‘市民タイムス掲載 目とメガネの講座’ カテゴリーのアーカイブ
シニアの快適視生活講座
◇◇ 老眼とメガネ ◇◇
老眼には遠近両用メガネをお勧めします。なぜ遠近メガネか一言でいうと便利だからです。老眼になると普段メガネを掛けていない人は手元が見づらくなり、老眼鏡が必要となります。老眼鏡は近くだけにピントが合うので遠くは外して見る必要があり、掛け外しが結構大変で、それで掛け外しのない遠近メガネが便利です。また普段メガネを掛けている近視の人は老眼になるとメガネを外して近くを見ます。メガネを外すと遠くは見づらいのでこの場合も掛け外しが頻繁で、掛け外しのない遠近メガネが便利です。
遠近メガネ使用によるデメリットはありませんが、しいて言うならば最初に遠近メガネを掛けるときに慣れが必要な人もいます。この「慣れ」については老眼になり始めのうちに遠近メガネにすると簡単に慣れられます。老眼の進行が進んでから初めて遠近メガネを掛けると慣れるのに日数がかかる場合があります。
すでに遠近メガネを掛けている人が見づらさを感じる場合は2つ原因が考えられます。掛けているうちにメガネが緩んだり、ぶつけたりしてメガネがずれている場合です。遠近メガネは目とメガネ(レンズ)の位置関係が非常に重要で、メガネのずれは見え方に影響します。また老眼は進行するので3年くらいたつと度が合わなくなって見づらい場合があります。この場合近くが見づらくなりますが、老眼の影響で近視が少しやわらいだり、少し遠視気味になると以前より目の疲れを感じる場合があります。いずれもメガネ店に行けば確認できます。
50代後半以降は老眼もだいぶ進むので、場合によっては遠近メガネでのデスクワークや室内作業に不具合を感じる場合があります。このような時は遠近メガネと中近メガネを併用することにより改善します。60代中ごろには老眼は進み切る形で、その後見え方の変化は少なくなります。このころに以前より見づらさを感じる場合は白内障等の可能性もあります。
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◇◇ 第五回 メガネ購入後のアドバイス ◇◇
初めて遠近メガネをかけた場合や、今までと度や設計を変えた場合、すぐになじむ方も多いのですが、違和感がある方もいます。目は(脳の視覚野は)今までの見え方に適応していて、今までと違う見え方に慣れが必要な場合があることが原因です。そのためそういう場合は、適正に作られたメガネなら2、3日から1週間くらいで快適に使えるようになります。そういう期間を持った上でまだ違和感がある場合はメガネ店に相談してください。だいたいのメガネ店は3カ月程度保証期間を設けていて、仮にレンズを交換する必要がある場合も追加料金なしでできるところが多いと思います。
メガネを使っていると、メガネをぶつけてしまったり、踏んでしまったり、修理が必要になることがあります。メガネフレームは大雑把に言って、曲がった、外れた、といった内容は店で修理可能ですが、切れた、折れたといった内容は修理工場での修理になるか、素材によっては修理不可能です。レンズ自体のキズやコート剥がれやカケはすべて修理不可能なのでレンズ交換になります。
もう少し具体的に説明しますと、まず店でなおせる内容として、メガネは何か所かネジがついていますがネジがゆるんだり外れたりして、例えばテンプル(フレームのツル)が外れてしまったり、レンズが外れてしまってびっくりするかもしれませんが比較的簡単になおせます。また曲がってしまった場合もだいたいなおせますが、戻す過程で金属が切れてしまうこともたまにあります。下だけふちのないタイプでレンズが外れた場合もなおせます。店での修理は購入した店でなら大体のところはアフターサービスとして無料だと思います。
次に修理工場でなおせる内容ですが、まず修理工場でなおす場合は2週間程度かかる場合が多く、費用も修理内容によりますが三千円~八千円程度かかります。切れた、折れたという場合、金属フレーム、アセテートのフレーム(セルフレーム)の場合は修理可能ですが、形状記憶の合成樹脂の場合は修理不可です。修理工場へはメガネ店での取次になります。
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◇◇ 第四回 メガネ購入時のアドバイス ◇◇
遠近メガネや中近メガネを購入する際の注意点を説明したいと思います。
