‘市民タイムス掲載 目とメガネの講座’ カテゴリーのアーカイブ

市民タイムス 老眼世代の快適視生活講座

第6話「遠近メガネご購入時の概要」

 

遠近メガネを購入する場合のポイントを当店に限らず一般的な内容として説明します。

まずレンズの度を決める必要がありますが、眼科で検眼して処方箋を出してもらうか、メガネ店で測るか、遠近メガネもどちらでもOKです。気になる場合、眼科でなら白内障等も確認できます。メガネ店はワンストップで便利です。その際お使いのメガネは持参した方がいいのと、検眼時に質問されるので、どのような場面で見え方に問題があるか説明できるようにしておくといいと思います。例えば、スマホ等手元が見づらくなった、遠近を使っているがパソコンのモニターが見づらくアゴを上げて見て疲れる、等。

メガネフレームは店で選ぶのが一般的ですが、お持ちのメガネを使うこともできます。フレームは一般的に中国で大量生産したものは安価で、日本製や有名ブランド品は高めの設定になっています。

レンズもいろいろなグレードがありますが、違いのポイントは、強度レンズを薄く軽くする超薄型など屈折率の高いレンズは価格が上がります。また、遠近メガネは横の方に収差といってぼやけたり歪んだりするエリアがあり、通常気にならないように作りますが、老眼が進むと遠くと近くの度の差(加入度)を大きくする必要があり、50代後半くらいから加入度が2.00を超えてくると収差が大きくなます。このときハイグレードの設計の方が収差を抑えて作ることができます。

遠近メガネは特注でレンズを作るためお渡しはだいたい1週間後となります。また多くのメガネ店では保証期間を設けており、レンズを替えたりする必要がある場合でも3カ月程度は無料で行っている店が多いと思います。

 

第5話「遠近メガネの仲間たち」

遠近レンズの特徴である「累進面」を中心に遠近レンズの設計の説明を前回しましたが、新しい設計技術と生産技術により多様なレンズが発売されています。多様なレンズがある理由は、遠近メガネは日常生活全般をカバーするので基本これ一本でOKなのですが、デスクワークの時間が長くて目が疲れる等、生活の特定の状況をより快適にするためのメガネとして開発されてきた経緯があります。

最近のメーカー各社の傾向として遠近を含めて4種類の設計バリエーションを用意していることが多いです。SEIKOを例にあげますと、オールラウンド(遠近)、タウン、オフィス(中近)ルーム。

オフィスは従来中近レンズと呼ばれてきたもので、遠近設計に比べて中間部と近用部が広く設計されています。室内用メガネと呼ばれることもあり、デスクワーク等室内でのお仕事や生活で、遠近レンズに比べて手元やパソコンの画面等が広く見やすく、半面遠くが少し狭くなります。運転等には適していませんが、ホワイトボードやテレビ等室内程度の遠くはOKで歩行も問題ありません。中近は遠近を使っている人がより快適にデスクワーク等をするためにもう一本持つという感じです。

タウンというのは遠近と中近のあいだくらいのレンズで、よく言えば遠近より手元が見やすく中近より遠くが見やすい、言い方を変えれば、遠近より少し遠くの視野が狭く、中近より少し手元の視野が狭い。中近のように遠近と併用ではなく遠近の代わりになる感じです。

ルームというのは従来の近々レンズに近くデスクワーク専用に近いイメージです。一日中デスクワークや手元を見るといった状況で活躍します。

 

 

第4話「進化する遠近メガネ」

 

遠近レンズは、外面累進→内面累進→両面制御設計の基本設計の進化と、個々の使用者に合わせたカスタマイズ設計の進化により、広い視野と自然な見え方を実現してきています。広い視野とは、遠近レンズはレンズの横の方に収差と言ってユガミが発生するのですが、それをできるだけ少なくして、明視域を広くしていることです。

滑らかに度が変わる累進設計により、境目がなく遠くから近くまですべての距離にピントが合うのが今の遠近レンズですが、累進面は予めレンズの外面に作っておき、使用者ごとに異なる近視や乱視や遠視の度を注文後レンズの内面を研磨して仕上げます。これが一般の遠近レンズで外面累進レンズといい、低コストでの生産が可能ですが、同じ累進設計で個々の度に対応するため、基準の度からずれると性能にバラツキが生じるという欠点もあります。

