仕様があり、またメガネ店も様々なので、プロに任せておけばいいという考え方もあると思いますが、この本がご自身の目のこと、そして毎日使うメガネのことについて知っていただく機会になれば幸いです。
目次
はじめに
第一章 老眼とその対策
健康的でクールな遠近両用メガネ
遠近両用メガネとは
進化する遠近両用メガネ
遠近両用メガネの仲間たち
第二章 メガネ購入時のアドバイス
メガネ購入前の一般知識
メガネ購入時のアドバイス(レンズ編)
メガネ購入時のアドバイス(フレーム編)
遠近両用メガネ購入時のアドバイス
メガネ購入後のアドバイス
第三章 老眼と遠近両用メガネの詳しい話
老眼の詳しい説明
遠近両用メガネの説明
第四章 目とメガネについてテーマ別記事
<目についての記事>
老眼に引っ張られて目が変わる!?
遠視について
乱視について
検眼について
<メガネについての記事>
遠近両用メガネや中近メガネが使いづらい場合
メガネの値段を解剖
老眼の人に、仕事の効率アップができるメガネ
気持ちいい「掛け心地」と「見え方」
まぶしさや目の疲れをやわらげるメガネ
勉強やデスクワークを楽にするメガネ
目の疲れを緩和するコツ
メガネの掛け心地の点検
メガネレンズのコーティングについて
メガネレンズの選び方
メガネレンズ開発の歴史
便利なメガネの紹介
第五章 よくある質問Q&A
Q:遠近両用メガネは「試したが掛けられなかった」という話を聞くが
Q:遠近両用メガネを使っているが、どうも見えづらいのだが
Q:遠近両用メガネを掛けると老眼が進むのでは
Q:自分は近くが見えるので老眼ではないのでは
Q:老眼になったら、遠近両用メガネをかけなくてはいけないか
Q:初めての遠近両用メガネ、慣れられるか
Q:遠近両用メガネを掛ければ若いころと同じように見えるか
Q:老眼はいつまで進むのか、メガネは買い替えなくてはいけないか
第一章 老眼とその対策
老眼について
老眼とは、普段メガネをかけていない人が近くが見づらくなる状態、近視で普段メガネをかけている人はメガネを掛けた状態で近くが見づらくなる状態をいいます。目の中の水晶体の硬化や筋肉の衰えで、遠くから近くまで自在にピントを合わせられなくなった現象ということでは全員同じなのですが、元々の目の特徴により、生活上の不具合が異なります。
目の特徴とは、若いころからメガネに無縁の「正視や弱い遠視の人」。遠くは少し見づらいので、運転等必要な時に掛ける「弱い近視の人」。遠くが見えないので常時メガネかコンタクトレンズを使っている「強めの近視の人」。皆さんもどれかに当てはまると思います。
正視の人は45才くらいから、遠視の人はもう少し早くから近くが見づらくなり、50代では対策が必須となります。手軽なのは老眼鏡ですが、掛けたまま遠くを見るとクラクラして歩くことができず、遠近両用メガネに切り替えると生活の質がだいぶ向上します。
弱い近視の人は40代では近くは大丈夫ですが、50代になると近くが見づらいことがあり、50代半ばからは遠くも近くもぼやけた状態で生活しています。遠近を掛ければ遠くも近くもよく見える別世界になります。
メガネを常用している近視の人で、遠くがしっかり見えるメガネを掛けている人は45才くらいから、遠くの度を落としている人は50才くらいからメガネを掛けた状態で近くが見づらくなります。強めの近視の人はメガネを外して近くを見るにはピントが近すぎ、遠く用、近く用の2本使い分けるのは面倒なので、早くから遠近を掛けている人が多く、また初めての遠近も他の目より慣れやすい傾向があります。
健康的でクールな遠近両用メガネ
手元の文字などが見づらくなってきたときの対策として、普段メガネを掛けていない人は、手元用のメガネ、いわゆる老眼鏡を使うのが手っ取り早い方法かと思います。また、近視で普段メガネを掛けている人はメガネを外して近くを見ます。いったん解決はするのですが問題もあります。
例えば買い物の時に、商品説明や価格の字が小さい場合や印刷が薄い場合は、意味不明なので老眼鏡を取り出します。掛けたままでは歩けないので、その後、外すか鼻メガネにします。会議や商談や食事などでも、資料やメニューを見るときは老眼鏡が必要、ホワイトボードを見るときや対面の方と話すときは外したい、頻繁に掛け外すか、鼻メガネにして上目づかいで見るかになります。
近視で普段メガネを掛けている方は、先ほどの鼻眼鏡の方と逆のしぐさでメガネの掛け外しが必要になります。商品を見るときはメガネを外し、歩き出すときにはまた掛ける、資料やメニューを見るときも外しホワイボードはまた掛ける、こちらも頻繁に掛け外しが必要です。
遠近両用メガネがいいのは、掛け外しが必要ないことです。境目がなく、見た目は普通のメガネですが、視線を上下に少し動かすだけで遠くから近くまでピントが合います。近視の方はメガネを遠近に変えるだけ、普段メガネをかけていない方は必要な時だけ遠近を掛けてもいいですし、ずっと掛けていてもいいです。
初めて遠近メガネを掛けるときに慣れが必要な場合がありますが、きちんと作られた遠近メガネなら比較的短時間で慣れられます。老眼で見づらいのを無理して見ることが疲労や肩こりの原因になったり、前述の鼻メガネやおでこメガネが年令を感じさせる仕草であったりすることを考えると、遠近メガネは健康的でクールなメガネと言えます。
遠近両用メガネとは
遠近両用メガネは、レンズの上の方に遠用部(遠くを見るエリア)、下の方に近用部(近くを見るエリア)があり、中間部(連続して徐々に度が変わるエリア)で結ばれています。境目はなく見た目は普通のメガネと見分けがつきません。遠近メガネは目線の上下移動で遠くから近くまでピントを合わせることができ、老眼時の視生活の質を飛躍的に向上させるメガネです。
遠近メガネの度について説明します。普段メガネをかけている近視や乱視の人には、同じような遠くを見るための度が遠用部に入り、普段メガネをかけていない正視や遠視の人には、遠用部は度なしか遠視の度が入ります。近用部の度はその人が必要とする加入度によって決まります。人の目は近くを見るときには無意識に目の中のレンズ(水晶体)を膨らませて度を強め、近くにピントが合うようにします。これを調節力といい、この調節力の衰えが老眼です。具体的には手元33cmを見るためには+3.00の調節力が必要です。老眼の進み具合を測定し、例えばその人の調節力が+2.00の場合は遠近レンズで不足の+1.00を補います。この+1.00が加入度です。
快適な遠近メガネのためには、メガネと目の適正な位置関係が重要です。メガネが所定の位置より下がっていると近用部に目線が届かず、近くが見づらくなります。逆に上がっていると、遠方視で中間部に視線が入り、ぼやけた感じになります。また目とメガネの距離も重要です。遠近レンズにはレンズの横の方両側に、収差といって少しぼやけたり歪んだりするエリアがあります。通常はこのエリアにはあまり目線が入りませんが、メガネが目から離れていると収差が視界に入って気になったり、近すぎると近用部に目線が届かなかったりします。それでメガネ店のフィッティング技術による適正な位置が重要になります。
進化する遠近両用メガネ
遠近レンズは、外面累進→内面累進→両面制御設計と、基本設計の進化と、個々の使用者に合わせたカスタマイズ設計の進化により、広い視野と自然な見え方を実現してきています。広い視野とは、遠近レンズの横の方の収差をできるだけ少なくして、明視域を広くしていることです。
滑らかに度が変わる累進設計により、境目がなく、遠くから近くまですべての距離にピントが合うのが今の遠近レンズですが、累進面は予めレンズの外面(おもて側)に作っておき、使用者ごとに異なる近視や乱視や遠視の度を、注文後レンズの内面(うら側)を研磨して仕上げます。これが一般の遠近レンズで外面累進レンズといい、低コストでの生産が可能ですが、同じ累進設計で、個々の多くの度に対応するため、基準の度からずれると性能にバラツキが生じるという欠点もあります。
外面累進に対して内面累進は、注文後累進面と個々の度数を全てレンズの内面で設計し生産します。複雑なレンズ設計の技術と、それを製品化する生産技術の革新により実現したレンズで、外面累進より視野が広く性能のバラツキもありません。
両面制御設計は、内面累進技術をベースに外面で補正を加えることにより、レンズを通して見ることによる「もの」の大きさや形のズレを補正して、自然な見え方になります。
このような基本設計に加えて、カスタム化というのは、それぞれのメガネの装用条件、フレームの形や、目との距離、角度などを測定して、レンズ設計に取り込むことで、個々の使用者に最適の見え方になります。
遠近両用メガネの仲間たち
遠近レンズの特徴である「累進面」を中心に、遠近レンズの設計を説明しましたが、内面累進の設計技術と生産技術により、現在、多様なレンズが発売されています。遠近メガネは日常生活全般をカバーするので、基本これ一本でOKなのですが、例えば中近メガネのように、デスクワークの時間が長くて目が疲れる等、生活の特定の状況をより快適にするためのメガネが開発されています。
