‘市民タイムス掲載 目とメガネの講座’ カテゴリーのアーカイブ

シニアの快適視生活講座

◇◇ メガネレンズ開発の歴史 ◇◇

 

現在主流のプラスチックレンズや境目のない遠近両用レンズ(累進レンズ)は半世紀以上の歴史がありますが、1980年代から90年代が大型開発のピークで、ここ数十年は大きな開発はなされていません。主にセイコーエプソン光学事業部(現HOYA)で開発され、私事ですが1986年~2008年まで光学事業部に在籍し直接携わることができました。

具体的には素材と設計の大型開発がこの時期に集中し、その後はブルーライトカットなどのコーティング関係や設計のリニューアルなど小型の開発が中心になっています。

素材は、長らく屈折率1.50のモノマー(原料)が主流でしたが、80年代から90年代にかけて一気に1.60、1.56、1.67、1.74の順に開発され、より薄く軽く仕上がるようになりました。1.74のモノマーが開発されてから30年以上さらに高屈折のモノマーは開発されていません。現在の主流は1.60=薄型レンズとなっています。

設計は、単焦点は球面レンズ、遠近は外面累進が主流でした。80年代に、より薄くよりゆがみの少ない非球面レンズが開発され、90年代にさらに両面非球面レンズが開発されました。現在の主流は非球面レンズです。累進レンズは80年代に中近が開発され、90年代に内面累進が開発されました。この内面累進の誕生はその後を左右する大きな開発となっています。それまでガラス型に累進面を作りその転写により、(レンズの裏表の)表面に予め累進面(遠近設計)をもつプラスチックレンズを用意しておき、個々の注文に応じて近視や遠視の度数を裏面を研磨して仕上げていました。内面累進は累進面と近視や遠視などをすべての要素を一つの面に複合設計しそれをフリーフォームマシンで仕上げるという、設計と生産の技術革新がなされました。その後の新製品はこの技術の応用で、設計のリニューアルや使用者の個別パラメータを取り込んだインディビジュアル化が行われています。

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◇◇ メガネレンズの選び方 ◇◇

メガネ店でメガネレンズを選ぶときに参考になる内容を説明したいと思います。近視や遠視、乱視などの単焦点レンズは、球面レンズから非球面レンズそして両面非球面レンズと進化してきました。また遠近両用レンズや中近レンズは、外面累進レンズから内面累進レンズそして両面制御設計レンズと進化しています。

単焦点レンズは度がそれほど強くなければ非球面レンズがよく、度が強い場合は両面非球面レンズがいいと思います。球面レンズに比べて非球面レンズは周辺部のゆがみが抑えられているのと薄く仕上がります。両面非球面レンズはさらに周辺部がゆがまず、薄く仕上がるレンズです。厚さやゆがみが気になる強度の人は両面非球面レンズがいいと思います。

遠近や中近は内面累進レンズや両面制御レンズがおススメです。内面累進は外面累進に比べて周辺部のぼやけやゆがみが少なく目線移動時のユレも少なくなっています。両面制御設計はベースは内面累進でさらに自然な見え方を追求した新しいレンズです。あと単焦点レンズも遠近レンズもレンズの素材で標準、薄型、超薄型などと別れています。これはレンズの屈折率の違いで、屈折率1.50や1.56が標準、1.60が薄型、1.67が超薄型、1.74が最薄とか極薄と書かれていたりします。

店でレンズを選ぶときにレンズの価格表を見せられると思います。一般に想像以上に種類があってよくわからないと思いますが、上記を参考に、度が強くなければ「屈折率1.50~1.60」度が強ければ「1.67以上」、単焦点なら「非球面」度が強ければ「両面非球面」、遠近や中近なら「内面累進」か「両面制御」(両面複合という場合もある)とキーワードだけ覚えておけば結構簡単に選べると思います。

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◇◇ メガネレンズのコーティングについて ◇◇

 