外面累進に対して内面累進は、注文後累進面と個々の度数を全てレンズの内面で設計し生産します。複雑なレンズ設計の技術とそれを製品化する生産技術の革新により実現したレンズで、外面累進より視野が広く性能のバラツキもありません。

両面制御設計は内面累進技術をベースに外面で補正を加えることにより、レンズを通して見ることによる大きさや形のズレを補正して自然な見え方になります。

このような基本設計に加えてカスタマイズ化というのは、メガネの装用条件、フレームの形や目との距離や角度を測定してレンズ設計に取り込むことで、個々の使用者に最適の見え方になります。

当店では、ラインナップのスタートを外面累進から内面累進に切り替えました。基本設計は内面累進と両面制御設計、内面累進はベーシックとセミカスタム、両面制御設計はセミカスタムからフルカスタムまで取り揃えています。一番価格を抑えたレンズも内面累進なのでどのレンズを選んでも外面累進より良好な視界になっています。

 

第3話「遠近メガネとは」

遠近両用メガネはレンズの上の方に遠用部(遠くを見るエリア)、下の方に近用部(近くを見るエリア)があり、中間部(連続して徐々に度が変わるエリア)で結ばれています。境目はなく見た目は普通のメガネと見分けがつきません。遠近メガネは目線の上下移動で遠くから近くまでピントを合わせることができ、老眼時の視生活の質を飛躍的に向上させるメガネです。

 

 

遠近メガネの度について説明します。普段メガネをかけている近視や乱視の人には、同じような遠くを見るための度が遠用部に入り、普段メガネをかけていない正視や遠視の人には遠用部は度なしか遠視の度が入ります。近用部の度はその人が必要とする加入度によって決まります。人の目は近くを見るときには無意識に目の中のレンズ(水晶体)を膨らませて度を強め、近くにピントが合うようにします。これを調節力といい、この調節力の衰えが老眼です。具体的には手元33cmを見るためには+3.00の調節力が必要です。老眼の進み具合を測定し、例えばその方の調節力が+2.00の場合は遠近レンズで不足の+1.00を補います。この+1.00が加入度です。

快適な遠近メガネのためにはメガネと目の適正な位置関係が重要です。メガネが所定の位置より下がっていると近用部に目線が届かず近くが見づらくなります。逆に上がっていると遠方視で中間部に視線が入りボヤけた感じになります。また目とメガネの距離も重要です。遠近レンズにはレンズの横の方両側に収差といって少しぼやけたり歪んだりするエリアがあります。通常はこのエリアにはあまり目線が入りませんが、メガネが目から離れていると収差が視界に入って気になったり、近すぎると近用部に目線が届かなかったりします。それでメガネ店のフィッティング技術による適正な位置が重要になります。

 

第2話「健康的でクールな遠近メガネ」

手元の文字などが見づらくなってきたときの対策として、普段メガネを掛けていない人は、手元用のメガネ、いわゆる老眼鏡を使うのが手っ取り早い方法かと思います。また、近視で普段メガネを掛けている人はメガネを外して近くを見ます。いったん解決はするのですが問題もあります。

例えば買い物の時に商品説明や価格の字が小さい場合や薄い場合は意味不明なので老眼鏡を取り出します。掛けたままでは歩けないのでその後外すか鼻メガネにします。会議や商談や食事などでも、資料やメニューを見るときは老眼鏡が必要、ホワイトボードを見るときや対面の方と話すときは外したい、頻繁に掛け外すか、鼻メガネにして上目づかいで見るかになります。

近視で普段メガネを掛けている方は、先ほどの鼻眼鏡の方と逆のしぐさでメガネの掛け外しが必要になります。商品を見るときはメガネを外し、歩き出すときにはまた掛ける、資料やメニューを見るときも外しホワイボードはまた掛ける、こちらも頻繁に掛け外しが必要です。

遠近両用メガネがいいのは、掛け外しが必要ないことです。境目がなく見た目は普通のメガネですが、視線を上下に少し動かすだけで遠くから近くまでピントが合います。近視の方はメガネを遠近に変えるだけ、普段メガネをかけていない方は必要な時だけ遠近を掛けてもいいですし、ずっと掛けていてもいいです。

