2013年10月 のアーカイブ

遠近両用メガネ セミナー内容公開

10月のまちゼミのセミナー内容を公開します。遠近両用メガネについて詳しく知りたい方は参考にしてください。

 

遠近両用メガネのしくみと快適な使い方

 

□老眼とメガネ

 

老眼とは目の調節力の衰えで、普段メガネをかけていない人はその状態で、普段メガネを掛けている人はメガネを掛けた状態で近くが見づらくなります。目自体も水晶体等から構成されているレンズですが、近くを見る時に無意識に水晶体に力を加えてレンズの度数を強くしてピントを合わせています。加齢とともに水晶体の硬化等で調節力が衰えて近くにピントが合わせられなくなります。遠くを見ている時は調節力を使わないので目はリラックスした状態です。パソコンや読書等で目に疲れを感じるのは調節力により目を緊張させていることも一因です。調節力は10代がピークで20代以降段々衰え、40代中ごろから日常生活に支障をきたし始め60代後半くらいまで進行します。

 

対策としてメガネが使用されます。正視の人は近くを見る時にメガネを掛け、近視の人は近くを見る時にメガネを外して見るか近く用のメガネに掛け替えます。掛けたり外したりの不便さを解消するのが遠近両用メガネです。

 

□遠近両用メガネのしくみ

 

遠近両用メガネは、遠くを見るエリア、近くを見るエリア、それを結ぶエリア、があります。

それぞれ、遠用部、近用部、中間部と言います。中間部は連続的に段々度数が変化しているエリアで累進帯とも言います。そして、1枚のレンズの中でこのように度数を変えると必ず「ひずみ=ぼやけたり、ゆがんで見えたりするエリア」が発生します。このひずみをどう抑えてクリアなエリアを確保するかが、各レンズメーカーがレンズの設計上で競っている内容です。

具体的には、視線の通るエリア(縦のエリア)はできるだけクリアな視界にして、あまり視線が行かない横の方のエリアにひずみを持っていきます。

 

遠近両用レンズには大きく分けると2種類の設計があります。

名称としてハード設計とソフト設計という言い方をします。ハード設計は遠用部と近用部のクリアなエリアをできるだけ広くとった設計で、その反作用として横のひずみが強くなります。ソフト設計はハード設計に比べクリアなエリアが狭いのですが、横のひずみが弱く全体としてマイルドな見え方となります。

 

クリアなエリアとひずみは、さらに2つのことに影響を受けます。

1つは、中間部の累進帯の長さです。累進帯が長いほどクリアなエリアが広くなります。しかし中間部があまり長いと、手元を見る時視線をだいぶ下の方まで持っていくため大変です。

ちなみに累進帯長は、大体10mm、12mm、14mmくらいに分かれます。

もう1つは、遠用部と近用部の度数の差の大きさで、この度数差のことを加入度といいますが、加入度が大きくなるとクリアなエリアが狭くなります。加入度は40代では小さくて大丈夫ですが、50代、60代と年齢が上がるにつれて大きくなります。つまり、老眼の進行度合いに合わせる必要があります。単位は0.25Dで、だいたい0.75~3.00Dくらいまであります。

 

□快適な遠近両用メガネの作り方(眼鏡店)

 

使いやすい遠近両用メガネにするためには、メーカーによるレンズ自体の性能アップが基本となりますが、メガネ店で多種多様な遠近両用レンズの中からひとりひとりのお客様=使用者に最適のレンズを選べるかどうかも大きなポイントとなります。

 

また、使用者の目の状況、弱い近視か強い近視か、遠視系か、乱視はどうか、および、今までの目の置かれてきた状況、メガネやコンタクトレンズを使ってきたか、その度数はどうか、また、デスクワークが多いか、車の運転が多いか等の目をとりまく生活環境、さらに、フレームの形状、などにより最適なレンズの度数やレンズ設計を決めていきます。

 

たとえば、普段メガネを掛けないで過ごしてきた正視の人や遠視系の人に遠近両用メガネを作る場合、凸レンズになります。(ちなみに近視の方のメガネは凹レンズです。)この凸レンズは物の見え方で拡大効果があります。そのため前述のハード設計にした場合、ひずみも拡大され最初の違和感が大きいがために遠近両用レンズに慣れづらいということもあります。特にその方にとって最初の遠近両用メガネは、まず慣れて掛けられるということがとても重要なポイントとなるので、ソフト設計のレンズを選んだ方がいい場合もあります。中程度以上の近視の方は元々メガネを掛けているのでメガネ(レンズ)を通した物の見え方に慣れています。この場合には最初からハード設計のレンズでも慣れられる場合が多いです。