最近のメーカー各社の傾向として、遠近と中近で4種類の設計バリエーションを用意していることが多いです。メガネレンズブランドのSEIKOを例にあげますと、遠近レンズとしてオールラウンドとタウン、中近レンズとしてオフィスとルーム。
オールラウンドは従来からの遠近タイプです。タウンというのは、中近の要素も加えた遠近レンズで、よく言えば遠近より手元が見やすく、中近より遠くが見やすい、言い方を変えれば、遠近より少し遠くの視野が狭く、中近より少し手元の視野が狭い。車を運転するときやスポーツでは、動体視力を必要とするため、遠用部を広くとる必要があり、こうしたシーンも含め、生活全般に対応しているのが従来の遠近ですが、車を運転する機会が少ない都会の生活などを意識して、従来より遠用部を狭くして、その分中間部と近用部を広くした遠近がタウンで、その方がデスクワークが楽になったり、スマホなどが見やすくなったりすることから開発された新しい遠近レンズです。
従来中近レンズと呼ばれてきたものがオフィスとルームです。遠近設計に比べて中間部と近用部が広く設計されています。室内用メガネと呼ばれることもあり、デスクワーク等室内でのお仕事や生活で、遠近レンズに比べて手元やパソコンの画面等が広く見やすく、半面遠くが少し狭くなります。運転等には適していませんが、ホワイトボードやテレビ等、室内程度の遠くは見え、歩行も問題ありません。中近は、遠近を使っている人がより快適にデスクワーク等をするためにもう一本持つという感じです。ルームというのは、オフィスよりさらに近いところ重視の中近レンズで、一日中デスクワークや手元を見るといった状況で活躍します。
第二章 メガネ購入時のアドバイス
遠近メガネや中近メガネを中心に、メガネに関して「購入前」「購入時」「購入後」に分けて具体的に役立つ内容を説明します。メガネ購入時にぜひご参考になさってみてください。
メガネ購入前の一般知識
メガネ製作にかかわるのは、レンズメーカー、フレームメーカー、メガネ店です。
レンズメーカーはそれほど数が多くなく、HOYA、SEIKO、NIKON大手3社と中小の何社かです。大手3社で70%以上のシェアを占めます。メガネレンズは医療機器の扱いで、性能や品質はどれも一定水準以上で、いわゆる粗悪品はありません。遠近や中近レンズの性能も、どのメーカーもだいたい横並びのような感じがします。レンズに関してあまり当たりはずれはないと考えていいと思います。
一方フレームメーカーは比較的多数です。後で購入時のコツを詳しく説明しますが、フレームは素材や生産地によって性能に特徴や違いがあるので、店の人に相談するか、ご自身で絞り込んだ場合も、最後に店の人に確認して決めた方がいいと思います。
メガネ店は大きく分けると、①低価格指向の全国チェーン店、②均一価格(2万円前後)や大規模な全国チェーン店、③地元のチェーン店、④百貨店などの高級店、⑤地元の小規模専門店になります。どの店でもすべての種類のメガネ(単焦点、遠近、中近等)が入手可能です。①②③はその中での淘汰はありますが、①ではJINS、②では眼鏡市場等が売上を伸ばしています。①は低予算で購入でき、比較的若年層中心、②③はメガネの種類や客層も多様でオールマイティ、④⑤は店舗数が減ってきていますが、高級ブランド、ハイセンスのメガネフレーム、遠近や中近など、得意分野で生き残っている店があります。
メガネ購入時のアドバイス(レンズ編)
レンズに関してメガネ購入時のお役立ち情報をお送りしたいと思います。レンズは大きく分けると2種類あります。一つは「単焦点レンズ」というもので、用途は近視補正、遠視補正、乱視補正、お手元用です。もう一つは「多焦点レンズ(累進屈折力レンズ)」で遠近レンズや中近レンズです。
両方に共通していることとして、レンズの素材区分があります。薄型や超薄型などと呼ばれていますが、主に5種類あり、レンズ素材の屈折率(1.50、1.56、1.60、1.67、1.74)の違いで、数字が大きいほど同じ度でも薄く軽く仕上がりますが、一般的には価格も上がります。ここでのコツは、度の弱い人は高屈折のレンズにする必要はないということです。素材に関しては、値段が高い方がいいだろうということではなく、その人の度に合った屈折率でいいということです。
あと遠近や中近についてのコツになりますが、遠近や中近は屈折率によるグレードの違いと、設計によるグレードの違いがあり、設計によるグレードの違いの方が価格差が大きくなっています。ハイグレード品は性能もよく快適ですが、ハイグレードでなければダメということはありません。老眼の進み具合は初期(40代~50代初)、中期(50代)、後期(60代以降)となりますが、老眼の進行に伴い、遠近や中近レンズの上部(遠くを見る度)と下部(近くを見る度)の差(加入度)をだんだん大きくする必要があります。初期で加入0.75~1.25、中期で1.50~2.00、後期で2.25~2.75、加入度が大きくなるとレンズの側方部(両端)の収差(ボケ、ゆがみ)が大きくなり、明視域が狭くなります。この時にハイグレード品の方が快適な視界になります。初期の段階ではグレードの差による見え方の差は中期以降より少ないので、どうしてもハイグレードにしなくてはいけないということはないと思います。
メガネ購入時のアドバイス(フレーム編)
メガネフレームの素材は、金属(チタン、合金)と樹脂(アセテート、合成樹脂)に分けられます。チタンは軽くて丈夫で、ベータチタンのようにバネ性(形状記憶)のあるものもあり、おススメの素材です。価格は合金より高めですが、最近は比較的お求めやすい価格になってきました。合金はチタンより少し重量があります。また、金属アレルギーのある人には向いていませんが、安く購入できます。アセテートはセルフレームとも言われ、植物性の樹脂でできています。デザインや色が多様で、見た目も美しく、低価格~ブランド品(一般に高価格)まで多様です。石油由来の合成樹脂は、軽くて弾力性があり、かけ心地がいいものが多く価格も比較的安価です。
産地は、低価格品の多くは中国で、日本製は比較的高価です。一部イタリアなど欧州製がありますが、ブランド品が多く高価です。産地にかかわらず有名ブランド品のほとんどは高価なフレームです。
性能や品質は、日本製は一般的には高性能で長持ちします。日本製のチタンフレームを選んでおけばほぼ間違いありません。中国製は品質にバラつきがあるような気がします。中には雑な作りのものも見受けられます。欧州製はデザイン重視だったり、白人の顔の造作に適していたりするものが見受けられますが、非常にいい製品もあります。樹脂フレームで、アセテートは鼻パットがついてないものが多いので、掛けたときに鼻元のフィット感がよいか(ずり落ちないか)確認する必要があります。特に遠近や中近メガネにする場合はここのフィット感は重要です。合成樹脂はかけ心地がいいタイプが多いと思いますが、耐久性としては他に比べ低いものもあるので、長く使う方は注意が必要です。
度の強い人に適さない横幅が広いフレームや、遠近に適さない縦幅が短いフレームなどもあるので、決める時は店の人に確認してもらうとよいかと思います。
遠近両用メガネ購入時のアドバイス
遠近メガネや中近メガネを購入する際の注意点を説明したいと思います。
メガネフレームを選ぶとき、遠近メガネを快適に使うための機能面でのチェックポイントとして、メガネの上下の真ん中より少し上に、ご自身の瞳の中心がくるくらいがベストです。だいぶ上の方に瞳がある場合は、遠近の遠用部を狭く作らざるを得なくなるか、近用部までの視線が遠くなり、遠方視野が狭くなったり、近くが見づらくなります。また、あまり瞳が下の方にきていると近用部が狭くなります。
あと、メガネが目にだいぶ近いと、これも近用部に視線がとどかなく、近くが見づらくなりますし、まつ毛が当たったりしていると不快です。メガネが目から離れすぎていると、側方の「収差」が目線に入り気になるかもしれません。これらはフィッティングである程度改善できるので、店の人に相談してみてください。
レンズの数字の基礎知識を覚えておくと参考になります。特にCという文字のあとの数字は乱視の強さで、近視や遠視の度にくらべ検眼者の裁量が大きな数字です。しっかり乱視補正をすると目がクラクラする場合もあるので、検眼者に確認したり、テストメガネで体感したりするといいと思います。もう一つは加入度(ADD)という数字で、これは老眼の進み具合で変わる数字ですが、だいたい年齢に比例します。40代後半で0.75~1.00、50代前半で1.25~1.50、50代後半で1.75~2.00、60代前半で2.25~2.50、60代後半以降2.50~3.00、検眼では少し強めに出る傾向があり、強すぎると、近くはよく見えますが、慣れづらかったり、視野が狭く感じたりする場合があるので、上記からご自身の年齢での平均的な加入度を記憶しておき、実際の数字を確認していくといいと思います。
メガネ購入後のアドバイス
初めて遠近メガネをかけた場合や、今までと度や設計を変えた場合、すぐになじむ方も多いのですが、違和感がある方もいます。目は(脳の視覚野は)今までの見え方に適応していて、今までと違う見え方に慣れが必要な場合があることが原因です。適正に作られたメガネなら2、3日から1週間くらいで快適に使えるようになります。そういう期間を持った上で、まだ違和感がある場合はメガネ店に相談してください。だいたいのメガネ店は3カ月程度保証期間を設けていて、仮にレンズを交換する必要がある場合も追加料金なしでできるところが多いと思います。