初めて遠近メガネを掛けるときだけ慣れが必要な場合がありますが、きちんと作られた遠近メガネなら比較的短時間で慣れられます。老眼で見づらいのを無理して見ることが疲労や肩こりの原因になったり、前述の鼻メガネやおでこメガネが年令を感じさせる仕草であることを考えると、遠近メガネは健康的でクールなメガネと言えます。

 

第1話「老眼について」

老眼とは、普段メガネをかけていない人が近くが見づらくなる状態、近視で普段メガネをかけている人はメガネを掛けた状態で近くが見づらくなる状態をいいます。

目の中の水晶体の硬化や筋肉の衰えで、遠くから近くまで自在にピントを合わせられなくなった現象ということでは全員同じなのですが、元々の目の特徴により、生活上の不具合が異なります。

目の特徴とは、若いころからメガネに無縁の「正視や弱い遠視の人」。遠くは少し見づらいので、運転等必要な時に掛ける「弱い近視の人」。遠くが見えないので常時メガネかコンタクトレンズを使っている「強めの近視の人」。皆さんもどれかに当てはまると思います。

正視の人は45才くらいから、遠視の人はもう少し早くから近くが見づらくなり、50代では対策が必須となります。手軽なのは老眼鏡ですが、掛けたまま遠くを見るとクラクラして歩いたりできず、遠近両用メガネに切り替えると生活の質がだいぶ向上します。

弱い近視の人は40代では近くは大丈夫ですか、50代になると近くが見づらいことがあり、50代半ばからは遠くも近くもぼやけた状態で生活しています。遠近を掛ければ遠くも近くもよく見える別世界になります。

メガネを常用している近視の人は、遠くがしっかり見えるメガネを掛けている人は45才くらいから、遠くの度を落としている人は50才くらいからメガネを掛けた状態で近くが見づらくなります。強めの近視の人はメガネを外して近くを見るにはピントが近すぎ、遠く用、近く用の2本使い分けるのは面倒なので、早くから遠近を掛けている人が多く、また初めての遠近も他の目より慣れやすい傾向があります。

メガネのフォーサイトでは、2万円台~3万円台の遠近両用メガネが売れ筋ですが、初めて遠近を試してみたい方もお求めやすいようセットで税込14,300円からご用意しています。

 

メガネのフォーサイト 丸山 毅

市民タイムス8/15掲載「老眼について」

老眼世代の快適視生活講座 第一話

 

老眼について

 

老眼とは、普段メガネをかけていない人が近くが見づらくなる状態、近視で普段メガネをかけている人はメガネを掛けた状態で近くが見づらくなる状態をいいます。

目の中の水晶体の硬化や筋肉の衰えで、遠くから近くまで自在にピントを合わせられなくなった現象ということでは全員同じなのですが、元々の目の特徴により、生活上の不具合が異なります。

 

 

 

目の特徴とは、若いころからメガネに無縁の「正視や弱い遠視の人」。遠くは少し見づらいので、運転等必要な時に掛ける「弱い近視の人」。遠くが見えないので常時メガネかコンタクトレンズを使っている「強めの近視の人」。皆さんもどれかに当てはまると思います。

正視の人は45才くらいから、遠視の人はもう少し早くから近くが見づらくなり、50代では対策が必須となります。手軽なのは老眼鏡ですが、掛けたまま遠くを見るとクラクラして歩いたりできず、遠近両用メガネに切り替えると生活の質がだいぶ向上します。

弱い近視の人は40代では近くは大丈夫ですか、50代になると近くが見づらいことがあり、50代半ばからは遠くも近くもぼやけた状態で生活しています。遠近を掛ければ遠くも近くもよく見える別世界になります。

メガネを常用している近視の人は、遠くがしっかり見えるメガネを掛けている人は45才くらいから、遠くの度を落としている人は50才くらいからメガネを掛けた状態で近くが見づらくなります。強めの近視の人はメガネを外して近くを見るにはピントが近すぎ、遠く用、近く用の2本使い分けるのは面倒なので、早くから遠近を掛けている人が多く、また初めての遠近も他の目より慣れやすい傾向があります。

メガネのフォーサイトでは、2万円台~3万円台の遠近両用メガネが売れ筋ですが、初めて遠近を試してみたい方もお求めやすいようセットで税込14,300円からご用意しています。

 