 

その人の目が今まで置かれてきた状況を考慮して掛けやすいメガネを作るという点では、例えば検眼の結果、今まで掛けてきたメガネの度数とかなり差がある度数が検出された場合、一気にその度数にもっていくのではなく、今までの度数から掛け替えられる範囲の度数として、まず掛けられるようにし、少し長期計画になりますが、2ステップで、次にメガネを変える機会で度数を調整していくということもあります。

 

使用環境に合ったメガネにするということも大変重要で、パソコンを使う時間の長い人には中間部が使い易い設計にしたり、遠くを見る機会が多い人には遠用部の広い設計にしたりします。

 

□遠近両用メガネの使い方と慣れ方

 

遠近両用レンズの使い方ですが、結論から言うと上述のような配慮の元に作られた遠近両用メガネでしたら、最初に違和感を感じたとしても、1週間~2週間で必ず慣れます。

 

使い方の基本としては、遠く、少し遠く、近くを見る縦の視線は頭を上下にあまり動かさずに視線の上下運動で見ます。また、横の方を見る場合は目線だけでなく頭も見る方向に少し動かしてあまりレンズの端の方で見ないようにします。

他に足元に違和感を感じる場合がありますが、この時は少しあごを引いてみるようにすると解消されます。

 

上手な慣れ方としては、まず、人が物を見るということは、目という器官を使って見た画像情報を脳で解釈しているということを理解しておきます。例えば、目の病気から段々視野欠損(視野の中で見えない部分)が進行するということがありますが、かなり広範囲の視野欠損になるまで気が付かない場合があります。これは、実際は視野が欠損しても脳が画像処理する際に欠損部分を補ってしまうからだと言われています。遠近両用メガネもレンズのひずみがあっても脳がそのレンズを通して見た物の画像処理に慣れるとあまり気にならずに普通に見えてきます。視線の使い方の慣れと同時に、遠近両用レンズに慣れる(違和感が解消する)というのは、段々慣れるというよりもある時気が付いたら慣れていたということが多いのは、このように脳での解釈によるものと考えられます。自転車に乗れるようになると、練習時に意識的に行っていたことが体で覚えて無意識に行えるように、遠近両用メガネに慣れた段階では視線の使い方も無意識にできるようになります。あとコツということでは、人(脳)はいやだと思うことより「これはいい!」ということの方を受け入れるので、遠近両用メガネも、違和感を感じながら練習として一生懸命掛け続けるよりも、最初は必要な場面、例えば新聞とテレビを見る、会議で資料とホワイトボードを見る、買い物で値札や説明書を見る、といった便利さが実感できるときに使うようにした方が慣れやすいようです。これは、慣れるまでの期間のコツで一度慣れてしまえば、掛けっ放しで大丈夫です。

 

それでも慣れられない、今使っている遠近両用メガネが見づらいと言う場合には、目の位置がきちんと調整されているか、メガネの角度や目との距離に問題がないかというメガネ店側の内容が原因の場合が考えられます。また、何年か経つと老眼が進んで度が合わなくなっていると言う場合もあります。

 

□中近メガネ

 

最後に、パソコンやデスクワーク等比較的近方を見る時間が長い人や、加入度が進んだ場合(老眼が進んだ場合)に中近メガネが重宝する場合があります。中近というのはその名の通り、遠いところと近いところの中間(少し遠いところ)~近いところまでを見るためのエリアを広くとった設計のレンズで、その分遠くの方は少しぼやけます。

加入度が2.25以上(50代後半以上)になると、レンズ設計上、中間部と近用部のエリアがだいぶ狭くならざるを得ません。そのため、遠近両用メガネの他に中近メガネも活用して使い分けるとより快適な視生活が送れます。

 

 

遠近両用メガネ相談会実施中

まちゼミ(松本まちなかゼミナール)で「遠近両用メガネのしくみと快適な使い方」をテーマにセミナーを行ったところ「知りたい事が聞けてよかった」というお声を多数いただきました。そこで、引き続き個別相談会という形で実施したいと思います。

まちゼミで遠近両用メガネについてセミナー開催

松本まちなかゼミナールで「遠近両用メガネのしくみと快適な使い方」をテーマにセミナーをおこなっています。今回は同じ内容で3回おこないます。写真は2回目のセミナーの様子です。参加していただいた方にはご満足いただけたようです。