メガネを使っていると、メガネをぶつけてしまったり、踏んでしまったり、修理が必要になることがあります。メガネフレームは大雑把に言って、曲がった、外れた、といった内容は店で修理可能ですが、切れた、折れたといった内容は修理工場での修理になるか、素材によっては修理不可能です。レンズ自体のキズやコート剥がれやカケは、すべて修理不可能なのでレンズ交換になります。
もう少し具体的に説明しますと、まず店でなおせる内容として、メガネは何か所かネジがついていますがネジがゆるんだり外れたりして、例えばテンプル(フレームのツル)が外れてしまったり、レンズが外れてしまってびっくりするかもしれませんが、比較的簡単になおせます。また曲がってしまった場合もだいたいなおせますが、たまに戻す過程で金属が切れてしまうこともあります。下だけふちのないタイプでレンズが外れた場合もなおせます。店での修理は購入した店でなら大体のところはアフターサービスとして無料だと思います。
次に修理工場でなおせる内容ですが、まず修理工場でなおす場合は2週間程度かかる場合が多く、費用も修理内容によりますが四千円~八千円程度かかります。切れた、折れたという場合、金属フレーム、アセテートのフレーム(セルフレーム)の場合は修理可能ですが、形状記憶の合成樹脂の場合は修理不可です。
修理工場へはメガネ店での取次になります。
当店では、初めての遠近メガネの方に以下のような説明文書をお渡ししています。
初めての遠近両用メガネの慣れ方
遠近両用メガネ(以下遠近)のご購入ありがとうございます。
遠近は日常生活全般に対応した大変便利なメガネです。すぐに慣れる方も多いのですが、初めて装用するときに違和感がある方もいらっしゃいます。その場合、2日~10日ほどで目が慣れてきます。(個人差あり)
元々メガネを掛けていらっしゃる近視の方は一般的に慣れるのが早く、メガネが必要なかった正視や遠視の方は、慣れるのに1週間以上かかる方もいます。違和感がある場合、最初は室内で目を慣らし、掛けていて疲れる場合は目を休めてください。
遠近メガネはレンズ上半分弱が遠いところにピントが合い、途中から徐々に度が変化し下3分の1弱が近くにピントが合います。目線の軽い上下移動により、遠いところから近いところまですべてにピントを合わせることができる優れものです。
一番初めだけ、レンズの、どのエリアで見ればどこにピントが合うか意識的に確かめる感じですが、すぐに無意識に合わせられるようになります。またレンズの中で度が徐々に変化するエリアがあるので、最初だけ目がなじまず疲れる場合があります。その場合は無理せずに徐々に慣らして下さい。
遠近はレンズの横の方は、少しぼやけて見えたり歪んで見えるエリアがあります。基本気にならない位置にありますが、横目で見ると気になる場合があります。その場合はなるべくメガネの中心で見てください。コツは目線ではなく顔を動かして横を見る感じです。
最初のうち、階段等で足元の距離感に違和感がある場合があります。その場合はアゴを引いて足元を見てください。
遠近は適正な位置にメガネが掛かっていることが重要です。お渡しの際にはフィッティングで適正な位置におさまるようにしていますが、日常使っている中で、例えばメガネが下がっていると近くが見づらい、上がっていると遠くがボヤケますので、見づらいことがある場合は位置を確認してみてください。
第三章 老眼と遠近両用メガネの詳しい話
この章では老眼と遠近両用メガネの詳しい話をします。専門的な内容もありますが興味のある方は読んでみてください。
老眼の詳しい説明
まず知ってそうでよくわからない目の基本から。
目はとても度の強いレンズです。度が強いというのは光の方向を変える屈折力が強いということで、ものを見るためには、目を通る光をグッと曲げて目の奥の網膜に集め、その情報を脳に伝える必要があります。虫眼鏡で太陽の光を一点に集められますが、目はその何倍も強い凸レンズで、ディオプター(D)という単位で表し、約60ディオプターです。
もうひとつ重要なことが、この屈折力を自動的に変えることができるということです。これを調節力といいます。遠くを見る時よりも近くを見る時は、目のレンズの度を強くしないと、近くのものに焦点が合いません。では、どれくらい強くするのか?答えは3Dくらいです。遠くを見ている時の目の屈折力を60Dとすると、1D強くすると、目は屈折力61Dのレンズになります。簡単な計算式でどこに焦点が合うか計算できます。1÷1D=1.0mすなわち1m先のものに焦点が合いよく見えます。2D強くすると1÷2D=0.5mなので50cm先がよく見えます。3D強くすると1÷3D=0.33mで33cm先がよく見えます。3D強くすれば目は63Dとなり、手元がよく見えるということです。
さて、ここまで理解すると老眼のことがよくわかります。老眼は、この目のレンズの屈折力を強くする調節力の衰えのことです。これが衰えるから近くが見づらくなります。目には、レンズである水晶体という器官があり、水晶体を膨らませると、レンズの度が強くなり近くが見えます。加齢とともにこの水晶体を膨らませる力が衰えたり、水晶体自体が硬くなったりして、水晶体が膨らまなくなるのが老眼です。40代後半からそうなり、加齢とともに進みます。例えば、50才で調節力が+2Dだとすると、1÷2D=0.5mすなわち遠くから50cmまではよく見えますが、そこからさらに近いところは見づらくなります。例えば60才で調節力が+1Dだとすると1÷1D=1mまでです。ただし、この調節力と距離の計算式ですが、デスクワークや読書のように一定時間以上近くを見る場合の距離で、瞬間風速的にはその倍くらい(距離で言うと半分くらい近いところが)見えると言われています。
さて、それでは近いところを見るためにはどうしたらいいか?目自体の度を強くできないのならレンズ(メガネ)で補ってあげればいいということになります。手元33cmを見るためには調節力+3Dが必要でした。調節力+2Dの人は1D足りません。そこで+1Dのメガネを掛ければ+3Dとなり手元が見えます。
ちなみに、この調節力の衰え=老眼の進行はかなり年齢に比例し、個人差が少ないものです。そう言うと、「私は(あるいは私の周りのあの人は)、60才だけどメガネを掛けなくて新聞を読んでいますよ。」という声が聞かれそうです。そのからくりは、目の性質によります。すなわち、近視とか遠視とかその話です。近視というのは、近くに焦点が合うので遠くが見づらい目です。例えば、元々が60Dでなく63Dの目の人は近視です。3D強い目は1÷3D=0.33mに焦点が合います。その人が調節力を例えば+3D使ったときは66Dです。+6Dとは、1÷6D=0.16mで16cmに焦点が合います。この人は、33cmから遠くはぼやけます。それでは遠くが見えなくて、車の運転もできません。ではどうしたらいいか?マイナス3Dのメガネ(凹レンズ)を掛ければ、63D-3D=60Dになり遠くがよく見えます。-3Dのメガネを掛けた状態で調節力+3Dを発揮すれば、63Dとなり手元も見えます。
ここで2点補足しておきますと、ひとつは調節力というのはプラスの力、目の度数を強くする力で弱くはできません。だからたとえば、63Dの近視の目の人は66Dにできても、自力で60Dにはできません。また、近視や遠視というのは、レンズとしての目の度数と網膜までの距離との関係で決まるということです。目のレンズ(角膜+水晶体)の度数が60Dで、眼球の大きさが平均的だと、遠いものがちょうど網膜で結像するということで、例えば60Dでも網膜までの距離が長い人は近視になります。
では、話を戻して、老眼になった時に掛けるメガネのことを説明します。先ほどの話で、普段メガネを掛けていない人が、老眼になって近くが見づらいのでメガネを掛けて近くを見えるようにしますが、そのメガネを掛けた状態で遠くを見るとどうなるか?目の度が60Dの人が+1Dのメガネを掛けると61Dの状態で遠くを見るということになります。これは1D分近視の状態で遠くを見ることになります。計算で言うと、1÷1D=1mで、1mから遠くはぼやけます。+1Dのメガネを掛けて近くは見えるようになったのですが、そのメガネを通すと遠くは見えなくて困るので、メガネの掛け外しや鼻メガネ状態が必要になります。
ちなみに、もう一人の63Dの近視の目の人は、調節力が+2Dに衰退すると、-3Dの近視用のメガネを掛けた状態で、遠くは60DでOKですが、近く、例えば33cmのところは+3Dに対して調節力+2Dでは+1D足りません。-3Dの近視用メガネを掛けた状態では老眼により、50cmより近くは見づらいのです。そこで、-3Dのメガネに+1Dして、-2Dのメガネを掛ければ近くはよく見えます。しかし、-2Dのメガネを掛けた状態では、元々の63Dの目に-2Dのメガネで61Dで遠くを見るので、60Dに対して+1D近視の状態で遠くを見るため、1mから遠くがぼやけます。そこで、-3Dのメガネと-2Dのメガネを状況に応じて掛け替えるか、近くはメガネを外して、おでこに上げる等して見ます。