メガネのフォーサイト 丸山 毅

市民タイムス掲載 第2話 老眼の人に、仕事の効率アップができるメガネ

50代後半から是非おススメしたいメガネが中近メガネです。今回はなぜ中近メガネがオススメかを説明したいと思います。

遠近両用メガネを掛けて、デスクワーク等でパソコンを使っていて、以前より疲れを感じる方は多いと思います。それには理由があります。遠近メガネは遠くを見るエリア(遠用部)がメガネの上半分弱くらい、近くを見るエリア(近用部)が下3分の1くらいあり、それを結んでなだらかに度が変化する部分があります。この部分を累進帯と呼びますが、この累進帯のおかげで遠くから近くまでスムーズに焦点が合います。

ところがこの累進帯というのが上下のエリアに比べて少し狭いのです。まだ老眼がそれほど進んでいないときはパソコンの画面を累進帯と遠用部で見ますが、老眼が進んでくると累進帯と近用部で見ます。そうすると以前に比べて2つ疲れの要因が増します。1つは遠用部より近用部の方が狭いので狭いところから見ることになるということ、もう一つがアゴを上げた姿勢で見ることになるということです。

それで眼精疲労や肩こりが増し仕事等の効率が落ちます。

この状態を解決できるメガネが中近メガネです。中近メガネは遠近メガネより遠用部を狭くしてその分累進帯と近用部を広くしています。それで広い視野と楽な姿勢でのデスクワーク等が可能になります。遠近よりは狭いものの遠くも見えます。メガネを作る立場で言うと中近メガネは難易度の高いメガネです。メガネの使用環境等作る上でのポイント事項をしっかり確認して、適正な度数、設計、目との位置関係で作られていれば大丈夫ですが、そうでない場合は使いづらいメガネになることがあります。

市民タイムス掲載 第1話 老眼に引っ張られて目が変わる!?

目が変化する時期は3つあります。体の成長時、環境が変わったとき、そして老眼時です。一番大きく変化するのは体の成長時で、目の大きさ(奥行)や形によって近視や遠視、乱視になることがあります。遺伝の要素が大きいと言われています。環境要因として、パソコン作業など近いところを見る時間が長くなって近視になることもあります。これは環境が変わったからと言って必ずなるというものではありません。一方40代中ごろから全員がなるのが老眼です。これは遠くが見える状態で(近視の人はメガネを掛けた状態で)近くが見づらくなる症状で目のピント調節機能の衰えです。

老眼対策としては遠近両用メガネがおススメです。ところで、老眼の進行とともに近視がいくらか改善することがあります。私自身近視ですがここ何年かで近視の度合いが2段階弱くなっています。その結果どうなるかというと、使っているメガネで遠くの見え方は変わらないのですが近くが見づらくなります。この時、遠くは過矯正(近視改善によりメガネの度が強すぎる状態)で目が以前より疲れます。近くは老眼が進んで近くが見づらくなることに加えて、近視が改善したことによりさらに近くが見づらいダブルの状態になっています。

この状態は結構見受けられます。メガネの度を変えれば疲れ解消と近くが見やすくなるというダブル効果が期待できます。気になる方は確認できますのでご来店ください。

 筆者 丸山 毅

長年メーカー(セイコーエプソン光学事業部(当時))でメガネレンズの企画開発に携わり2009年メガネのフォーサイトを設立。以来多くの方に最適のメガネを製作。店舗業務の傍らメガネに関するセミナーや新聞でのコラムを執筆。メガネのフォーサイトはお手頃価格のメガネからブランドメガネまで市内最大級1500本のメガネを取り揃えています。

知っておきたい「遠近両用メガネ」の話 第6話

第6話 総集編 Q&A

今まで5回にわたって遠近両用メガネの解説をしてきましたが、今回はよくある質問にお答えする形で遠近両用メガネについて解説します。

 

Q遠近両用メガネを掛けると老眼が早く進むのではないか?

A老眼は遠くから近くへ自動的にピントを合わせる目の調節力の衰えで、加齢とともに進行します。遠近両用メガネはその人の(残っている)調節力を最大発揮して足りない部分をメガネで補うしくみなのでこれにより老眼の進行が早まることはありません。

 

Q遠近両用メガネは慣れづらいのではないか?

A慣れづらい場合は、度数や目とレンズの位置関係またはレンズ設計との相性になんらかの不具合が考えられます。それらが適切な遠近両用メガネは便利に使うことができます。しかし老眼になる前の若いころの視野と比較すれば狭さを感じる時があります。

 

Q遠近両用メガネはいくらくらいか?