メガネレンズの構成要素として「素材」「設計」「コーティング」があります。素材はプラスチック樹脂の種類で、屈折率別で5種類ほどあります。設計はレンズをその人に必要な度に仕上げることです。

今回はコーティングについて説明します。コーティングのうち、反射防止コート、キズ防止コート、汚れ防止コート、紫外線カットは現在ほぼ標準装備されています。オプションとして有料加算されるのは、多い順に、まずカラーリングとブルーライトカットです。カラーの目的は目元のおしゃれとまぶしさ防止です。いろいろな色や濃さが選べます。色や濃さは微妙な違いがあるので、店で用意しているサンプルを見ながら店の人に相談するといいと思います。ブルーライトカットは可視光線の中でエネルギーが一番強い短波長の領域を30%程度カットして、目の疲れをやわらげる効果があります。

あと、物理的な内容と光をコントロールする内容があります。物理的には、表面を固くしてよりキズがつきづらくするコートと、曇りづらくする防曇コートがあります。防曇コートは反射が気になったり、汚れがふき取りづらかったりするのでどうしても必要な人が選ぶ感じです。光のコントロールとしては、調光コート、偏光コート、防眩コートなどがあります。調光は室内では透明、屋外では色が着くレンズです。注意点は、車の中ではあまり色づかない、着色は数十秒だが退色は数分かかるということです。偏光は乱反射をカットし物がはっきり見えるサングラスで、釣り、ゴルフ、ドライブ、ハイキング等で重宝します。防眩コートは夜間の対向車のライトのまぶしさを軽減したり、ものがはっきり見える効果があります。

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◇◇ 老眼とメガネ ◇◇

 

老眼には遠近両用メガネをお勧めします。なぜ遠近メガネか一言でいうと便利だからです。老眼になると普段メガネを掛けていない人は手元が見づらくなり、老眼鏡が必要となります。老眼鏡は近くだけにピントが合うので遠くは外して見る必要があり、掛け外しが結構大変で、それで掛け外しのない遠近メガネが便利です。また普段メガネを掛けている近視の人は老眼になるとメガネを外して近くを見ます。メガネを外すと遠くは見づらいのでこの場合も掛け外しが頻繁で、掛け外しのない遠近メガネが便利です。

遠近メガネ使用によるデメリットはありませんが、しいて言うならば最初に遠近メガネを掛けるときに慣れが必要な人もいます。この「慣れ」については老眼になり始めのうちに遠近メガネにすると簡単に慣れられます。老眼の進行が進んでから初めて遠近メガネを掛けると慣れるのに日数がかかる場合があります。

すでに遠近メガネを掛けている人が見づらさを感じる場合は2つ原因が考えられます。掛けているうちにメガネが緩んだり、ぶつけたりしてメガネがずれている場合です。遠近メガネは目とメガネ(レンズ)の位置関係が非常に重要で、メガネのずれは見え方に影響します。また老眼は進行するので3年くらいたつと度が合わなくなって見づらい場合があります。この場合近くが見づらくなりますが、老眼の影響で近視が少しやわらいだり、少し遠視気味になると以前より目の疲れを感じる場合があります。いずれもメガネ店に行けば確認できます。

50代後半以降は老眼もだいぶ進むので、場合によっては遠近メガネでのデスクワークや室内作業に不具合を感じる場合があります。このような時は遠近メガネと中近メガネを併用することにより改善します。60代中ごろには老眼は進み切る形で、その後見え方の変化は少なくなります。このころに以前より見づらさを感じる場合は白内障等の可能性もあります。

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◇◇ 第五回 メガネ購入後のアドバイス ◇◇

初めて遠近メガネをかけた場合や、今までと度や設計を変えた場合、すぐになじむ方も多いのですが、違和感がある方もいます。目は(脳の視覚野は)今までの見え方に適応していて、今までと違う見え方に慣れが必要な場合があることが原因です。そのためそういう場合は、適正に作られたメガネなら2、3日から1週間くらいで快適に使えるようになります。そういう期間を持った上でまだ違和感がある場合はメガネ店に相談してください。だいたいのメガネ店は3カ月程度保証期間を設けていて、仮にレンズを交換する必要がある場合も追加料金なしでできるところが多いと思います。