メガネフレームを選ぶとき、遠近メガネを快適に使うための機能面でのチェックポイントとして、メガネの上下の真ん中より少し上にご自身の瞳がくるくらいがベストです。だいぶ上の方に瞳がある場合は遠近の遠用部を狭く作らざるを得なくなるか、近用部までの視線が遠くなり、遠方視野が狭くなったり、近くが見づらくなります。また、あまり瞳が下の方にきていると近用部が狭くなります。
あとメガネが目にだいぶ近いと、これも近用部に視線がとどかなく近くが見づらくなりますし、まつ毛が当たったりしていると不快です。メガネが目から離れすぎていると側方の「収差」が目線に入り気になるかもしれません。これらはフィッテイングである程度改善できるので店の人に相談してみてください。
レンズの数字の基礎知識を覚えておくと参考になります。特にCという文字のあとの数字は乱視の強さで、近視や遠視の度にくらべ検眼者の裁量が大きな数字です。しっかり乱視補正をすると目がクラクラするということもあり、検眼者に確認したりテストメガネで体感するといいと思います。もう一つは加入度(ADD)という数字で、これは老眼の進み具合で変わる数字ですが、だいたい年齢に比例します。40代後半で0.75~1.00、50代前半で1.25~1.50、50代後半で1.75~2.00、60代前半で2.25~2.50、60代後半以降2.50~3.00、検眼では少し強めに出る傾向があり、強すぎると近くはよく見えますが慣れづらかったり視野が狭く感じる場合があるので、ご自身の年齢と平均的な加入度を記憶しておき実際の数字を確認していくといいと思います。
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◇◇ 第三回 メガネ購入時のアドバイス(フレーム編) ◇◇
メガネフレームの素材は、金属(チタン、合金)と樹脂(アセテート、合成樹脂)に分けられます。チタンは軽くて丈夫で、ベータチタンのようにバネ性(形状記憶)のあるものもあり、おススメの素材です。価格は合金より高めですが最近は比較的お求めやすい価格になってきました。合金はチタンより少し重量があります。また、金属アレルギーのある人には向いていませんが、安く購入できます。アセテートはセルフレームと言われて植物性の樹脂でできています。デザインや色が多様で見た目も美しく、低価格~ブランド品(一般に高価格)まで多様です。石油由来の合成樹脂は、軽くて弾力性があり、かけ心地がいいものが多く価格も比較的安価です。
産地は、低価格品の多くは中国で、日本製は比較的高価です。一部イタリアなど欧州製がありますがブランド品が多く高価です。産地にかかわらず有名ブランド品のほとんどは高価なフレームです。
性能や品質は、日本製は一般的には高性能で長持ちします。日本製のチタンフレームを選んでおけばほぼ間違いありません。中国製は品質にバラつきがあるような気がします。中には雑な作りのものも見受けられます。欧州製はデザイン重視だったり白人の顔の造作に適しているものなどが見受けられますが、非常にいい製品もあります。樹脂フレームでアセテートは鼻パットがついてないものが多いので掛けたときに鼻元のフィット感がよいか(ずり落ちないか)確認する必要があります。特に遠近や中近メガネにする場合はここのフィット感は重要です。合成樹脂はかけ心地のいいタイプが多いと思いますが、耐久性としては他に比べ低いものもあるので長く使う方は注意が必要です。
度の強い人に適さない横幅が広いフレームや、遠近に適さない縦幅が短いフレームなどもあるので、決める時は店の人に確認してもらうとよいかと思います。
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◇◇ 第二回 メガネ購入時のアドバイス(レンズ編) ◇◇
今回はレンズに関してメガネ購入時のお役立ち情報をお送りしたいと思います。レンズは大きく分けると2種類あります。一つは「単焦点レンズ」というもので、用途は近視や遠視や乱視補正、お手元用です。もう一つは「多焦点レンズ」で遠近や中近など老眼補正です。
両方に共通していることとしてレンズの素材区分があります。薄型や超薄型などと呼ばれていますが、主に5種類あり、レンズ素材の屈折率(1.50、1.56、1.60、1.67、1.74)の違いで、数字が大きいほど同じ度でも薄く軽く仕上がりますが、一般的には価格も上がります。ここでのコツは、度の弱い人は高屈折のレンズにする必要はないということです。素材に関しては、値段が高い方がいいだろうということではなく、その人の度に合った屈折率でいいということです。