Aひと昔前はかなり高額でしたが、最近は格安品で1万円台から販売されています。業界の統計を見ると昨年の全国平均は3万円台です。

 

Q遠近両用メガネで値段に差があるのはなぜか?

A一般にメガネの値段の差は、フレームではチタンなどの高性能素材、日本製、有名ブランドなどが価格が高めで、レンズでは薄く軽くする高屈折率素材、高機能コーティングなどで価格が上がります。遠近両用メガネは少しでも視野を広くするための設計上の競争が各メーカーで行われていて、その性能によっても価格に違いがあります。

 

Q遠近両用メガネと中近メガネのどちらがいいか?

A一般的には、日常生活のほとんどのシーンに対応できる遠近両用メガネがいいと思います。中近メガネはデスクワークや読書等が長時間の場合、だいぶ細かいものを見る場合、老眼が進んできて遠近両用メガネでパソコンの画面を見る時にアゴが上がって疲れる場合等に最適です。室内程度の遠さは見えますが、車の運転には適していません。

 

Q50代でも近くが見える人がいるが老眼にならない人もいるか?

Aその人は近視です。近視の人はメガネを外せば近くが見えます。しかし遠くはぼやけています。遠くが見えるメガネを掛けると近くは見えません。若いころのように遠くも近くも見えることはないので老眼です。老眼にならない人はいません。

 

Q老眼になったら遠近両用メガネを掛けた方がいいのか?

A見づらさを我慢していると、眼精疲労や肩こりになったり、眉間にしわがよったりします。遠近両用メガネを掛けることによる弊害はないので掛けた方いいと思います。今までメガネと無縁だった人は、メガネを掛ける事自体の煩わしさや、レンズを通した見え方、視野の狭さなどに違和感を持つかもしれませんが、必要ないときは掛けずに必要なときだけ掛けるという使い方で問題ありません。

 

Q老眼が進むたびにメガネを作り直さなくてはならないか?

A老眼は年齢と共に確実に進みますがゆっくりと進みます。一般的には3年くらいたつと遠くはいいのですが近くが見づらくなることがあるので、そういう場合は作りなおした方がいいと思います。レンズ交換だけできる店もあります。なお、生活していて見え方に急な変化がある場合は眼科の受診をおすすめします。

 

Q遠近両用メガネを掛ければ老眼になる前と同じように見えるか?

A遠近両用メガネは遠くを見るエリア、近くを見るエリア、それを結んで連続的に度が変わる中間のエリアがあり、視線の使い分けで遠くから近くまで全てにピントが合います。横の方に少しぼやけたり歪んで見えるところがあるので、老眼になる前と全く同じように自由にピントが合って視野も広い状態は再現できませんが、現在のテクノロジーでは老眼の視生活を快適に過ごすための一番いい道具と言えます。

 

Q遠近両用メガネ以外のメガネは必要ないか?

A日常生活全般には遠近両用メガネが必要ですが、老眼が進んだ場合や、仕事等で長時間近いところを見る、あるいは細かいものを見る場合は、さらに専用メガネを持つと楽です。また、スポーツ用に設計を工夫した遠近両用メガネや、外で色が着く調光タイプの遠近両用メガネ等もシニアの視生活向上に役立ちます。

知っておきたい「遠近両用メガネ」の話 第5話

第5話 老眼について知っておきましょう!

40代後半になるとどなたも老眼を経験することになります。老眼は一般的には近いところが見えづらくなる現象ですが、若いころからメガネを掛けている人とメガネを掛けていない人で、老眼になった時の仕草が違います。若いころからメガネを掛けている人は、大部分が近視の人です。近視の特徴を一言で言うと、遠くがぼやけて近くにピントが合う目です。遠くがぼやけると学校で黒板の字が見えなかったり、運転免許で視力が足りなかったり不便なのでメガネを掛けます。強めの近視の人はメガネを外すとだいぶ近いところでピントが合います。また弱めから中程度の近視の人は40代後半になっても、メガネを外すとちょうど手元でピントが合うので、老眼ではないと思う人もいますが、その状態では遠くがぼやけ、メガネを掛けると遠くはハッキリしますが近くが見づらいので、目の状態は老眼です。おでこにメガネを上げて近くを見るのが特徴的な仕草です。一方、若いころからメガネを掛けていない人には、正視(近視でも遠視でもない)の人と、遠視の人がいます。正視の人が40代後半くらいから老眼になると、遠くは相変わらずよく見えますが、近いところが見えづらくなります。一方遠視の目は遠くが良く見えて近くが苦手な目です。遠視の人が老眼になると、遠視の強弱にもよりますが、早い人では40才前後から近いところが見づらくなります。正視や遠視の人が老眼鏡を使うと遠くを見る時は老眼鏡が邪魔なのでよく鼻メガネになります。