メガネを使っていると、メガネをぶつけてしまったり、踏んでしまったり、修理が必要になることがあります。メガネフレームは大雑把に言って、曲がった、外れた、といった内容は店で修理可能ですが、切れた、折れたといった内容は修理工場での修理になるか、素材によっては修理不可能です。レンズ自体のキズやコート剥がれやカケはすべて修理不可能なのでレンズ交換になります。

もう少し具体的に説明しますと、まず店でなおせる内容として、メガネは何か所かネジがついていますがネジがゆるんだり外れたりして、例えばテンプル(フレームのツル)が外れてしまったり、レンズが外れてしまってびっくりするかもしれませんが比較的簡単になおせます。また曲がってしまった場合もだいたいなおせますが、戻す過程で金属が切れてしまうこともたまにあります。下だけふちのないタイプでレンズが外れた場合もなおせます。店での修理は購入した店でなら大体のところはアフターサービスとして無料だと思います。

次に修理工場でなおせる内容ですが、まず修理工場でなおす場合は2週間程度かかる場合が多く、費用も修理内容によりますが三千円~八千円程度かかります。切れた、折れたという場合、金属フレーム、アセテートのフレーム(セルフレーム)の場合は修理可能ですが、形状記憶の合成樹脂の場合は修理不可です。修理工場へはメガネ店での取次になります。

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◇◇ 第四回 メガネ購入時のアドバイス ◇◇

遠近メガネや中近メガネを購入する際の注意点を説明したいと思います。

メガネフレームを選ぶとき、遠近メガネを快適に使うための機能面でのチェックポイントとして、メガネの上下の真ん中より少し上にご自身の瞳がくるくらいがベストです。だいぶ上の方に瞳がある場合は遠近の遠用部を狭く作らざるを得なくなるか、近用部までの視線が遠くなり、遠方視野が狭くなったり、近くが見づらくなります。また、あまり瞳が下の方にきていると近用部が狭くなります。

あとメガネが目にだいぶ近いと、これも近用部に視線がとどかなく近くが見づらくなりますし、まつ毛が当たったりしていると不快です。メガネが目から離れすぎていると側方の「収差」が目線に入り気になるかもしれません。これらはフィッテイングである程度改善できるので店の人に相談してみてください。

レンズの数字の基礎知識を覚えておくと参考になります。特にCという文字のあとの数字は乱視の強さで、近視や遠視の度にくらべ検眼者の裁量が大きな数字です。しっかり乱視補正をすると目がクラクラするということもあり、検眼者に確認したりテストメガネで体感するといいと思います。もう一つは加入度(ADD)という数字で、これは老眼の進み具合で変わる数字ですが、だいたい年齢に比例します。40代後半で0.75~1.00、50代前半で1.25~1.50、50代後半で1.75~2.00、60代前半で2.25~2.50、60代後半以降2.50~3.00、検眼では少し強めに出る傾向があり、強すぎると近くはよく見えますが慣れづらかったり視野が狭く感じる場合があるので、ご自身の年齢と平均的な加入度を記憶しておき実際の数字を確認していくといいと思います。

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◇◇ 第三回 メガネ購入時のアドバイス(フレーム編) ◇◇

メガネフレームの素材は、金属(チタン、合金)と樹脂(アセテート、合成樹脂)に分けられます。チタンは軽くて丈夫で、ベータチタンのようにバネ性(形状記憶)のあるものもあり、おススメの素材です。価格は合金より高めですが最近は比較的お求めやすい価格になってきました。合金はチタンより少し重量があります。また、金属アレルギーのある人には向いていませんが、安く購入できます。アセテートはセルフレームと言われて植物性の樹脂でできています。デザインや色が多様で見た目も美しく、低価格~ブランド品(一般に高価格)まで多様です。石油由来の合成樹脂は、軽くて弾力性があり、かけ心地がいいものが多く価格も比較的安価です。