あと遠近や中近についてのコツになりますが、遠近や中近は屈折率によるグレードの違いと設計によるグレードの違いがあり、設計によるグレードの違いの方が価格差が大きくなっています。ハイグレード品は性能もよく快適ですが、ハイグレードでなければダメということはありません。老眼の進み具合は初期(40代~50代初)、中期(50代)、後期(60代以降)となりますが、老眼の進行に伴い遠近や中近レンズの上部(遠くを見る度)と下部(近くを見る度)の差(加入度)をだんだん大きくする必要があります。初期で加入0.75~1.25、中期で1.50~2.00、後期で2.25~2.75、加入度が大きくなるとレンズの側方部(両端)の収差(ボケ、ゆがみ)が大きくなり明視域が狭くなります。この時にハイグレード品の方が快適な視界になります。初期の段階ではグレードの差による見え方の差は中期以降より少ないので、どうしてもハイグレードにしなくてはいけないということはないと思います。
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◇◇ 第一回 メガネ購入前の一般知識 ◇◇
今回のシリーズは、遠近や中近メガネを中心にメガネに関して、購入前、購入時、購入後にそれぞれ役立つ情報を月1回6か月間掲載させていただきますので、ぜひご参考になさってみてください。
早速、今回第一回は購入前の一般情報をお伝えします。
メガネ製作にかかわるのは、レンズメーカー、フレームメーカー、メガネ店です。
レンズメーカーはそれほど数が多くなく、HOYA、SEIKO、NIKON大手3社と中小の何社かです。大手3社で70%以上のシェアを占めます。メガネレンズは医療機器の扱いで、性能や品質はどれも一定水準以上でいわゆる粗悪品はありません。遠近や中近レンズの性能もどのメーカーもだいたい横並びのような感じがします。レンズに関してあまり当たりはずれはないと考えていいと思います。
一方フレームメーカーは比較的多数です。後の回で購入時のコツを詳しく説明しますが、フレームは素材や生産地によって性能に特徴や違いがあるので、店の人に相談するか、ご自身で絞り込んだ場合も最後に店の人に確認して決めた方がいいと思います。
メガネ店(松本地域の)は大きく分けると、①低価格指向の全国チェーン店、②一定価格(2万円前後)の全国チェーン店、③地元のチェーン店、④地元の小規模専門店になります。どの店でもすべての種類のメガネ(単焦点、遠近、中近等)が入手可能ですが、特徴や得意分野もあります。①は低予算で購入でき、比較的若年層中心、②③はメガネの種類や客層も多様でオールマイティ、④は取り揃えに特徴のある店があり、ハイセンスのフレームの店、高級ブランドを揃えた店、当店のように遠近や中近を得意とする店、などがあります。
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第6話「遠近メガネご購入時の概要」
遠近メガネを購入する場合のポイントを当店に限らず一般的な内容として説明します。
まずレンズの度を決める必要がありますが、眼科で検眼して処方箋を出してもらうか、メガネ店で測るか、遠近メガネもどちらでもOKです。気になる場合、眼科でなら白内障等も確認できます。メガネ店はワンストップで便利です。その際お使いのメガネは持参した方がいいのと、検眼時に質問されるので、どのような場面で見え方に問題があるか説明できるようにしておくといいと思います。例えば、スマホ等手元が見づらくなった、遠近を使っているがパソコンのモニターが見づらくアゴを上げて見て疲れる、等。
メガネフレームは店で選ぶのが一般的ですが、お持ちのメガネを使うこともできます。フレームは一般的に中国で大量生産したものは安価で、日本製や有名ブランド品は高めの設定になっています。
レンズもいろいろなグレードがありますが、違いのポイントは、強度レンズを薄く軽くする超薄型など屈折率の高いレンズは価格が上がります。また、遠近メガネは横の方に収差といってぼやけたり歪んだりするエリアがあり、通常気にならないように作りますが、老眼が進むと遠くと近くの度の差(加入度)を大きくする必要があり、50代後半くらいから加入度が2.00を超えてくると収差が大きくなます。このときハイグレードの設計の方が収差を抑えて作ることができます。