では老眼とは何でしょうか?これも一言でいうと遠くから近くまで無意識にピントを合わせる力=調節力の衰えです。調節力の衰えが何故おこるかというと、目の水晶体の硬化と目の筋肉=毛様体筋の衰えです。

その2つの進行により水晶体を膨らませることができなくなり、自在なピント合わせができなくなってきた状態です。よく老眼鏡に+1.00(弱)+2.00(中)+3.00(強)などと書いてあると思いますが、水晶体を膨らませて+3.00度を強くすると3.00の逆数(1÷3.00)=0.33mすなわち33cmにピントを合わせる事ができます。老眼はこのことが段々できなくなるということで、自力で調節できるのが40代後半で+2.50~+1.75 見える近いところは40cm(1÷2.50=0.4m)~57cm(1÷1.75=0.57m) 50代で+1.75~+0.75(57cm~133cm) 60代以降で+0.75~+0.25(133cm~400cm) 33cmのところを見るためには必要な調節力+3.00に対して足りない部分をメガネで補うことになります。例えば自力が+1.00なら+2.00の加入度のメガネとなります。なお、ここにあげた数字は日常生活でPC画面や新聞等ある程度持続して見る場合の調節力です。瞬間ならこの数字の倍くらいいけるかもしれません。

老眼の進行を遅らせるために調節力を鍛えたいと、かなり近くが見づらくても頑張ってメガネを掛けないとうい人がいます。しかし老眼(水晶体の硬化と毛様体筋の衰え)は年齢とともに必ず進行し鍛えて維持したり強化することはできません。遠近両用メガネは使用するそれぞれの人に最適な加入度で作ります。言い変えると、その人がその年齢で発揮できる調節力は自力で最大発揮しながら、それ以上は無理な部分を適正な加入度で補っています。だから遠近両用メガネを掛けたからといって掛けないより老眼が早く進むということはありあません。目は膨大な情報をとらえる重要な器官ですから、見づらいのを我慢していることによる眼精疲労や、ストレスが体に及ぼす悪影響の方が問題が大きいと言われています。

市民タイムス8月掲載「知っておきたい遠近両用メガネの話」第4話

第4話「遠近両用メガネの価格のちがいについて」

遠近両用メガネの性能の差と、それに伴う価格の差について説明したいと思います。

フレームの価格差も大きいのですが、ここではレンズについて説明します。大きくは、素材やコーティングの差と、設計の差があります。このうち、素材やコーティングの差は比較的わかり易いと思います。薄型、超薄型のように、度の強いレンズを少しでも薄く、軽くすること、また、よりキズが付きづらいコート、青色光カットのコート等で、これによって一般的には値段も違ってきます。一方、設計の差についてはわかりづらいのではないかと思いますので、今回はこの設計の差を説明したいと思います。一言で言うと、遠近特有の周辺部の歪み(右図の両サイドの点線の外側の部分、なお、実際のメガネはこのような線はありません)や目線を横に移動させた時の像のユレをいかに少なくするかということになります。

遠近両用メガネの構造図

価格の差に関係してくる設計の違いは大きく3つのグループに分かれます。

1.外面累進タイプ(スタンダードタイプ)

累進(面)とは右図の中間の部分です。遠用部と近用部をつなぐところで連続的に徐々に度数が変化しています。この累進面により、以前のような境目がなくなり、また、遠くから近くへ自然に焦点が合うようになりました。メーカーは、多くの人に合うような累進設計を予めレンズの外面(表面)に施しておき、注文が入ると、裏面でそれぞれの人に合った、近視や遠視や乱視の度数を研磨して作り上げます。洋服で言えば、セミオーダーメイドです。

2.内面累進タイプ(カスタムタイプ)