産地は、低価格品の多くは中国で、日本製は比較的高価です。一部イタリアなど欧州製がありますがブランド品が多く高価です。産地にかかわらず有名ブランド品のほとんどは高価なフレームです。

性能や品質は、日本製は一般的には高性能で長持ちします。日本製のチタンフレームを選んでおけばほぼ間違いありません。中国製は品質にバラつきがあるような気がします。中には雑な作りのものも見受けられます。欧州製はデザイン重視だったり白人の顔の造作に適しているものなどが見受けられますが、非常にいい製品もあります。樹脂フレームでアセテートは鼻パットがついてないものが多いので掛けたときに鼻元のフィット感がよいか(ずり落ちないか)確認する必要があります。特に遠近や中近メガネにする場合はここのフィット感は重要です。合成樹脂はかけ心地のいいタイプが多いと思いますが、耐久性としては他に比べ低いものもあるので長く使う方は注意が必要です。

度の強い人に適さない横幅が広いフレームや、遠近に適さない縦幅が短いフレームなどもあるので、決める時は店の人に確認してもらうとよいかと思います。

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◇◇ 第二回 メガネ購入時のアドバイス(レンズ編) ◇◇

今回はレンズに関してメガネ購入時のお役立ち情報をお送りしたいと思います。レンズは大きく分けると2種類あります。一つは「単焦点レンズ」というもので、用途は近視や遠視や乱視補正、お手元用です。もう一つは「多焦点レンズ」で遠近や中近など老眼補正です。

両方に共通していることとしてレンズの素材区分があります。薄型や超薄型などと呼ばれていますが、主に5種類あり、レンズ素材の屈折率(1.50、1.56、1.60、1.67、1.74)の違いで、数字が大きいほど同じ度でも薄く軽く仕上がりますが、一般的には価格も上がります。ここでのコツは、度の弱い人は高屈折のレンズにする必要はないということです。素材に関しては、値段が高い方がいいだろうということではなく、その人の度に合った屈折率でいいということです。

あと遠近や中近についてのコツになりますが、遠近や中近は屈折率によるグレードの違いと設計によるグレードの違いがあり、設計によるグレードの違いの方が価格差が大きくなっています。ハイグレード品は性能もよく快適ですが、ハイグレードでなければダメということはありません。老眼の進み具合は初期(40代~50代初)、中期(50代)、後期(60代以降)となりますが、老眼の進行に伴い遠近や中近レンズの上部(遠くを見る度)と下部(近くを見る度)の差(加入度)をだんだん大きくする必要があります。初期で加入0.75~1.25、中期で1.50~2.00、後期で2.25~2.75、加入度が大きくなるとレンズの側方部(両端)の収差(ボケ、ゆがみ)が大きくなり明視域が狭くなります。この時にハイグレード品の方が快適な視界になります。初期の段階ではグレードの差による見え方の差は中期以降より少ないので、どうしてもハイグレードにしなくてはいけないということはないと思います。

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◇◇ 第一回 メガネ購入前の一般知識 ◇◇

 

今回のシリーズは、遠近や中近メガネを中心にメガネに関して、購入前、購入時、購入後にそれぞれ役立つ情報を月1回6か月間掲載させていただきますので、ぜひご参考になさってみてください。

早速、今回第一回は購入前の一般情報をお伝えします。

メガネ製作にかかわるのは、レンズメーカー、フレームメーカー、メガネ店です。

レンズメーカーはそれほど数が多くなく、HOYA、SEIKO、NIKON大手3社と中小の何社かです。大手3社で70%以上のシェアを占めます。メガネレンズは医療機器の扱いで、性能や品質はどれも一定水準以上でいわゆる粗悪品はありません。遠近や中近レンズの性能もどのメーカーもだいたい横並びのような感じがします。レンズに関してあまり当たりはずれはないと考えていいと思います。

