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最近の累進多焦点メガネ
累進多焦点メガネとは境目のない遠近や中近などです。
従来、遠近、中近、近々とカテゴリー分けされることが多く、それぞれに設計グレードが複数ありました。(遠近で6種類以上、中近2~3種類、近々2種類等)
最近はメーカー各社、設計グレード別に遠近~近々まで4種類ほど揃えることが多くなっています。
具体的にSEIKOレンズで見ますと、内面累進で3グレード、両面複合累進で3グレードほどあります。
そしてそれぞれに、「ALL ROUND (遠近両用タイプ)」「TOWN (遠近両用・中間重視タイプ)」「OFFICE (室内用中近・中間重視タイプ)」「ROOM (室内用中近・近方重視タイプ)」と用意されています。
これは用途別のような意味合いで、従来の遠近はオールラウンド、中近はオフィス、近々はルームといった感じです。タウンは遠近と中近の間のような設計です。
使用環境をよく聞いた上でおススメのレンズタイプを提案しています。
一般的にはオールラウンドとなります。
タウンは遠近より中間部が広いのでデスクワーク等遠近より楽になります。微妙なのは車の運転もオーケーかどうかで、個人的見解としてはいけると思います。
オフィスはオールラウンドやタウンより中間と近用部がだいぶ広いのでパソコンや資料を見たり読書などが快適です。運転には適していませんが室内程度の遠いところはOKです。
ルームはルームというよりデスクといった感じでデスクワーク専用と考えた方がいいかもしれません。
累進レンズ(遠近、中近)の進化のポイント
遠近や中近などの累進レンズは、境目がなく遠くから近くまでピントが合う便利なメガネで、老眼を快適に過ごすのに必須ですが、欠点としてはレンズの側方に収差(ボヤケやゆがみ)が発生することで、この収差を改善して明視域を広げることが累進レンズの進化の目的や結果となっています。
その時のキーが「設計自体の進化」と「カスタム化」です。
設計自体の進化とは、20世紀まではすべて「外面累進レンズ」でしたが、20数年前SEIKOが「内面累進レンズ」の開発に成功し、さらに最近は「両面複合累進レンズ」が設計の最先端になっています。簡単に解説すると、外面累進レンズはレンズの「おもて面」が既成の累進面で、「うら面」を研磨して使用者ごとの近視や乱視の度を作ったレンズです。一方内面累進レンズは、うら面に使用者ごとに、累進、近視、乱視などを統合した最適設計を配置します。両面複合レンズは内面累進レンズをベースにさらにいろいろな設計の工夫がされたレンズです。一つ一つの技術の進化は高難易な内容ですが、結果的に明視域が広がり快適な視界になります。
内面累進レンズの開発の成功には2つのパラダイムの転換があり、超複雑なレンズ面を設計する技術が開発されたことと、それを物理的に作り出す3次元切削研磨加工技術が開発されたことです。
2つめの累進レンズのカスタム化ですが、外面累進から個人ごとに設計製作する内面累進に進化したこと自体が累進レンズのカスタム化そのものですが、最近のカスタム化は、上記の設計と生産の技術を使い使用者ごとにさらに最適な累進レンズを作ることです。具体的には、これまでの使用者の基本情報(近視度数、乱視度数、加入度数、累進帯長等)に加えて、装用情報や使用条件の情報を加味することです。代表的な内容としては装用時のフレームの前傾角や反り角、頂点間距離(瞳とレンズの離れ具合)などが反映されたレンズになります。
メガネのフォーサイトでは、内面累進レンズと両面複合累進レンズを扱っており、グレードは4段階に分けています。
1.内面累進レンズ 2.セミカスタム内面累進レンズ 3.カスタム両面複合累進レンズ 4.フルカスタム両面複合累進レンズ
手元用メガネ
【60代女性】
【主訴】近視用のメガネを新調、その際のヒアリングで「近くは裸眼で見えるが疲れる」との内容があり、近く用のテストメガネも作製し掛けていただいたところ、大変見やすいとのことで、近く用もご購入。
【原因】中程度の近視なので、裸眼で近くにピントが合う。しかし、乱視もあり、また不同視(左右で度が違う)でもあるので、裸眼で近くを見ているときはだいぶ目に負担がかかっている。
【対策】遠近両用にすれば近くも適正な度で見れるのでベスト。しかし60代まで遠近を使用したことがなく、また、細かいものを見るということなので、まずは近く専用のメガネをかけてもらい、今後必要に応じ遠近もご紹介していく。
メガネがずれ落ちる
【30代女性】強めの近視
【主訴】他店購入のセルフレームメガネでメガネがずれ落ちる、まつ毛にレンズが当たる。
【原因】フレームの鼻盛(セルフレームの鼻あての部分)のサイズが広すぎてご自身の鼻梁にうまく収まらない。
【対策】このような場合は対策が取れないので購入時によく確認するしかない。ちなみに、今回は小ぶりの軽いフレームで鼻パットのあるタイプを新たに購入いただいた。強めの近視の場合、レンズのコバ厚が厚くなるので、できるだけメガネの横幅の小さいものを選ぶと厚い部分がカットされスッキリおさまる。
遠近メガネで目が疲れる、近くが見づらい
【50代女性】 近視 老眼
【主訴】 約3年前に作った遠近メガネで、生活環境は大きく変わっていないが目が疲れるのと、近くがだいぶ見づらい。
【原因】 検眼してみると、近視が1段階弱くなっている(改善されている)のに加え老眼が進んでいた。老眼になると、近視の人の目が以前よりよくなる事例は少なくない。この方の場合も以前はちょうどよかったメガネの近視補正度数が、目自体の近視の度合いが弱まったため、結果的に少し強めの度となっていた。その場合、目の疲れを感じることがあるのと、老眼の進行度合い以上に近くが見づらくなる。
【対策】 今回、遠近の遠用部の度を一段下げ、加入度数を一段上げることで快適なメガネとなった。
中近メガネは累進帯で見る(・・?