そこで便利なのが遠近両用メガネで、最初の人の場合、遠くは0D、近くは+1Dの遠近両用メガネにすれば、メガネを掛けたまま遠くも近くも見えます。次の近視の人の例で言えば、遠くは-3D、近くは-2Dの遠近両用メガネを掛ければメガネを掛けたまま遠くも近くも見えます。それぞれメガネの度は違いますが、この2人がそれぞれの遠近両用メガネを掛けた時の見え方は同じです。遠近両用メガネの遠くと近くの度の差を加入度と言います。この場合、両方のメガネとも加入度は+1Dです。遠近両用メガネは、その人の老眼の進み具合に応じて加入度が変わります。レンズの度は0.25Dが基本単位になりますが、老眼になりたての40代後半で加入度は+0.75~1.25くらい。50代で+1.25~2.25くらい。60代以降一般的な視生活では、加入度はマックス+3.00くらいまでです。+3.00というのは、その人の調節力が0でも33cmが見える度です。
メガネ店では、それぞれの人の調節力を測定して、足りない分をちょうど補うような度のメガネを作ります。言いかえれば、その人の(残っている)調節力をしっかり発揮した上で足りない部分をメガネで補っています。メガネを掛けると老眼が進むのでは、と勘違いしている人もいますが、老眼の進行というのはだいたい加齢に比例し、個人差はそれほど大きくありません。脚の筋肉などは、衰えを遅らせるために日々のトレーニングなどで、60代でも30代なみの人がいるかもしれませんが、調節力はそういう訳にいきません。外見が若く見える60代の人でもさすがに30代に見られることは滅多にないのと同じで、個人差はあっても年相応の調節力の衰え、すなわち老眼になります。これは、学術的にもそうですが、私どもが日々多くの方を検眼していても例外がないことがわかります。すなわちメガネを掛けても掛けなくて老眼は進みます。一番問題なのは、見づらい状態で我慢して見ていることで、目にストレスがかかり眼精疲労や肩こり等の不調の原因にもなります。
今の遠近両用メガネは、遠くを見るエリアと近くを見るエリアを、連続的に度が変わって滑らかに結ぶエリアがあり、見た目は境目が無く単焦点メガネと変わりません。上下のわずかな視線の移動で遠くから近くまでピントが合います。また、使う人の目の状態や用途に応じて、各メーカーから多種のレンズが発売されています。メガネ店の重要な役割として、それぞれの方に最適の度数やレンズの種類を選定することと、フィッティング技術などで目とメガネの正確な位置関係を実現することがあります。人は情報の80%を目から得ていると言われています。老眼になっても対策を講じずに無理をして見ているということは、ストレスがかかると同時に、重要な情報を効率的に入手できないということです。適切な遠近両用メガネでスマートに仕事や生活の質を上げられます。
遠近両用メガネの説明
遠近両用レンズは、いろいろなメーカーから多種多様なレンズが販売されています。薄型化などの素材の違いや、コートの種類もありますが、遠近両用レンズは、さらに設計の違いで種類が豊富になります。
遠近両用レンズは、見た目は普通の透明なレンズですが、上部に遠くを見るエリア=遠用部、下部に近くを見るエリア=近用部、それを結んで徐々に度が変わるエリア=中間部、が設計されていて、両サイドに少し物が歪んで見える(収差が出る)エリアがあります。(図の曲線の外側)
ごく簡単に言いますと、遠用部や近用部を広くとると、収差の度合いが強くなります。こういう設計をハード設計と言い、一般に近視系の目の人に合います。一方、収差の強さを抑えて、全体にマイルドな見え方にしたものはソフト設計で、一般に遠視系の目の人に合います。(遠視系のメガネは凸レンズで、物が少し拡大され、収差を感じやすいため。)
また、中間部の長さ=累進帯長は、1mm刻み、10mm~15mmくらいで、短いほど収差が強くなります。あと、遠用部と近用部の度の差=加入度は、0.25飛び、1.00(40代後半)~3.00(60代後半以降)くらいで、大きくなるほど収差が強くなります。中間部が短いと上下の幅の狭いフレームに対応できたり、遠用部や近用部を広く取れます。しかし、中間部が短いレンズで加入度が強くなると収差が気になったり、パソコンの画面などを中間部で見る時に狭さを感じます。では、できるだけ累進帯長を長くすればいいかというと、あまり長いと目線が近用部に届かないという問題がおきます。
以上は遠近設計の基本ですが、さらに遠用重視の設計、近用重視の設計等、使う人の使用環境や目の状況に合うよう、多くのバリエーションがあります。
このようにレンズはいろいろ開発されていますが、メガネとして活かされるかどうかは、使用者の目の状況と使用環境を適切に把握し、最適な設計のレンズを選び、加工や調整で目とメガネの距離や角度等、位置関係を正確に合わせるといったメガネ店の技術にかかっています。
お使いの遠近両用メガネに不具合を感じる場合、3点ほどチェックポイントがあります。
1つは、目の中心とレンズの焦点の位置、目とレンズの距離、レンズの傾き具合等、目とメガネの位置関係が適切でない場合です。この場合は、メガネを変えなくても調整を正確にしなおせば解決する場合があります。
2つ目は、レンズの設計が合っていない場合です。レンズメーカーは何社もあり、各社がいろいろな設計のレンズを出しているので、メガネ店が、使用者に一番合った設計を選択する必要があります。例えば、近いところを見る時に、レンズの累進帯長が長くて、目線がレンズの近くを見るエリアにとどかない、といった事例は時々確認されます。レンズ設計が合わない場合は、レンズを替える必要がありますが、目の状況や使用環境に合った設計のレンズに変えるとかなり快適な見え方になります。
3つ目は、度数が合っていない場合です。老眼は進行するので、その結果度が合わなくなったりします。また、老眼の進行と共に、従来より少し近視の度合いが弱くなることもあり、以前のメガネだと目に負担がかかっていることがあります。
メガネは視力的に目に合っていることが前提ですが、ファッション的に似合っていることも重要なポイントだと思います。遠近両用メガネが必要な世代は、エイジングケアに関心がある人も多いと思います。メガネのデザインや色により、だいぶ若々しい印象にできます。また、レンズにうっすら色を入れる事で、目元の小じわやくすみを目立たなくすることができ、オシャレの重要なアイテムともなります。
老眼対策のメガネとしては、生活のほとんどの場面に対応できる遠近両用メガネが一般的ですが、より快適な視生活を実現するために中近メガネを併用する場合があります。
中近メガネは遠近両用メガネの設計技術を応用して作られたメガネで、設計上は中間部が18mm~25mmと長く、遠用部が狭い構造になっています。視線のほとんどが中間部と近用部を使うことになります。その結果、お手元からパソコンの画面あたりが遠近両用メガネより広い視界になります。
遠用部が狭いのと、度数が連続的に徐々に変化している中間部で少し離れたところを見るため、遠いところが少しぼやけたり、遠近両用メガネの見え方に慣れていると、使い始めの時に、少し離れたあたりの見え方に違和感がある場合があります。
では、中近メガネはどういう時に便利かと言うと、長時間のデスクワーク、細かいものを見る場合、また、50代後半以降で、遠近でパソコンの画面をアゴを上げて見て姿勢的に疲れる、等の場合に便利です。室内程度の距離なら普通に遠いところも見る事ができ、掛けたまま歩くことができます。
中近レンズは、近く重視の設計や、遠くもある程度見える設計など、設計上の特徴が遠近両用レンズ以上にハッキリしています。また、メガネ店での度数の決め方や、メガネフレームへのレンズのセット位置でも見え方がだいぶ変わります。それで、中近メガネを作る場合は、使用者とメガネ店でよく意思疎通をしておかないと、思惑通りのメガネにならない場合があるので要注意です。遠近両用メガネの場合もそうですが、メガネ店に相談に行く前に、現在見え方でどういう時に不便を感じているか、パソコンを長時間使うか、その場合のパソコンのモニター(画面)の目からの距離や高さなどを説明できるように整理しておくのが良いと思います。
ほかには、近々メガネというものがあります。老眼鏡に少し奥行きを持たせたメガネです。用途はほとんどパソコンを使うとき用で、特に老眼がだいぶ進んだ60代以降でパソコンを楽に見たい場合です。掛けたまま歩くのには適していません。
あと、老眼鏡を使う場合、既製老眼鏡は安くて便利ですが、目のためには測定に基づいた正確な度数と、瞳とレンズの焦点の正しい位置関係から作られたメガネをオススメします。
第四章 目とメガネについてテーマ別記事
ここから、毎月新聞掲載したコラムから抜粋して、目のこと、メガネのこと、についていくつか紹介します。1回あたり600~800字程度の単体のテーマを、目についてのグループとメガネについてのグループにまとめました。
<目についての記事>
老眼に引っ張られて目が変わる!?
