2015年5月 のアーカイブ

遠近両用メガネの説明

遠近両用メガネは40代後半以降の老眼をサポートする便利なメガネです。

老眼とは目の調節力の衰えです。調節力とは、物を見る時に、目の水晶体の形状を変化させて、遠くから近くまで瞬時にピントを合わせる働きで、加齢による水晶体の硬化等で衰えてきます。そうなると、遠くが見える状態で近くが見づらくなります。遠くが見える状態でというのは、近視の人は、老眼になってもメガネを外せば近くは見えますが、遠くは見づらく、メガネを掛けて遠くが見える状態では近くが見づらくなります。

老眼で見えづらいのを無理して見ていると、目が疲れたり、肩こりの原因になったりします。また眉間にしわを寄せて、印象が悪かったり美容的にもよくありません。

そこで、普段メガネを掛けない人は、近くを見る時にメガネが必要になります。近く専用の老眼鏡は、掛けると遠くは見えなくなるので、掛けたり外したりがめんどうで、つい鼻メガネになったりします。また、近視で普段からメガネを掛けている人は、おでこにメガネを上げて近くを見たりしますが、周りから見ると結構年齢を感じさせるしぐさです。

遠近両用レンズの構造図

そんな時に便利でスマートなのが遠近両用メガネです。今の遠近両用メガネは境目がなく見た目は普通のメガネと同じです。遠近両用メガネは視線の動きを利用して遠くから近くまでピントが合うように作られたメガネです。透明で見た目にはわからないのですが、その構造(設計)は図のようになっています。上部が遠くを見るエリア=遠用部、下部が近くを見るエリア=近用部、その2つのエリアを結ぶエリアが中間部です。この中間部は連続的になだらかにレンズの度が変化していて、累進帯ともいいます。そして、光学的にどんな遠近レンズでも両横に少し物が歪んだりぼやけたりする収差が発生します。レンズメーカーはこの収差をできるだけ小さくする開発を続けていますがなくすことはできていません。

遠近両用レンズの設計の基本について触れておきます。遠用部と近用部を広く取ると収差の出るエリアは狭くなりますが、収差の度合い(歪みやボヤケの度合い)が強くなります。このような設計をハード設計といいます。収差の出るエリアが少し広くなりますが、その度合いを弱くしたのがソフト設計です。ハード設計は近視系の人、ソフト設計は遠視系の人が使い易いと言われています。また、同じ設計でも、遠用部と近用部の度数の差=加入度、が強くなると、収差が大きくなります。加入度は0.25単位で1.00~3.00くらいで、老眼が進むと高加入度にしていかないと近くが見づらくなります。個人差がありますが、40代後半で1.00~ 50代で2.00前後、60代以降2.00~3.00 あと、累進帯長は10mm~15mmくらいが多く、長くなるほど収差は小さくなります。

遠近両用レンズはいろいろなメーカーから多様な設計のものが出されています。上記の基本的内容の他、遠方重視の設計、近方重視の設計など膨大な種類になります。それは、使用者の目の状況や使用環境を想定して用意されているためです。

メガネは、目とレンズの位置関係が重要ですが、遠近両用メガネは特に重要です。メガネ店では、フィッティングと加工の技術で、適正な目とレンズの距離、レンズの適正な傾き、正確な瞳の位置、などを作り出すと共に、その人に最も合ったレンズ設計を選定します。それで、遠近両用メガネを購入する時は、現在感じている、見る事に関する不具合点や、使用環境を説明できるようにしておくといいかと思います。例ですが、オフィスワークでパソコンを使うことが多く、パソコンの画面はどれくらいの位置。車の運転にも使う、等。

最後に、遠近両用メガネは使いづらいと感じて使ってない方もいると思いますが、その場合3点ほど原因が考えられます。1つは、何らかの原因でレンズの度数が合っていない場合、2つ目は目とレンズの位置関係が合っていない場合、3つ目がレンズの設計が合っていない場合です。この3つが適正に作られていて、慣れ方や使い方のコツがきちんと説明されていれば、特別な事情を除いて遠近両用メガネが使えないということはありません。