遠近メガネは特注でレンズを作るためお渡しはだいたい1週間後となります。また多くのメガネ店では保証期間を設けており、レンズを替えたりする必要がある場合でも3カ月程度は無料で行っている店が多いと思います。
第5話「遠近メガネの仲間たち」
遠近レンズの特徴である「累進面」を中心に遠近レンズの設計の説明を前回しましたが、新しい設計技術と生産技術により多様なレンズが発売されています。多様なレンズがある理由は、遠近メガネは日常生活全般をカバーするので基本これ一本でOKなのですが、デスクワークの時間が長くて目が疲れる等、生活の特定の状況をより快適にするためのメガネとして開発されてきた経緯があります。
最近のメーカー各社の傾向として遠近を含めて4種類の設計バリエーションを用意していることが多いです。SEIKOを例にあげますと、オールラウンド(遠近)、タウン、オフィス(中近)ルーム。
オフィスは従来中近レンズと呼ばれてきたもので、遠近設計に比べて中間部と近用部が広く設計されています。室内用メガネと呼ばれることもあり、デスクワーク等室内でのお仕事や生活で、遠近レンズに比べて手元やパソコンの画面等が広く見やすく、半面遠くが少し狭くなります。運転等には適していませんが、ホワイトボードやテレビ等室内程度の遠くはOKで歩行も問題ありません。中近は遠近を使っている人がより快適にデスクワーク等をするためにもう一本持つという感じです。
タウンというのは遠近と中近のあいだくらいのレンズで、よく言えば遠近より手元が見やすく中近より遠くが見やすい、言い方を変えれば、遠近より少し遠くの視野が狭く、中近より少し手元の視野が狭い。中近のように遠近と併用ではなく遠近の代わりになる感じです。
ルームというのは従来の近々レンズに近くデスクワーク専用に近いイメージです。一日中デスクワークや手元を見るといった状況で活躍します。
第4話「進化する遠近メガネ」
遠近レンズは、外面累進→内面累進→両面制御設計の基本設計の進化と、個々の使用者に合わせたカスタマイズ設計の進化により、広い視野と自然な見え方を実現してきています。広い視野とは、遠近レンズはレンズの横の方に収差と言ってユガミが発生するのですが、それをできるだけ少なくして、明視域を広くしていることです。
滑らかに度が変わる累進設計により、境目がなく遠くから近くまですべての距離にピントが合うのが今の遠近レンズですが、累進面は予めレンズの外面に作っておき、使用者ごとに異なる近視や乱視や遠視の度を注文後レンズの内面を研磨して仕上げます。これが一般の遠近レンズで外面累進レンズといい、低コストでの生産が可能ですが、同じ累進設計で個々の度に対応するため、基準の度からずれると性能にバラツキが生じるという欠点もあります。
外面累進に対して内面累進は、注文後累進面と個々の度数を全てレンズの内面で設計し生産します。複雑なレンズ設計の技術とそれを製品化する生産技術の革新により実現したレンズで、外面累進より視野が広く性能のバラツキもありません。
両面制御設計は内面累進技術をベースに外面で補正を加えることにより、レンズを通して見ることによる大きさや形のズレを補正して自然な見え方になります。
このような基本設計に加えてカスタマイズ化というのは、メガネの装用条件、フレームの形や目との距離や角度を測定してレンズ設計に取り込むことで、個々の使用者に最適の見え方になります。
当店では、ラインナップのスタートを外面累進から内面累進に切り替えました。基本設計は内面累進と両面制御設計、内面累進はベーシックとセミカスタム、両面制御設計はセミカスタムからフルカスタムまで取り揃えています。一番価格を抑えたレンズも内面累進なのでどのレンズを選んでも外面累進より良好な視界になっています。
第3話「遠近メガネとは」
遠近両用メガネはレンズの上の方に遠用部(遠くを見るエリア)、下の方に近用部(近くを見るエリア)があり、中間部(連続して徐々に度が変わるエリア)で結ばれています。境目はなく見た目は普通のメガネと見分けがつきません。遠近メガネは目線の上下移動で遠くから近くまでピントを合わせることができ、老眼時の視生活の質を飛躍的に向上させるメガネです。