累進面をレンズの裏面(内面)に施すと、歪みやユレが軽減されることは、光学理論上は早くからわかっていましたが、累進面と近視や遠視や乱視の設計を全て裏面に持って来ることは、設計上も生産技術上も困難でした。このことが、1990年代の中ごろからできるようになりました。当初はかなり高額なレンズでしたが、段々コストもこなれてきて、最近は内面累進タイプの遠近が増えてきました。洋服で言えばオーダーメイドで、注文後にそれぞれの人に合った設計でレンズを研磨します。

3.両面制御タイプ(カスタムタイプ)

最近新たに開発された設計で、基本は上記の内面累進タイプですが、外面にさらに内面と連動した設計を施しています。具体的には、レンズを通して物を見ると、倍率と形が微妙に変化します。この変化をできるだけ、元の大きさや形に近づけるような工夫が外面に設計されています。

上記の1→2→3の順により快適な視界が実現されます。特に、老眼が進んできて、遠近の度数の差が大きくなってくると、性能の差が明確になります。新しい設計や生産技術は、開発費や生産設備の新規投資等のコストが上乗せされるため、価格面でも差があります。

市民タイムス7月掲載「知っておきたい遠近両用メガネの話」第3話

第3話 「中近メガネの構造と使い方」

老眼対策のメガネとしては、生活のほとんどの場面に対応できる遠近両用メガネが一般的ですが、より快適な視生活を実現するために中近メガネを併用する場合があります。

中近レンズの構造図

中近メガネは遠近両用メガネの設計技術を応用して作られたメガネで、設計上は中間部が20mm~25mmと長く、遠用部が狭い構造になっています。視線のほとんどが中間部と近用部を使うことになります。その結果、お手元からパソコンの画面あたりが遠近両用メガネより広い視界になります。遠用部が狭いのと度数が連続的に徐々に変化している中間部で少し離れたところを見るため、遠いところが少しぼやけたり、遠近両用メガネの見え方に慣れていると、使い始めの時に少し離れたあたりの見え方に違和感を感じる場合があります。では、中近メガネはどういう時に便利かと言うと、長時間のデスクワーク、細かいものを見る場合、また、50代後半以降で遠近でパソコンの画面をアゴを上げて見て疲れる等の場合に便利です。室内程度の距離ならだいたい見る事ができ、掛けたまま歩けます。中近レンズは、近く重視の設計や、遠くもある程度見える設計など、設計上の特徴が遠近両用レンズ以上にハッキリしています。また、メガネ店での度数の決め方やメガネフレームへのレンズのセット位置でも見え方がだいぶ変わります。それで、中近メガネを作る場合は、使用者とメガネ店でよく意思疎通をしておかないと、思惑通りのメガネにならない場合があるので要注意です。遠近両用メガネの場合もそうですが、メガネ店に相談に行く前に、現在見え方でどういう時に不便を感じているか、パソコンを長時間使うか、その場合のパソコンのモニター(画面)の目からの距離や高さなどを説明できるように整理しておくのが良いと思います。

ほかには、近々メガネというものがあります。老眼鏡に少し奥行きを持たせたメガネです。用途はほとんどパソコンを使うとき用で、特に老眼がだいぶ進んだ60代以降でパソコンを楽に見たい場合です。掛けたまま歩くのには適していません。

あと、老眼鏡を使う場合、既製老眼鏡は安くて便利ですが、目のためには測定に基づいた正確な度数と、瞳とレンズの焦点の正しい位置関係から作られたメガネをオススメします。

市民タイムス6月掲載「知っておきたい遠近両用メガネの話」 第2話

第2話 「快適な遠近メガネにするためのキーポイント」

遠近両用メガネは遠くから手元までピントが合うので、生活シーンのほとんどをカバーする便利なメガネです。最近手元が見づらいと感じ始めた方や、すでに遠近両用メガネを掛けているけれど、どうも見えづらいといった方がいると思います。