目が変化する時期は3つあります。体の成長時、環境が変わったとき、そして老眼時です。一番大きく変化するのは体の成長時で、目の大きさ(奥行)や形によって近視や遠視、乱視になることがあります。遺伝の要素が大きいと言われています。環境要因として、パソコン作業など近いところを見る時間が長くなって近視になることもあります。これは環境が変わったからと言って必ずなるというものではありません。
一方40代中ごろから全員がなるのが老眼です。これは遠くが見える状態で(近視の人はメガネを掛けた状態で)近くが見づらくなる症状で、目のピント調節機能の衰えです。
老眼対策としては遠近両用メガネがおススメです。
老眼の進行とともに近視がいくらか改善することがあります。私自身近視ですが、ここ何年かで近視の度合いが2段階弱くなっています。その結果どうなるかというと、使っているメガネで、遠くの見え方は変わらないのですが近くが見づらくなります。この時、遠くは過矯正(近視改善によりメガネの度が強すぎる状態)で、目が以前より疲れます。近くは老眼が進んで近くが見づらくなることに加えて、近視が改善したことにより、さらに近くが見づらいダブルの状態になっています。
この状態は結構見受けられます。メガネの度を変えれば、疲れ解消と近くが見やすくなるというダブル効果が期待できます。
遠視について
遠視の人は、自分が遠視と気が付いていない場合が多いので、ここでは遠視について説明します。
人の目は凸レンズですが、簡単に言うとレンズ(角膜+水晶体)の度が強い人が近視、弱い人が遠視です。遠くを見たとき近視の人は像が網膜の手前で結像し、遠視の人は、理論上ですが網膜の後ろで結像します。
近視の人が網膜で結像させるためには(遠くのものを見るためには)、目と反対の凹レンズのメガネをかける必要があります。一方遠視の人はメガネをかけなくても調節力を使えば網膜で結像します。調節力とは、無意識に水晶体を膨らませてレンズの度を強くする機能です。
視力が1.5とか2.0という場合遠視の可能性があります。調節力でピントを合わせているのでよく見えますが、常に調節力を使うので疲れやすい目です。また近くを見るときは他の目より強い調節力を使うためさらに疲れます。目が疲れるので読書などを好まない場合もあるかもしれません。遠視が原因で目が疲れやすい場合は、近くを見る時だけでも遠視用のメガネをかけると解決します。仕事や勉強もはかどるので、もし、ご自身やお子さんの確認をしたい場合はメガネ店で簡単に確認できます。
老眼が入ると、遠視の人は他より早く近くが見づらくなります。そして遠視の度合いによりますが、そのあと何年か経つと、よく見えていた遠くも見づらくなります。いずれもメガネで解決できます。遠視の人もメガネをうまく用いることで視生活のクオリティーを上げることができます。
乱視について
乱視の場合、ものがぼやけて見えたり二重に見えたりします。乱視は目のレンズ(角膜、水晶体)が球面でない状態で、正乱視と不正乱視があります。正乱視はラグビーボールのような形状の目で、角膜に強いカーブと弱いカーブがあって一点で結像しません。メガネやコンタクトレンズで矯正できます。不正乱視は角膜が不規則な形をしていて、ハードコンタクトレンズや手術によって矯正できる場合があります。
ものがぼやけて見えるということでは近視と共通ですが、近視の場合は遠いところはぼやけますが、近いところはぼやけずに見えます。一方乱視の場合は遠くも近くもぼやけて、ぼやけずに見えるところがありません。ただし弱めの乱視はそれほど視力に影響なく、ご自身も気が付きません。乱視は成長期に乱視になる場合(遺伝的要素大)と、パソコンやスマホの見すぎ等、目のおかれた環境や、加齢でなる場合もあるといわれています。
前述のように正乱視の目は強い度(カーブ)と弱い度(カーブ)が検出されるということは、焦点が2つあり、網膜より手前に二つの焦点がある場合が近視性の乱視、網膜を挟んで2つの焦点がある場合が近視と遠視の混合乱視、理論上網膜の後ろに2つの焦点がある場合が遠視性の乱視です。すなわち近視や遠視と組み合わさって乱視があるということです。
上記の正乱視の場合、角膜が横長のラグビーボールのような形をした直乱視と、縦長の倒乱視、斜めの斜乱視があります。直乱視は垂直の線ははっきり見え水平の線がぼやけます。倒乱視はその逆です。
乱視かどうかは眼科やメガネ店での検査でわかります。
検眼について
メガネを買いに行くとフレームを選んだあと検眼を行います。正確には、メガネの度を決めるために行う医療行為を含まない目の測定です。何度もメガネを作っている人は何をするかわかっていると思いますが、今回は、その内容と何のために行っているのかということを簡単に説明し、メガネ店へ行くときの前知識として役立てばと思います。
レンズの度を決めるための目の測定は、ほとんどのメガネ店では自動機を使って測定します。最初は、覗くと道の向こうに気球の絵が見える機械で、自動でその人に必要なメガネレンズの度が測れます。そのあと大きな双眼鏡のような機械を覗いて、正面1.1mにある画面を見ます。最初に赤背景と緑背景の中の黒い部分はどちらがよく見えるか、と聞かれます。これは、右目左目の順に近視や遠視の測定をしています。
そのあと、黒い複数の丸が最初と次でどちらがよく見えるか、もしくは放射線を比較して他よりはっきり見える線があるか、のどちらかの検査が行われます。これはどちらも乱視の測定をしています。乱視補正が必要ない場合はこの検査は省略されます。それから、ひらがなか、丸の切れ目の方向を見る視力測定が行われます。この一連の検査で左右それぞれの目の完全矯正値(その人が遠くが一番よく見えるレンズの度)を確認します。
そのあとは左右の見え方のバランスをとったり、必要に応じて完全矯正値より度を弱めたりします。あと、老眼の進み具合の測定は、縦横複数の線があるチャートを見てどちらが鮮明か確認していきます。最後はテストメガネを掛けて見え方の確認をします。
これらが主な検査内容ですが、あまりかたくならずリラックスして指標を見ることと、検査する人の質問にそった内容で答えることがポイントです。
<メガネについての記事>
遠近両用メガネや中近メガネが使いづらい場合
遠近両用メガネや中近メガネが使いづらい場合には、次の3点が原因として考えられます。
1.目とメガネの位置関係の不具合
2.レンズの度が合っていない
3.レンズの設計が合っていない
1つ1つポイントを説明します。
目とメガネの位置関係の不具合・・・メガネは目とレンズの距離が12mmが適正で、レンズの下の方が少し顔に近づくような角度があると使い易いと言われています。鼻パットのないフレームなどで目とレンズの距離が近すぎる場合は、近いところを見るエリアに目線が届かず使いづらい場合があります。また、瞳の中心とレンズの焦点が適正な位置関係になっていないとぼやけて見えることがあります。
レンズの度が合っていない・・・老眼は年齢と共に進行するので、3年くらい経つと近いところの度が合わなくなることがあります。また、遠いところの度は老眼の進行とともに少し改善することがあるので弱める必要がある場合があります。
レンズの設計が合っていない・・・デスクワークが多い人に適した設計、スポーツや運転などに適した設計、初心者が慣れやすい設計、近視系の設計、遠視系の設計など、それぞれの方に最適の設計を選ぶと快適です。
遠近メガネや中近メガネは、作る側にとってみると一般のメガネより難易度の高いメガネですが、それだけに作りがいのあるメガネでもあります。
メガネの値段を解剖
フレームの価格は、従来の合金よりチタン素材の方が、また中国製より日本製の方が、さらに有名ブランドの方が値段が高くなります。長く使う人は日本製がおススメです。
レンズは、「素材」「コート」「設計」の切り口で、素材は屈折率が高い方が薄く軽くできます。現在5種類くらいあり、日本では1.60薄型が一番売れています。その下に1.50 1.56 その上に1.67 1.74があります。度が強くない人は無理に高屈折にしなくてもいいと思います。なお、素材はレンズメーカーでなく、化学メーカーのプラントで作られ、ワールドワイドな展開をしています。世界的には1.50が一番多く、上に行くほど少ないので、大量生産の原理で高屈折の方が価格が高くなります。
コートは、今は、キズ防止コート、反射防止コートは標準で付き、オプションとして汚れ防止(標準になりつつある)、通常のキズ防止コートよりさらにキズが付きにくいコート、ブルーライトカットなどがあり、価格が加算されます。あとカラーリングも加算です。
わかりづらいのが設計です。単焦点は、球面、非球面、両面非球面の順に高くなります。薄くしたり、横の方の見え方を自然にします。現在日本での主流は非球面です。