一方フレームメーカーは比較的多数です。後の回で購入時のコツを詳しく説明しますが、フレームは素材や生産地によって性能に特徴や違いがあるので、店の人に相談するか、ご自身で絞り込んだ場合も最後に店の人に確認して決めた方がいいと思います。

メガネ店(松本地域の)は大きく分けると、①低価格指向の全国チェーン店、②一定価格(2万円前後)の全国チェーン店、③地元のチェーン店、④地元の小規模専門店になります。どの店でもすべての種類のメガネ(単焦点、遠近、中近等)が入手可能ですが、特徴や得意分野もあります。①は低予算で購入でき、比較的若年層中心、②③はメガネの種類や客層も多様でオールマイティ、④は取り揃えに特徴のある店があり、ハイセンスのフレームの店、高級ブランドを揃えた店、当店のように遠近や中近を得意とする店、などがあります。

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第6話「遠近メガネご購入時の概要」

 

遠近メガネを購入する場合のポイントを当店に限らず一般的な内容として説明します。

まずレンズの度を決める必要がありますが、眼科で検眼して処方箋を出してもらうか、メガネ店で測るか、遠近メガネもどちらでもOKです。気になる場合、眼科でなら白内障等も確認できます。メガネ店はワンストップで便利です。その際お使いのメガネは持参した方がいいのと、検眼時に質問されるので、どのような場面で見え方に問題があるか説明できるようにしておくといいと思います。例えば、スマホ等手元が見づらくなった、遠近を使っているがパソコンのモニターが見づらくアゴを上げて見て疲れる、等。

メガネフレームは店で選ぶのが一般的ですが、お持ちのメガネを使うこともできます。フレームは一般的に中国で大量生産したものは安価で、日本製や有名ブランド品は高めの設定になっています。

レンズもいろいろなグレードがありますが、違いのポイントは、強度レンズを薄く軽くする超薄型など屈折率の高いレンズは価格が上がります。また、遠近メガネは横の方に収差といってぼやけたり歪んだりするエリアがあり、通常気にならないように作りますが、老眼が進むと遠くと近くの度の差(加入度)を大きくする必要があり、50代後半くらいから加入度が2.00を超えてくると収差が大きくなます。このときハイグレードの設計の方が収差を抑えて作ることができます。

遠近メガネは特注でレンズを作るためお渡しはだいたい1週間後となります。また多くのメガネ店では保証期間を設けており、レンズを替えたりする必要がある場合でも3カ月程度は無料で行っている店が多いと思います。

 

第5話「遠近メガネの仲間たち」

遠近レンズの特徴である「累進面」を中心に遠近レンズの設計の説明を前回しましたが、新しい設計技術と生産技術により多様なレンズが発売されています。多様なレンズがある理由は、遠近メガネは日常生活全般をカバーするので基本これ一本でOKなのですが、デスクワークの時間が長くて目が疲れる等、生活の特定の状況をより快適にするためのメガネとして開発されてきた経緯があります。

最近のメーカー各社の傾向として遠近を含めて4種類の設計バリエーションを用意していることが多いです。SEIKOを例にあげますと、オールラウンド(遠近)、タウン、オフィス(中近)ルーム。

オフィスは従来中近レンズと呼ばれてきたもので、遠近設計に比べて中間部と近用部が広く設計されています。室内用メガネと呼ばれることもあり、デスクワーク等室内でのお仕事や生活で、遠近レンズに比べて手元やパソコンの画面等が広く見やすく、半面遠くが少し狭くなります。運転等には適していませんが、ホワイトボードやテレビ等室内程度の遠くはOKで歩行も問題ありません。中近は遠近を使っている人がより快適にデスクワーク等をするためにもう一本持つという感じです。