<快適な遠近両用メガネの3つのポイント>

お使いの遠近両用メガネに不具合を感じる場合、3点ほどチェックポイントがあります。1つは、目の中心とレンズの焦点の位置、目とレンズの距離、レンズの傾き具合等、目とメガネの位置関係が適切でない場合です。この場合は、メガネを変えなくても調整を正確にしなおせば解決する場合があります。2つ目は、レンズの設計が合っていない場合です。レンズメーカーは何社もあり、各社がいろいろな設計のレンズを出しているので、メガネ店が、使用者に一番合った設計を選択する必要があります。例えば、近いところを見る時に、レンズの累進帯長(レンズ上部の遠くを見るエリアと下部の近くを見るエリアを結ぶなだらかに度が変化していく部分の長さ)が長くて、目線がレンズの近くを見るエリアにとどかないといった事例は時々確認されます。レンズ設計が合わない場合は、レンズを替える必要がありますが、目の状況や使用環境に合った設計のレンズに変えるとかなり快適な見え方になります。3つ目は、度数が合っていない場合です。老眼は進行するので、その結果度が合わなくなったりします。また、老眼の進行と共に従来より少し近視の度合いが弱くなることもあり、以前のメガネだと目に負担がかかっていることがあります。

<初めて遠近両用メガネ>

初めて遠近両用メガネを掛けて見ようか、という時は何かと不安があるかと思います。私は年に2回行っているセミナーで、遠近両用メガネをテーマに、老眼のメカニズム、遠近両用メガネの構造、慣れ方や使い方のコツ、などを説明していますが、店舗で実際にお作りする時もそれぞれのポイントをご説明しています。前述の3つのポイントが適切に作られていることと、初めての場合は慣れて使えるようになるということも重要なポイントとなるので、目の状況や、今までメガネをかけていたかいなかったかなど、おひとりずつのケースで工夫が必要になります。そして、慣れ方について脳のしくみも交えてお話しています。

<メガネでオシャレを楽しむ>

メガネは視力的に目に合っていることが前提ですが、ファッション的に似合っていることも重要なポイントだと思います。遠近両用メガネが必要な世代は、エイジングケアに関心がある人も多いと思います。メガネのデザインや色により、だいぶ若々しい印象にできます。また、レンズにうっすら色を入れる事で、小じわやくすみを目立たなくすることができ、オシャレの重要なアイテムともなります。

市民タイムス5月掲載「知っておきたい遠近両用メガネの話」 第1話

第1話 「遠近両用レンズには1人ひとりに最適の設計がある」

遠近両用レンズは、いろいろなメーカーから多種多様なレンズが販売されています。薄型化など素材やコートの種類もありますが、遠近両用レンズは、さらに設計の違いで種類が豊富になります。

私は、メーカーで長年メガネレンズの企画開発を行ってきました。遠近両用レンズは、見た目は普通の透明なレンズですが、上部に遠くを見るエリア=遠用部、下部に近くを見るエリア=近用部、それを結んで徐々に度が変わるエリア=中間部、が設計されていて、両サイドに少し物が歪んで見える=収差が出るエリアがあります。(図の点線の外側)ごく簡単に言いますと、遠用部や近用部を広くとると、収差の度合いが強くなります。こういう設計をハード設計と言い、一般に近視系の目の人に合います。一方、収差の強さを抑えて、全体にマイルドな見え方にしたものはソフト設計で、一般に遠視系の目の人に合います。(遠視系のメガネは凸レンズで、物が少し拡大され、収差を感じやすいため。)また、中間部の長さ=累進帯長は、1mm刻み、10mm~15mmくらいで、短いほど収差が強くなります。あと、遠用部と近用部の度の差=加入度は、0.25飛び、1.00(40代後半)~3.00(60代後半以降)くらいで、大きくなるほど収差が強くなります。中間部が短いと上下の幅の狭いフレームに対応できたり、遠用部や近用部を広く取れます。しかし、加入度が強くなると収差が気になったり、パソコンの画面などを中間部で見る時に狭さを感じます。では、できるだけ累進帯長を長くすればいいかというと、あまり長いと目線が近用部に届かないという問題がおきます。以上は遠近設計の基本ですが、さらに遠用重視の設計、近用重視の設計等、使う人の使用環境や目の状況に合うよう、多くのバリエーションがあります。

このようにレンズはいろいろ開発されていますが、メガネとして活かされるかどうかは、使用者の目の状況と使用環境を適切に把握し、最適な設計のレンズを選び、加工や調整で目とメガネの距離や角度等、位置関係を正確に合わせるといったメガネ店の技術にかかっています。私はメーカーでレンズの企画開発に携わりながら、こうしていろいろ開発されてきたレンズの特性を最大限活かした、最高のパフォーマンスの遠近両用メガネを自分の手で提供したいという思いが次第強くなっていき、6年前にメガネ店を開設しました。この間多くの方々に遠近両用メガネをお作りする機会を得て現在に至っています。