遠近や中近は、度が徐々に変化する累進面がポイントになります。レンズの「おもて側」に累進面、「うら側」でその人に合った近視や乱視の度を付けるのが、従来からのレンズです。メーカーは「おもて面」だけ出来上がったレンズを何十種類か用意しておき、店から注文を受けると「うら面」を研磨して仕上げます。それより歪みの少ない遠近や中近は、「うら側」に累進面がある内面累進レンズです。累進面とその人に合った近視や乱視をうら面で組み合わせるので、長い間、設計と生産技術的に不可能でした。それが30年ほど前にできるようになり、今の日本では主流になりつつあります。さらに、内面累進レンズの「おもて面」に補正を加えて、より歪みを少なくしたのが両面複合設計のレンズです。価格はこの順番に高くなります。
老眼の人に、仕事の効率アップができるメガネ
50代後半から是非おススメしたいメガネが中近メガネです。なぜ中近メガネがオススメかを説明したいと思います。
遠近両用メガネを掛けて、デスクワーク等でパソコンを使っていて、以前より疲れを感じる方は多いと思います。それには理由があります。遠近メガネは遠くを見るエリア(遠用部)がメガネの上半分弱、近くを見るエリア(近用部)が全体の3分の1弱で一番下にあり、それを結んでなだらかに度が変化する部分があります。この部分を累進帯と呼びますが、この累進帯のおかげで遠くから近くまでスムーズに焦点が合います。
ところがこの累進帯の明視域が上下のエリアに比べて横幅が少し狭いのです。まだ老眼がそれほど進んでいないときは、パソコンの画面を累進帯と遠用部で見ますが、老眼が進んでくると累進帯と近用部で見ます。そうすると以前に比べて2つ疲れの要因が増します。1つは、遠用部より近用部の方が狭いので、狭いエリアで見るようになるということ、もう一つがアゴを上げた姿勢で見る、ということです。
それで眼精疲労や肩こりが増し、仕事等の効率が落ちます。この状態を解決できるメガネが中近メガネです。中近メガネは、遠近メガネより遠用部を狭くしてその分累進帯と近用部を広くしています。それで広い視野と楽な姿勢でのデスクワーク等が可能になります。遠近よりは狭いものの遠くも見えます。メガネを作る立場で言うと、中近メガネは難易度の高いメガネです。メガネの使用環境等、作る上でのポイント事項をしっかり確認して、適正な度数、設計、目との位置関係、で作られていれば大丈夫ですが、そうでない場合は使いづらいメガネになることがあります。
気持ちいい「掛け心地」と「見え方」
先日、当店では初めてメガネを購入されたお客様が立ち寄られて「朝から一度も手でメガネを上げることがないのでとても快適」と感想をいただきました。
メガネを作る上で重要なのがフィッティング技術です。フィッティングには2つの目的があります。
ひとつは掛け心地をよくします。メガネがずり落ちたり、痛くなったり、肌に跡がついたりしないよう、一人一人に合わせて耳や鼻への当たりを調整します。耳の裏の形に添ってテンプル(つる)の先を曲げます。鼻パットは面で肌に当たるよう角度や向きを変えます。
もう一つはフィッティングで目とレンズの位置関係を適正にして最高の見え方にします。
瞳の中心とレンズの焦点が合っていないとプリズムが生じて目が疲れます。遠近両用メガネでは見え方が悪くなります。
目とレンズの距離(頂点間距離)は12mmが標準ですが、遠すぎると、近視用レンズは度が弱くなります。遠近メガネでは、側方の収差(少し歪んだりボケるエリア)が視界に入りやすくなります。
距離が近すぎると度が強くなり、遠近メガネでは、下の方にある、近くを見るエリア(近用部)に視線が届かないことがあります。見え方ではありませんが、まつ毛が当たって不快ということもあります。
用途に応じてレンズの角度を調整します。前傾角(傾斜角)は普通のメガネで5~10°お手元用で15°くらいが標準です。
左右のレンズの反り角(フロント角)が大きいと、レンズを通して見た「もの」の形が変化して違和感が出ます。
最近の上位グレードのレンズは、頂点間距離や前傾角、フロント角を測定してメーカーにデータ転送すると、それぞれが標準値と違っていても、最適な見え方に補正してレンズを仕上げるシステムが採用されています。
まぶしさや目の疲れをやわらげるメガネ
野外の強い光に対してはサングラスが必要ですが、屋内や夜の運転等でもまぶしさや目の疲れを感じる方は多く、その解決方法について今回は説明したいと思います。
夜間も含め日常生活全般に対応して、まぶしさやちらつきの改善、長時間のパソコンやテレビなどによる目の疲れの緩和、夜の運転時のまぶしさや見えづらさを改善するメガネレンズがあります。レンズの構造としては、透明フィルターをレンズに施して光全体をコントロールするタイプと、眩しさを感じる波長領域を集中的にカットするタイプに分けられます。また外観は透明のタイプと薄く色のついたタイプに分けられます。
具体的に説明します。
細かい6角形のフィルターを施したレンズ。外観は普通のレンズと同じで透明です。光をやわらげまぶしさや目の疲れを軽減、また視力向上の効果があります。
偏光フィルターを施したレンズ。釣りやゴルフなどで有名な偏光レンズですが、従来はサングラスだけでした。これを薄い色にしたことで日常生活全般に使え、視界がクリアになると共に、まぶしさを防ぎます。
特殊コーティングによりまぶしさを感じる領域だけカットするレンズ。透明タイプと薄く色が着くタイプがあります。40代以降の目がまぶしさを感じやすい領域をカットするレンズ。視界のクリア感が増し、夜の運転でのまぶしさを抑えます。薄く色が着きます。
なお、これらを複数組み合わせて効果を高めることもできます。
勉強やデスクワークを楽にするメガネ
仕事で、また仕事以外でもパソコンやスマホを見る時間が長い人は多いと思います。人は近いところを見るときは、無意識にですが目を緊張させて焦点を合わせているので、見続けるとかなり疲れます。目の疲れが慢性化した眼精疲労で体調を崩す場合もあります。
歴史的にみると、人類は狩猟や農耕など誕生以来長い間、主に遠くを見る生活をしてきました。今のように近くを見る時間が長くなったのは、人類の長い歴史から見れば極々短期間で、進化の過程では「遠くを見る方が自然」と言えそうです。実際、ヒトの目は遠くを見るときはリラックスした状態なのであまり疲れません。
しかし現代の生活で近くを見ないわけにはいきません。そこで開発されたのが近くを見るときの目の緊張を緩和するメガネです。このメガネは、見た目は普通のメガネで、遠くも普通に見えます。近くを見るとき、目は調節力という機能を使って焦点を合わせますが、このメガネはパソコン画面やスマホ、書類等近くを見るときに視線が通るエリアに調節力をサポートする設計が施されているので、目の緊張をやわらげた状態で近くを見ることができます。
目の疲れ、ひいては眼精疲労は健康面でも、仕事や勉強の効率低下からも問題です。日頃デスクワークや近くを見ることで目が疲れている方にはこのメガネが効果的です。このメガネは普段メガネを掛けている人も掛けていない人も、また子供から大人まで年令に関係なくご使用できます。
目の疲れを緩和するコツ
人の目が遠いところから近いところまで瞬時にピントを合わせることができるのは、目に備わっている調節力のおかげです。具体的には、遠くを見るとき目はリラックスした開放状態で、近くを見るときは目の中の水晶体を膨らませています。この調節力により水晶体を膨らませた状態というのは緊張状態で目が疲れます。
デスクワーク、勉強、読書、スマホ、ゲーム等一定の時間以上近くを見ることは、目に緊張を強いているため疲れますが、調節力をやわらげて近くを見る方法があります。
まず元々の目が近視の人は、メガネを外して近くを見ることにより、疲れが緩和されます。一定以上の強い近視の人は、メガネを外すとだいぶ目を近づけないと見えませんが、その場合は度を弱めたメガネを掛けると疲れが緩和されます。
普段メガネを掛けていない人は正視か遠視です。この場合は近くにピントを合わせたメガネを掛けることによって調節力をサポートし疲れを緩和します。
これらのことは、子供からシニアまですべてに当てはまりますが、老眼が入ってくる45才以上の人は、遠近メガネや中近メガネを掛ければ同じ効果が得られます。また45才以下の人は上記の方法、もしくは近用サポートメガネを掛ければメガネの掛け外しなしで、近くを見ることによる疲れを緩和することができます。
メガネの掛け心地の点検
メガネは正しく掛かっていないと掛け心地や見え方に影響します。ご自身でも鏡でチェックしてみましょう。
・正面から見て左右どちらかが上がっていないか?
・瞳の位置は「メガネの真ん中より少し上」くらいになっているか?
・鼻パットは面で当たっているか?(浮いているところはないか?)
・ツル(テンプル)の先端が耳の後ろに沿って隙間なく接しているか?