タウンというのは遠近と中近のあいだくらいのレンズで、よく言えば遠近より手元が見やすく中近より遠くが見やすい、言い方を変えれば、遠近より少し遠くの視野が狭く、中近より少し手元の視野が狭い。中近のように遠近と併用ではなく遠近の代わりになる感じです。

ルームというのは従来の近々レンズに近くデスクワーク専用に近いイメージです。一日中デスクワークや手元を見るといった状況で活躍します。

 

 

第4話「進化する遠近メガネ」

 

遠近レンズは、外面累進→内面累進→両面制御設計の基本設計の進化と、個々の使用者に合わせたカスタマイズ設計の進化により、広い視野と自然な見え方を実現してきています。広い視野とは、遠近レンズはレンズの横の方に収差と言ってユガミが発生するのですが、それをできるだけ少なくして、明視域を広くしていることです。

滑らかに度が変わる累進設計により、境目がなく遠くから近くまですべての距離にピントが合うのが今の遠近レンズですが、累進面は予めレンズの外面に作っておき、使用者ごとに異なる近視や乱視や遠視の度を注文後レンズの内面を研磨して仕上げます。これが一般の遠近レンズで外面累進レンズといい、低コストでの生産が可能ですが、同じ累進設計で個々の度に対応するため、基準の度からずれると性能にバラツキが生じるという欠点もあります。

外面累進に対して内面累進は、注文後累進面と個々の度数を全てレンズの内面で設計し生産します。複雑なレンズ設計の技術とそれを製品化する生産技術の革新により実現したレンズで、外面累進より視野が広く性能のバラツキもありません。

両面制御設計は内面累進技術をベースに外面で補正を加えることにより、レンズを通して見ることによる大きさや形のズレを補正して自然な見え方になります。

このような基本設計に加えてカスタマイズ化というのは、メガネの装用条件、フレームの形や目との距離や角度を測定してレンズ設計に取り込むことで、個々の使用者に最適の見え方になります。

当店では、ラインナップのスタートを外面累進から内面累進に切り替えました。基本設計は内面累進と両面制御設計、内面累進はベーシックとセミカスタム、両面制御設計はセミカスタムからフルカスタムまで取り揃えています。一番価格を抑えたレンズも内面累進なのでどのレンズを選んでも外面累進より良好な視界になっています。

 

第3話「遠近メガネとは」

遠近両用メガネはレンズの上の方に遠用部(遠くを見るエリア)、下の方に近用部(近くを見るエリア)があり、中間部(連続して徐々に度が変わるエリア)で結ばれています。境目はなく見た目は普通のメガネと見分けがつきません。遠近メガネは目線の上下移動で遠くから近くまでピントを合わせることができ、老眼時の視生活の質を飛躍的に向上させるメガネです。

 

 

遠近メガネの度について説明します。普段メガネをかけている近視や乱視の人には、同じような遠くを見るための度が遠用部に入り、普段メガネをかけていない正視や遠視の人には遠用部は度なしか遠視の度が入ります。近用部の度はその人が必要とする加入度によって決まります。人の目は近くを見るときには無意識に目の中のレンズ(水晶体)を膨らませて度を強め、近くにピントが合うようにします。これを調節力といい、この調節力の衰えが老眼です。具体的には手元33cmを見るためには+3.00の調節力が必要です。老眼の進み具合を測定し、例えばその方の調節力が+2.00の場合は遠近レンズで不足の+1.00を補います。この+1.00が加入度です。

快適な遠近メガネのためにはメガネと目の適正な位置関係が重要です。メガネが所定の位置より下がっていると近用部に目線が届かず近くが見づらくなります。逆に上がっていると遠方視で中間部に視線が入りボヤけた感じになります。また目とメガネの距離も重要です。遠近レンズにはレンズの横の方両側に収差といって少しぼやけたり歪んだりするエリアがあります。通常はこのエリアにはあまり目線が入りませんが、メガネが目から離れていると収差が視界に入って気になったり、近すぎると近用部に目線が届かなかったりします。それでメガネ店のフィッティング技術による適正な位置が重要になります。

