シニアの快適視生活講座
◇◇ メガネレンズ開発の歴史 ◇◇
現在主流のプラスチックレンズや境目のない遠近両用レンズ(累進レンズ)は半世紀以上の歴史がありますが、1980年代から90年代が大型開発のピークで、ここ数十年は大きな開発はなされていません。主にセイコーエプソン光学事業部(現HOYA)で開発され、私事ですが1986年~2008年まで光学事業部に在籍し直接携わることができました。
具体的には素材と設計の大型開発がこの時期に集中し、その後はブルーライトカットなどのコーティング関係や設計のリニューアルなど小型の開発が中心になっています。
素材は、長らく屈折率1.50のモノマー(原料)が主流でしたが、80年代から90年代にかけて一気に1.60、1.56、1.67、1.74の順に開発され、より薄く軽く仕上がるようになりました。1.74のモノマーが開発されてから30年以上さらに高屈折のモノマーは開発されていません。現在の主流は1.60=薄型レンズとなっています。
設計は、単焦点は球面レンズ、遠近は外面累進が主流でした。80年代に、より薄くよりゆがみの少ない非球面レンズが開発され、90年代にさらに両面非球面レンズが開発されました。現在の主流は非球面レンズです。累進レンズは80年代に中近が開発され、90年代に内面累進が開発されました。この内面累進の誕生はその後を左右する大きな開発となっています。それまでガラス型に累進面を作りその転写により、(レンズの裏表の)表面に予め累進面(遠近設計)をもつプラスチックレンズを用意しておき、個々の注文に応じて近視や遠視の度数を裏面を研磨して仕上げていました。内面累進は累進面と近視や遠視などをすべての要素を一つの面に複合設計しそれをフリーフォームマシンで仕上げるという、設計と生産の技術革新がなされました。その後の新製品はこの技術の応用で、設計のリニューアルや使用者の個別パラメータを取り込んだインディビジュアル化が行われています。