遠近メガネの度について説明します。普段メガネをかけている近視や乱視の人には、同じような遠くを見るための度が遠用部に入り、普段メガネをかけていない正視や遠視の人には遠用部は度なしか遠視の度が入ります。近用部の度はその人が必要とする加入度によって決まります。人の目は近くを見るときには無意識に目の中のレンズ(水晶体)を膨らませて度を強め、近くにピントが合うようにします。これを調節力といい、この調節力の衰えが老眼です。具体的には手元33cmを見るためには+3.00の調節力が必要です。老眼の進み具合を測定し、例えばその方の調節力が+2.00の場合は遠近レンズで不足の+1.00を補います。この+1.00が加入度です。
快適な遠近メガネのためにはメガネと目の適正な位置関係が重要です。メガネが所定の位置より下がっていると近用部に目線が届かず近くが見づらくなります。逆に上がっていると遠方視で中間部に視線が入りボヤけた感じになります。また目とメガネの距離も重要です。遠近レンズにはレンズの横の方両側に収差といって少しぼやけたり歪んだりするエリアがあります。通常はこのエリアにはあまり目線が入りませんが、メガネが目から離れていると収差が視界に入って気になったり、近すぎると近用部に目線が届かなかったりします。それでメガネ店のフィッティング技術による適正な位置が重要になります。
第2話「健康的でクールな遠近メガネ」
手元の文字などが見づらくなってきたときの対策として、普段メガネを掛けていない人は、手元用のメガネ、いわゆる老眼鏡を使うのが手っ取り早い方法かと思います。また、近視で普段メガネを掛けている人はメガネを外して近くを見ます。いったん解決はするのですが問題もあります。
例えば買い物の時に商品説明や価格の字が小さい場合や薄い場合は意味不明なので老眼鏡を取り出します。掛けたままでは歩けないのでその後外すか鼻メガネにします。会議や商談や食事などでも、資料やメニューを見るときは老眼鏡が必要、ホワイトボードを見るときや対面の方と話すときは外したい、頻繁に掛け外すか、鼻メガネにして上目づかいで見るかになります。
近視で普段メガネを掛けている方は、先ほどの鼻眼鏡の方と逆のしぐさでメガネの掛け外しが必要になります。商品を見るときはメガネを外し、歩き出すときにはまた掛ける、資料やメニューを見るときも外しホワイボードはまた掛ける、こちらも頻繁に掛け外しが必要です。
遠近両用メガネがいいのは、掛け外しが必要ないことです。境目がなく見た目は普通のメガネですが、視線を上下に少し動かすだけで遠くから近くまでピントが合います。近視の方はメガネを遠近に変えるだけ、普段メガネをかけていない方は必要な時だけ遠近を掛けてもいいですし、ずっと掛けていてもいいです。
初めて遠近メガネを掛けるときだけ慣れが必要な場合がありますが、きちんと作られた遠近メガネなら比較的短時間で慣れられます。老眼で見づらいのを無理して見ることが疲労や肩こりの原因になったり、前述の鼻メガネやおでこメガネが年令を感じさせる仕草であることを考えると、遠近メガネは健康的でクールなメガネと言えます。
第1話「老眼について」
老眼とは、普段メガネをかけていない人が近くが見づらくなる状態、近視で普段メガネをかけている人はメガネを掛けた状態で近くが見づらくなる状態をいいます。
目の中の水晶体の硬化や筋肉の衰えで、遠くから近くまで自在にピントを合わせられなくなった現象ということでは全員同じなのですが、元々の目の特徴により、生活上の不具合が異なります。
目の特徴とは、若いころからメガネに無縁の「正視や弱い遠視の人」。遠くは少し見づらいので、運転等必要な時に掛ける「弱い近視の人」。遠くが見えないので常時メガネかコンタクトレンズを使っている「強めの近視の人」。皆さんもどれかに当てはまると思います。
正視の人は45才くらいから、遠視の人はもう少し早くから近くが見づらくなり、50代では対策が必須となります。手軽なのは老眼鏡ですが、掛けたまま遠くを見るとクラクラして歩いたりできず、遠近両用メガネに切り替えると生活の質がだいぶ向上します。
弱い近視の人は40代では近くは大丈夫ですか、50代になると近くが見づらいことがあり、50代半ばからは遠くも近くもぼやけた状態で生活しています。遠近を掛ければ遠くも近くもよく見える別世界になります。