 

第2話「健康的でクールな遠近メガネ」

手元の文字などが見づらくなってきたときの対策として、普段メガネを掛けていない人は、手元用のメガネ、いわゆる老眼鏡を使うのが手っ取り早い方法かと思います。また、近視で普段メガネを掛けている人はメガネを外して近くを見ます。いったん解決はするのですが問題もあります。

例えば買い物の時に商品説明や価格の字が小さい場合や薄い場合は意味不明なので老眼鏡を取り出します。掛けたままでは歩けないのでその後外すか鼻メガネにします。会議や商談や食事などでも、資料やメニューを見るときは老眼鏡が必要、ホワイトボードを見るときや対面の方と話すときは外したい、頻繁に掛け外すか、鼻メガネにして上目づかいで見るかになります。

近視で普段メガネを掛けている方は、先ほどの鼻眼鏡の方と逆のしぐさでメガネの掛け外しが必要になります。商品を見るときはメガネを外し、歩き出すときにはまた掛ける、資料やメニューを見るときも外しホワイボードはまた掛ける、こちらも頻繁に掛け外しが必要です。

遠近両用メガネがいいのは、掛け外しが必要ないことです。境目がなく見た目は普通のメガネですが、視線を上下に少し動かすだけで遠くから近くまでピントが合います。近視の方はメガネを遠近に変えるだけ、普段メガネをかけていない方は必要な時だけ遠近を掛けてもいいですし、ずっと掛けていてもいいです。

初めて遠近メガネを掛けるときだけ慣れが必要な場合がありますが、きちんと作られた遠近メガネなら比較的短時間で慣れられます。老眼で見づらいのを無理して見ることが疲労や肩こりの原因になったり、前述の鼻メガネやおでこメガネが年令を感じさせる仕草であることを考えると、遠近メガネは健康的でクールなメガネと言えます。

 

第1話「老眼について」

老眼とは、普段メガネをかけていない人が近くが見づらくなる状態、近視で普段メガネをかけている人はメガネを掛けた状態で近くが見づらくなる状態をいいます。

目の中の水晶体の硬化や筋肉の衰えで、遠くから近くまで自在にピントを合わせられなくなった現象ということでは全員同じなのですが、元々の目の特徴により、生活上の不具合が異なります。

目の特徴とは、若いころからメガネに無縁の「正視や弱い遠視の人」。遠くは少し見づらいので、運転等必要な時に掛ける「弱い近視の人」。遠くが見えないので常時メガネかコンタクトレンズを使っている「強めの近視の人」。皆さんもどれかに当てはまると思います。

正視の人は45才くらいから、遠視の人はもう少し早くから近くが見づらくなり、50代では対策が必須となります。手軽なのは老眼鏡ですが、掛けたまま遠くを見るとクラクラして歩いたりできず、遠近両用メガネに切り替えると生活の質がだいぶ向上します。

弱い近視の人は40代では近くは大丈夫ですか、50代になると近くが見づらいことがあり、50代半ばからは遠くも近くもぼやけた状態で生活しています。遠近を掛ければ遠くも近くもよく見える別世界になります。

メガネを常用している近視の人は、遠くがしっかり見えるメガネを掛けている人は45才くらいから、遠くの度を落としている人は50才くらいからメガネを掛けた状態で近くが見づらくなります。強めの近視の人はメガネを外して近くを見るにはピントが近すぎ、遠く用、近く用の2本使い分けるのは面倒なので、早くから遠近を掛けている人が多く、また初めての遠近も他の目より慣れやすい傾向があります。

メガネのフォーサイトでは、2万円台~3万円台の遠近両用メガネが売れ筋ですが、初めて遠近を試してみたい方もお求めやすいようセットで税込14,300円からご用意しています。

 

メガネのフォーサイト 丸山 毅

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