両テンプルの開き幅が適正でないと、メガネがずり落ちたり、逆に血管を締め付けて気持ち悪かったりします。鼻パットは固い樹脂(アクリル)が主ですが、柔らかい樹脂(シリコン)に変えて肌当たりをよくするとともに、ずれ落ちを防止することもできます。
他にも目とレンズの距離や、レンズの傾き加減などもポイントですが、これらはご自身では確認しづらいので、気になる項目があったらメガネ店で確認できます。
少し当店のことをご紹介させていただきます。
店主(筆者)は元々メガネレンズメーカーにいました。メーカーでは高性能のレンズが量産されますが、使用者の目を測り、レンズを選択し、フレームにセットし、使用者に合わせてフィッティングするのはメガネ店です。メガネ店の技術がないと高性能のレンズも活かされません。メガネ作りという観点で、レンズメーカーでの限界を感じ、16年余前にメガネ店に転身しました。以来、遠近両用メガネ等高い技術を必要とするメガネを中心に、お一人おひとりに最適のメガネを提供することを続けています。
メガネレンズのコーティングについて
メガネレンズの構成要素として「素材」「設計」「コーティング」があります。素材はプラスチック樹脂の種類で、屈折率別で5種類ほどあります。設計はレンズをその人に必要な度に仕上げることです。
今回はコーティングについて説明します。コーティングのうち、反射防止コート、キズ防止コート、汚れ防止コート、紫外線カットは現在ほぼ標準装備されています。オプションとして有料加算されるのは、多い順に、まずカラーリングとブルーライトカットです。
カラーの目的は目元のおしゃれとまぶしさ防止です。いろいろな色や濃さが選べます。色や濃さは微妙な違いがあるので、店で用意しているサンプルを見ながら店の人に相談するといいと思います。
ブルーライトカットは、可視光線の中でエネルギーが一番強い短波長の領域を30%程度カットして、目の疲れをやわらげる効果があります。
あと、物理的な内容と光をコントロールする内容があります。物理的には、表面を固くしてよりキズがつきづらくするコートと、曇りづらくする防曇コートがあります。防曇コートは反射が気になったり、汚れがふき取りづらかったりするので、どうしても必要な人が選ぶ感じです。
光のコントロールとしては、調光コート、偏光コート、防眩コートなどがあります。調光は室内では透明、屋外では色が着くレンズです。注意点は、車の中ではあまり色づかない、着色は数十秒だが退色は数分かかるということです。偏光は乱反射をカットし物がはっきり見えるサングラスで、釣り、ゴルフ、ドライブ、ハイキング等で重宝します。防眩コートは夜間の対向車のライトのまぶしさを軽減したり、ものがはっきり見える効果があります。
メガネレンズの選び方
メガネ店でメガネレンズを選ぶときに参考になる内容を説明したいと思います。近視や遠視、乱視などの単焦点レンズは、球面レンズから非球面レンズ、そして両面非球面レンズと進化してきました。また遠近両用レンズや中近レンズは、外面累進レンズから内面累進レンズ、そして両面制御設計レンズと進化しています。
単焦点レンズは、度がそれほど強くなければ非球面レンズがよく、度が強い場合は両面非球面レンズがいいと思います。球面レンズに比べて、非球面レンズは周辺部のゆがみが抑えられているのと薄く仕上がります。両面非球面レンズは、さらに周辺部がゆがまず、薄く仕上がるレンズです。厚さやゆがみが気になる強度の人は、両面非球面レンズがいいと思います。
遠近や中近は、内面累進レンズや両面制御レンズがおススメです。内面累進は、外面累進に比べて周辺部のぼやけやゆがみが少なく、目線移動時のユレも少なくなっています。両面制御設計は、ベースは内面累進で、さらに自然な見え方を追求した新しいレンズです。あと単焦点レンズも遠近レンズも、レンズの素材で標準、薄型、超薄型などと別れています。これはレンズの屈折率の違いで、屈折率1.50が標準、1.56が準薄型、1.60が薄型、1.67が超薄型、1.74が最薄とか極薄といわれます。
店でレンズを選ぶときにレンズの価格表を見せられると思いますが、想像以上に種類があってよくわからないと思います。上記を参考に、度が強くなければ「屈折率1.50~1.60」度が強ければ「1.67以上」、単焦点なら「非球面」、度が強ければ「両面非球面」、遠近や中近なら「内面累進」か「両面制御」(両面複合という場合もある)とキーワードだけ覚えておけば結構簡単に選べると思います。
メガネレンズ開発の歴史
現在主流のプラスチックレンズや、境目のない遠近両用レンズ(累進レンズ)は半世紀以上の歴史がありますが、1980年代から90年代が大型開発のピークで、ここ数十年は大きな開発はなされていません。主にセイコーエプソン光学事業部(現HOYA)で開発され、私事ですが1986年~2008年まで光学事業部に在籍し直接携わることができました。
具体的には、素材と設計の大型開発がこの時期に集中し、その後はブルーライトカットなどのコーティング関係や、設計のリニューアルなど、小型の開発が中心になっています。
素材は、長らく屈折率1.50のモノマー(原料)が主流でしたが、1980年代から90年代にかけて一気に1.60、1.56、1.67、1.74の順に開発され、より薄く軽く仕上がるようになりました。1.74のモノマーが開発されてから30年以上さらに高屈折のモノマーは開発されていません。現在の主流は1.60=薄型レンズとなっています。
設計は、単焦点は球面レンズ、遠近は外面累進が主流でした。1980年代に、より薄く、よりゆがみの少ない非球面レンズが開発され、90年代にさらに両面非球面レンズが開発されました。現在の主流は非球面レンズです。
累進レンズは、1980年代に中近が開発され、90年代に内面累進が開発されました。この内面累進の誕生は、その後を左右する大きな開発となっています。それまでガラス型に累進面を作り、その転写により、予め「おもて面」に累進面(遠近設計)をもつプラスチックレンズを用意しておき、個々の注文に応じて近視や遠視の度数を裏面を研磨して仕上げていました。内面累進は、累進面と近視や遠視などをすべての要素を一つの面に複合設計し、それをフリーフォームマシンで仕上げるという、設計と生産の技術革新がなされました。その後の新製品はこの技術の応用で、設計のリニューアルや使用者の個別パラメータを取り込んだインディビジュアル化が行われています。
便利なメガネの紹介
遠近両用メガネは老眼に対するマルチなメガネで、これ1本で日常生活を過ごしている方が多くいます。一方、服や靴もファッション面と機能面で着替えるように、メガネもファッション面でTPOに応じて複数持っている方もいますが、今回は機能面でシニアの視生活をより快適にするためのメガネを紹介したいと思います。
まず、この誌面でも何回か紹介していますが、長時間のデスクワークや、細かいものを見る場合、中近メガネがあると格段に快適です。中近メガネは種類がいろいろあるので、ご自身の主な使用環境を、メガネ店で具体的に伝えることが肝要です。また寝転んで本やスマホ・タブレットを見るような場合は、単焦点の手元用メガネがあると楽です。中近は遠近と同等の価格ですが、手元用は比較的安価です。
アウトドアには遠近サングラスがあると目の保護にもなります。この場合、近くより遠くの視野が重要なので、遠くが広く見える遠近にすると快適です。また遠近サングラスには光の乱反射を制御して、よりくっきり見える偏光サングラスタイプもあり、釣りやゴルフやドライブにおススメです。
これだけでも4本になり、かけ替えなどが面倒くさそうだなあ、という方に1本で済ませる方法として、遠近と中近の中間くらいの見え方で、室内では透明、屋外ではサングラス(調光)というメガネがあります。遠近と中近の機能を兼ね備えているという、いい面に対して、遠近より少し遠くが狭く、中近より少し手元が狭いという見方もできますが、今この原稿をそのメガネをかけてノートPCで打っていて、普段使っている中近に比べてそれほど使いづらいということはありません。また調光は室内で普通の(透明な)遠近メガネとして使えますが、外から屋内に入ってから色が消えるまでに数分かかります。
第五章 よくある質問Q&A
Q:遠近両用メガネは「試したが掛けられなかった」という話を聞くが
A:遠近レンズは進化しています。「境目のない遠近メガネ」の、なめらかに度が変わる「累進面」がレンズの「おもて側」に施された「外面累進」レンズが従来主流でした。予め共通の累進面を作っておき、そのレンズの「うら面」を研磨してその人の近視や乱視の度を組み合わせて作りますが、共通の累進面は、あたかも既製服のサイズのようなくくりで、ピッタリ合う人はいいのですが、MとLの間の体型のように着心地、レンズでいうと見え方がイマイチという人もいました。これに対して最近の主流は「内面累進」といって、メーカーは注文データに基づき個々に累進面と近視、乱視の度など、すべてをうら面に設計して生産します。これはオーダーメイド服のように、その人にピッタリのものが出来上がります。内面累進になって掛けられないというケースは減りました。
Q:遠近両用メガネを使っているが、どうも見えづらいのだが