累進帯とは度が滑らかに変化する領域で、遠近メガネや中近メガネはこの累進帯の技術により、境目がなく目線の移動で遠くから近くまで焦点が合う使いやすいメガネになりました。累進帯での度の変化量を加入度といいます。50才で加入度1.00くらい、60才で2.00くらいです。(個人差があります)
遠近メガネはレンズの上半分に遠くを見るときの度が入っているエリア(遠用部)があり、その下に累進帯(中間部)があり、その下に近くを見るときの度が入っているエリア(近用部)があります。
例えば正視の人で加入2.00の遠近メガネは、遠用部の度が0.00、近用部の度が+2.00となります。
ところで、メガネを作るときにはフィッティングポイント(FP)と言って、遠く(無限遠)を正面視したときの瞳の中心をレンズの所定の位置に合わせる作業が必要です。
遠近メガネはこのFPが遠用部に設定されます。(通常遠用部と中間部の境目から2mmほど上あたり)したがって、まっすぐ前を見たときの視線は遠用部にあり、遠くがよく見えます。そして視線を下げていくと焦点はだんだん近づいてきます。
これに対して中近メガネは累進帯が遠近より長く20~24mmほどあります。(製品によって20mmだったり23mmだったりします)
中近の特徴としてはFPが累進帯の中に設定されることにあります。どこに設定するかは使用条件によって若干異なりますが、一般的には、例えば累進帯長が20mmの製品では上から8mmのところに合わせます。
ここから少し専門的になりますができるだけわかりやすく説明しますので興味のあるか方は読んでみてください。
正視の人で加入2.00の中近メガネで説明すると、まっすぐ前を見た時には累進帯20mmの中で上から8mmのところで見ることになり、加入2.00×8/20=+0.80の度が入った位置で見ます。レンズの度と焦点距離は逆数の関係となっています。計算上FPでの焦点距離は1÷0.80=1.25mとなります。ちなみに加入2.00の中近とは、近用部でものを見るとき、例えば33cmでものを見るとき自力の調節力(目が水晶体を膨らませて遠くから近くにピントを合わせる力)+1.00にメガネが+2.00のサポートをして+3.00=1÷3.00=0.33mにしているという意味です。
FPではレンズの度+0.80に自力の+1.00を加えると+1.80=1÷1.80=0.55m すなわち125cm~55cmに焦点が合う中近メガネということになります。
実際の場面で言うと、例えばデスクワークで見るディスプレイがデスクトップPCのように正面の高さの場合には125cm~55cm内の位置に置けば大丈夫です。
ノートPCの場合は一般的にもう少し目線を下げた位置にディスプレイがあると思います。例えばFPからもう6mm下から見ると、その位置の度は+2.00×(8mm+6mm)/20mmなので+1.40となります。この時の焦点距離は1÷1.40=0.71mです。自力の調節力+1.00を加えると1÷(1.40+1.00)=0.42mなので、この位置では71cm~42cmが見え、デスクワークとしては快適な状態となります。
調節力というのは、40代半ばくらいまでは+3.00以上あるので近くに焦点を合わせるのにメガネのサポートはいりません。しかし50才で+2.00 55才で+1.50 60才で+1.00と衰えてきます。(この数字は長時間近くを見るときの数字で瞬間見るだけならこの倍くらいの調節力があると言われています)
33cmを見るときの度は+3.00なので、50才では+1.00 55才では+1.50 60才では+2.00のメガネのサポートが必要となります。