メガネを常用している近視の人は、遠くがしっかり見えるメガネを掛けている人は45才くらいから、遠くの度を落としている人は50才くらいからメガネを掛けた状態で近くが見づらくなります。強めの近視の人はメガネを外して近くを見るにはピントが近すぎ、遠く用、近く用の2本使い分けるのは面倒なので、早くから遠近を掛けている人が多く、また初めての遠近も他の目より慣れやすい傾向があります。
メガネのフォーサイトでは、2万円台~3万円台の遠近両用メガネが売れ筋ですが、初めて遠近を試してみたい方もお求めやすいようセットで税込14,300円からご用意しています。
メガネのフォーサイト 丸山 毅
市民タイムス掲載 第2話 老眼の人に、仕事の効率アップができるメガネ
50代後半から是非おススメしたいメガネが中近メガネです。今回はなぜ中近メガネがオススメかを説明したいと思います。
遠近両用メガネを掛けて、デスクワーク等でパソコンを使っていて、以前より疲れを感じる方は多いと思います。それには理由があります。遠近メガネは遠くを見るエリア(遠用部)がメガネの上半分弱くらい、近くを見るエリア(近用部)が下3分の1くらいあり、それを結んでなだらかに度が変化する部分があります。この部分を累進帯と呼びますが、この累進帯のおかげで遠くから近くまでスムーズに焦点が合います。
ところがこの累進帯というのが上下のエリアに比べて少し狭いのです。まだ老眼がそれほど進んでいな
いときはパソコンの画面を累進帯と遠用部で見ますが、老眼が進んでくると累進帯と近用部で見ます。そうすると以前に比べて2つ疲れの要因が増します。1つは遠用部より近用部の方が狭いので狭いところから見ることになるということ、もう一つがアゴを上げた姿勢で見ることになるということです。
それで眼精疲労や肩こりが増し仕事等の効率が落ちます。
この状態を解決できるメガネが中近メガネです。中近メガネは遠近メガネより遠用部を狭くしてその分累進帯と近用部を広くしています。それで広い視野と楽な姿勢でのデスクワーク等が可能になります。遠近よりは狭いものの遠くも見えます。メガネを作る立場で言うと中近メガネは難易度の高いメガネです。メガネの使用環境等作る上でのポイント事項をしっかり確認して、適正な度数、設計、目との位置関係で作られていれば大丈夫ですが、そうでない場合は使いづらいメガネになることがあります。
市民タイムス掲載 第1話 老眼に引っ張られて目が変わる!?
目が変化する時期は3つあります。体の成長時、環境が変わったとき、そして老眼時です。一番大きく変化するのは体の成長時で、目の大きさ(奥行)や形によって近視や遠視、乱視になることがあります。遺伝の要素が大きいと言われています。環境要因として、パソコン作業など近いところを見る時間が長くなって近視になることもあります。これは環境が変わったからと言って必ずなるというものではありません。一方40代中ごろから全員がなるのが老眼です。これは遠くが見える状態で(近視の人はメガネを掛けた状態で)近くが見づらくなる症状で目のピント調節機能の衰えです。
老眼対策としては遠近両用メガネがおススメです。ところで、老眼の進行とともに近視がいくらか改善することがあります。私自身近視ですがここ何年かで近視の度合いが2段階弱くなっています。その結果どうなるかというと、使っているメガネで遠くの見え方は変わらないのですが近くが見づらくなります。この時、遠くは過矯正(近視改善によりメガネの度が強すぎる状態)で目が以前より疲れます。近くは老眼が進んで近くが見づらくなることに加えて、近視が改善したことによりさらに近くが見づらいダブルの状態になっています。
この状態は結構見受けられます。メガネの度を変えれば疲れ解消と近くが見やすくなるというダブル効果が期待できます。気になる方は確認できますのでご来店ください。
長年メーカー(セイコーエプソン光学事業部(当時))でメガネレンズの企画開発に携わり2009年メガネのフォーサイトを設立。以来多くの方に最適のメガネを製作。店舗業務の傍らメガネに関するセミナーや新聞でのコラムを執筆。メガネのフォーサイトはお手頃価格のメガネからブランドメガネまで市内最大級1500本のメガネを取り揃えています。
知っておきたい「遠近両用メガネ」の話 第6話
第6話 総集編 Q&A
今まで5回にわたって遠近両用メガネの解説をしてきましたが、今回はよくある質問にお答えする形で遠近両用メガネについて解説します。
Q遠近両用メガネを掛けると老眼が早く進むのではないか?