A:考えられるのは、度数が合っているかどうかと、目とメガネの位置関係が合っているかで、メガネ店でチェックすれば原因がわかります。老眼は徐々に進行するので、3~4年くらいで近くが見づらくなることがあります。メガネが下がっていると近くが見づらい、上っていると遠くがボヤケます。また上下の位置が適正でもメガネが近すぎると近くが見づらい、遠すぎると視界が歪むということがあります。瞳孔の位置がきちんと測定されてなく、レンズの焦点(フィッティングポイント)とずれていると横の方がぼやけたりします。
Q:遠近両用メガネを掛けると老眼が進むのでは
A:遠近メガネを掛けずに近くや遠くを見て、目を甘やかさず鍛えるとうことかもしれませんが、老眼は水晶体の硬化と、それに付随する筋の衰えが原因で、白髪の進行が止められないように、水晶体の硬化は止められません。筋の衰えも腹筋のような随意筋は鍛えられますが、心臓のような不随意筋なので鍛えることはできません。また遠近メガネは、個人個人の老眼の進行度を測り、足りない部分だけを補うという仕組みで作られるので、遠近メガネを掛けていてもその人の持っているピント調節能力は十分使っています。従って遠近メガネを掛けても掛けなくても老眼の進行は同じです。
Q:自分は近くが見えるので老眼ではないのでは
A:50代以降も近くが見える人は多くいますが全員老眼です。近くが見えるのは近視の人です。何歳になっても近視の人がメガネを外せば(焦点距離に差はありますが)近くが見えます。老眼というのは遠くから近くまで自在にピント調節できなくなった目のことです。近視の人も老眼になると、(遠近でない)近視用のメガネを掛けた状態では近くは見えません。人数は非常に少ないのですが、年をとっても近くも遠くも見える人がいます。この人は不同視といって左右で目の度が異なり、たまたま片方の目は遠くに合い、もう片方が近くに合う場合です。便利でいいと思うかもしれませんが疲れやすい目です。
Q:老眼になったら、遠近両用メガネをかけなくてはいけないか
A:老眼時、遠くが見えて、普段メガネをかけていない正視や弱い近視や遠視の人は、手元用メガネをかければ近くが見えます。遠くが見づらいので普段メガネをかけている近視の人は、メガネを外せば近くが見えます。それで生活上問題がなければ遠近をかけなくてもいいと思います。しかし日常生活で、手元の資料とホワイトボード、手元とテレビ、運転とナビ画面、食事や対談で手元と対面の人、買い物で値段を見たり歩いたり、近くを見る、遠くを見る、そのたびにしょっちゅうメガネのかけ外しが必要となる場面は多く、そのわずらわしさを解消するのが遠近メガネです。
Q:初めての遠近両用メガネ、慣れられるか
A:最近の遠近メガネは慣れやすくできていますが、初めて遠近メガネをかける場合、慣れやすさに個人差があります。傾向としては、一番慣れやすいのは今まで近視用メガネを常用してきた40代~50代前半の人です。遠近をかけた瞬間から違和感なくかけられる人も少なくありません。今までメガネをかけてきてない人は、レンズを通した視界や物理的に顔にメガネをかけていることへの慣れも必要なので、慣れるのに2,3日~1週間くらいかかる傾向があります。特に50代後半以降で初めて遠近の場合は、慣れやすさ優先のメガネを作ることと、慣れ方の詳しい説明を必要とします。
Q:遠近両用メガネを掛ければ若いころと同じように見えるか
A:老眼の不便を解消するために一番いい方法は遠近メガネだと思います。しかし若いころと同じ快適な視界というわけにはいきません。老眼になる前は意識しなくても、目が遠くから近くまで瞬時にピント調整してくれるので、遠くも近くも目全体の広い視界で見えます。遠近メガネは、レンズの中に遠くから近くまでそれぞれにピントが合うエリアを設定していて、視線の上げ下げで所定のエリアから物を見ることで遠くから近くまでピントが合う仕組みです。従って物理的にそれぞれの視界は狭くなります。具体的には遠方の視界は広く、中間や近方の視界は狭めで、老眼になる前のようにすべて広い視界で見るというわけにはいきません。
Q:老眼はいつまで進むのか、メガネは買い替えなくてはいけないか
A:老眼は40代中ごろから始まり60代後半くらいまで徐々に進行します。遠近メガネの数値に加入度というのがあり、遠くを見る上部の度数と近くを見る下部の度数の差の数字で、0.25単位で老眼の進行と共に増えていきます。個人差はありますが、だいたい老眼なり始めは+0.75くらい、50代前半で+1.25~+1.50、50代後半で+1.75~+2.00、60代で+2.25~+2.50、最終的に+2.50~+3.00くらいになります。3年くらいで1段階上げていく必要があり、メガネを作り変える必要があります。フレームは活かしてレンズだけ交換することもできます。
2025年9月 発行
著者紹介
メガネのフォーサイト 代表 丸山 毅
セイコーエプソン光学事業部(現HOYA)でメガネレンズの企画開発に長年携わり、2009年メガネのフォーサイトを開業。特に老眼世代の快適な視生活のサポートに力を入れている
松本市 メガネのフォーサイト
シニアの快適視生活講座
◇◇ 以前よりまぶしさを感じる理由 ◇◇
太陽の強い日差しには、皆まぶしさを感じますが、夜間運転で対向車のライトがまぶしい、部屋の中でもまぶしさを感じる等、日常生活で以前よりまぶしさを感じる場合の原因と対策について説明します。
目自体に原因がある場合としては、目の中の水晶体が濁り、視力に影響が出てくるのが白内障ですが、白内障とまでいかなくても、多くの人が加齢で徐々に水晶体が濁り、眼内で光が乱反射してまぶしいことがあります。次に環境的な原因として、最近ライトの光源がLEDとなってきていて、以前よりまぶしさを感じる場合があります。これらの場合には、メガネレンズに特殊なコーティングやカラーリングをしたメガネが有効な場合があります。透明タイプのものと、夜間でもOKな程度の薄い色のついたものがあり、それぞれを組み合わせて効果を上げることもできます。
あと考えられることとして、使っているメガネレンズのコーティングがいたんでいて、こまかいクラックによって散乱した光が目に入り、見づらい場合があります。また、近視や乱視の補正が適正におこなわれていないメガネで、光の散乱現象により見え方に違和感が生じる場合があります。これらはメガネ店で確認できるので、原因がこういった場合はレンズを交換することで解決します。
松本市 メガネのフォーサイト
大型モニターを楽に見たい
【70代男性】
【主訴】50cm~60cmくらい先に大型モニターを2台使っているが、今の中近メガネで見づらい。
【原因】中近メガネには、手元寄りの中近と、遠く寄りの中近があり、お使いの中近は遠く寄りのため、比較的近い位置にある大型モニターが見づらいと思われれる。
【解決方法】この場合、解決方法が3つ考えられる。
①近々メガネにする ②手元寄りの中近にする ③モニター作業に特化した遠近メガネにする
それぞれのテストメガネを試していただき、モニター用遠近メガネを作ることにした。
【解説】今回は大型のモニター2台というところがポイントとなる。
一般的なデスクトップPCのモニターなら、近々や、近く寄りの中近でOKだが、モニターが大型で複数台の場合は、近々では見える範囲が狭く、累進帯で見る中近も視野的に足りない。
そこで、本来遠近の遠用部は遠くが見えるように度を合わせるところ、モニターの距離に度を合わせた遠近メガネにして、モニターの画面を広い視野で見ることができるようにし、手元も良好に見えるようにした。 デメリットとして遠くがはっきり見えないこと。
松本市 メガネのフォーサイト
老眼鏡について
老眼鏡は手元専用メガネで、焦点が手元33cmや40cmですが、老眼の進み具合によって見える範囲が異なります。
老眼の進み具合をざっくりと、初期、40代後半から50代前半、中期、50代中ごろから後半、後期60代以降、とすると、既成老眼鏡に書いてある強さや数字の表記で、初期は「弱」+1.00や+1.50 中期が「中」+1.50や+2.00 後期が「強」+2.50や+3.00となります。注意すべき点は、これは、老眼になるまでメガネが必要なかった「正視」の人に当てはまり、近視や遠視の人には当てはまりません。
見える範囲ですが、+1.00の老眼鏡は、眼前1m~33cmくらいが見えます。1mから先はぼやけます。+1.50は67cm~33cm +2.00は50cm~33cm +3.00は33cmだけです。老眼鏡を掛けると遠くは見づらくなるので、掛けたまま歩けませんが、老眼の初期のうちは、老眼鏡でPC画面から手元ぐらいはカバーできます。
近視の人についてですが、年齢と老眼の進み具合は正視の人と同じで、ただレンズの種類や度が異なります。簡単に言うと、掛けている近視用メガネの度を弱めれば老眼鏡を掛けている状態になります。一例で、-3.00のメガネを掛けている近視の人は、40代後半~50代前半の老眼初期は、-3.00(凹レンズ)+1.00(凸レンズ)で相殺された-2.00の凹レンズ、すなわち少し弱めの近視のメガネが、正視の人の初期の老眼鏡(+1.00の凸レンズ)と同じ役割となります。中期では、-3.00+2.00=-1.00で、だいぶ弱めた近視のメガネです。
遠視の人は、遠視の強弱によりますが、例えば、初期が30代後半~40代前半で+1.00 中期が40代後半~50代前半で+2.00等、正視の人より早めに対策が必要になります。
松本市 メガネのフォーサイト