A老眼は遠くから近くへ自動的にピントを合わせる目の調節力の衰えで、加齢とともに進行します。遠近両用メガネはその人の(残っている)調節力を最大発揮して足りない部分をメガネで補うしくみなのでこれにより老眼の進行が早まることはありません。
Q遠近両用メガネは慣れづらいのではないか?
A慣れづらい場合は、度数や目とレンズの位置関係またはレンズ設計との相性になんらかの不具合が考えられます。それらが適切な遠近両用メガネは便利に使うことができます。しかし老眼になる前の若いころの視野と比較すれば狭さを感じる時があります。
Q遠近両用メガネはいくらくらいか?
Aひと昔前はかなり高額でしたが、最近は格安品で1万円台から販売されています。業界の統計を見ると昨年の全国平均は3万円台です。
Q遠近両用メガネで値段に差があるのはなぜか?
A一般にメガネの値段の差は、フレームではチタンなどの高性能素材、日本製、有名ブランドなどが価格が高めで、レンズでは薄く軽くする高屈折率素材、高機能コーティングなどで価格が上がります。遠近両用メガネは少しでも視野を広くするための設計上の競争が各メーカーで行われていて、その性能によっても価格に違いがあります。
Q遠近両用メガネと中近メガネのどちらがいいか?
A一般的には、日常生活のほとんどのシーンに対応できる遠近両用メガネがいいと思います。中近メガネはデスクワークや読書等が長時間の場合、だいぶ細かいものを見る場合、老眼が進んできて遠近両用メガネでパソコンの画面を見る時にアゴが上がって疲れる場合等に最適です。室内程度の遠さは見えますが、車の運転には適していません。
Q50代でも近くが見える人がいるが老眼にならない人もいるか?
Aその人は近視です。近視の人はメガネを外せば近くが見えます。しかし遠くはぼやけています。遠くが見えるメガネを掛けると近くは見えません。若いころのように遠くも近くも見えることはないので老眼です。老眼にならない人はいません。
Q老眼になったら遠近両用メガネを掛けた方がいいのか?
A見づらさを我慢していると、眼精疲労や肩こりになったり、眉間にしわがよったりします。遠近両用メガネを掛けることによる弊害はないので掛けた方いいと思います。今までメガネと無縁だった人は、メガネを掛ける事自体の煩わしさや、レンズを通した見え方、視野の狭さなどに違和感を持つかもしれませんが、必要ないときは掛けずに必要なときだけ掛けるという使い方で問題ありません。
Q老眼が進むたびにメガネを作り直さなくてはならないか?
A老眼は年齢と共に確実に進みますがゆっくりと進みます。一般的には3年くらいたつと遠くはいいのですが近くが見づらくなることがあるので、そういう場合は作りなおした方がいいと思います。レンズ交換だけできる店もあります。なお、生活していて見え方に急な変化がある場合は眼科の受診をおすすめします。
Q遠近両用メガネを掛ければ老眼になる前と同じように見えるか?
A遠近両用メガネは遠くを見るエリア、近くを見るエリア、それを結んで連続的に度が変わる中間のエリアがあり、視線の使い分けで遠くから近くまで全てにピントが合います。横の方に少しぼやけたり歪んで見えるところがあるので、老眼になる前と全く同じように自由にピントが合って視野も広い状態は再現できませんが、現在のテクノロジーでは老眼の視生活を快適に過ごすための一番いい道具と言えます。
Q遠近両用メガネ以外のメガネは必要ないか?
A日常生活全般には遠近両用メガネが必要ですが、老眼が進んだ場合や、仕事等で長時間近いところを見る、あるいは細かいものを見る場合は、さらに専用メガネを持つと楽です。また、スポーツ用に設計を工夫した遠近両用メガネや、外で色が着く調光タイプの遠近両用メガネ等もシニアの視生活向上に役立ちます。