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老眼とメガネの詳しい話

老眼て何?

それは、まず知ってそうでよくわからない目の基本から。

目はとても度の強いレンズです。度が強いというのは光の方向を変える屈折力が強いということで、ものを見るためには、目を通る光をグッと曲げて目の奥の網膜に集め、その情報を脳に伝える必要があります。虫眼鏡で太陽の光を一点に集められますが、目はその何倍も強いレンズで、ディオプター(D)という単位で表し、約60ディオプターです。

もうひとつ重要なことが、この屈折力を自動的に変えることができるということです。これを調節力といいます。遠くを見る時よりも近くを見る時は、目のレンズの度を強くしないと近くのものに焦点が合いません。では、どれくらい強くするのか?答えは3Dくらいです。遠くを見ている時の目の屈折力を60Dとすると、1D強くすると、目は屈折力61Dのレンズになります。簡単な計算式でどこに焦点が合うか計算できます。1÷1D=1.0mすなわち1m先のものに焦点が合いよく見えます。2D強くすると1÷2D=0.5mなので50cm先がよく見えます。3D強くすると1÷3D=0.33mで33cm先がよく見えます。3D強くすれば目は63Dとなり、手元がよく見えるということです。

さて、ここまで理解すると老眼のことがよくわかります。老眼はこの目のレンズの屈折力を強くする調節力の衰えのことです。これが衰えるから近くが見づらくなります。目にはレンズである水晶体という器官があり、水晶体を膨らませるとレンズの度が強くなり近くが見えます。加齢とともにこの水晶体を膨らませる力が衰えたり、水晶体自体が硬くなったりして、水晶体が膨らまなくなるのが老眼です。40代後半からそうなり、加齢とともに進みます。例えば、50才で調節力が+2Dだとすると、1÷2D=0.5mすなわち遠くから50cmまではよく見えますが、そこからさらに近いところは見づらくなります。例えば60才で調節力が+1Dだとすると1÷1D=1mまでです。

さて、それでは近いところを見るためにはどうしたらいいか?目自体の度を強くできないのならレンズ(メガネ)で補ってあげればいいということになります。手元33cmを見るためには調節力+3Dが必要でした。調節力+2Dの人は1D足りません。そこで+1Dのメガネを掛ければ+3Dとなり手元が見えます。

ちなみに、この調節力の衰え=老眼の進行はかなり年齢に比例し個人差が少ないものです。そう言うと、「私は(あるいは私の周りのあの人は)、60才だけどメガネを掛けなくて新聞を読んでいますよ。」という声が聞かれそうです。そのからくりは、目の性質によります。すなわち、近視とか遠視とかその話です。近視というのは、近くに焦点が合うので遠くが見づらい目です。もともとが60Dでなく63Dの目の人は近視です。3D強い目は1÷3D=0.33mに焦点が合います。その人が調節力を例えば+3D使ったときは66Dです。+6Dとは、1÷6D=0.16mで16cmに焦点が合います。この人は、33cmから遠くはボヤけます。それでは遠くが見えなくて、車の運転もできません。ではどうしたらいいか?マイナス3Dのメガネを掛ければ、63D-3D=60Dになり遠くがよく見えます。-3Dのメガネを掛けた状態で調節力+3Dを発揮すれば、63Dとなり手元も見えます。

ここでちょっと2点説明しておきますと、ひとつは調節力というのはプラスの力、目の度数を強くする力で弱くはできません。だからたとえば63Dの近視の目の人は66Dにできても、自力で60Dにはできません。もうひとつは、近視や遠視というのは目の度数と網膜までの距離との関係で決まるということです。平均的に60Dで眼球の大きさ等が平均的だと遠いものがちょうど網膜で結像するということで、例えば60Dでも網膜までの距離が長い人は近視になります。

では、話を戻して、老眼になった時に掛けるメガネのことを説明します。先ほどの話で、普段メガネを掛けていない人が老眼になって近くが見づらいのでメガネを掛けて近くを見えるようにしますが、そのメガネを掛けた状態で遠くを見るとどうなるか?目の度が60Dの人が+1Dのメガネを掛けると61Dの状態で遠くを見るということになります。これは1D分近視の状態で遠くを見ることになります。計算で言うと、1÷1D=1mで、1mから遠くはボヤけます。+1Dのメガネを掛けて近くは見えるようになったのですが、そのメガネを通すと遠くは見えなくて困るので、メガネの掛け外しや鼻メガネ状態が必要になります。

ちなみに、もう一人の63Dの近視の目の人は、調節力が+2Dに衰退すると、-3Dの近視用のメガネを掛けた状態で遠くは60DでOKですが、近く、例えば33cmのとこころは+3Dに対して調節力+2Dでは+1D足りません。-3Dの近視用メガネを掛けた状態では老眼により50cmより近くは見づらいのです。そこで、-3Dのメガネに+1Dして、-2Dのメガネを掛ければ近くはよく見えます。しかし、-2Dのメガネを掛けた状態では元々の63Dの目に-2Dのメガネで61Dで遠くを見るので、60Dに対して+1D近視の状態で遠くを見るため1mから遠くがボヤけます。そこで、-3Dのメガネと-2Dのメガネを状況のに応じて掛け替えるか、近くはメガネを外して、おでこに上げる等して見ます。

そこで便利なのが遠近両用メガネで、最初の人の場合、遠くは0D、近くは+1Dの遠近両用メガネにすれば、メガネを掛けたまま遠くも近くも見えます。次の近視の人の例で言えば、遠くは-3D、近くは-2Dの遠近両用メガネを掛ければメガネを掛けたまま遠くも近くも見えます。それぞれ、メガネの度は違いますが、この2人がそれぞれのメガネを掛けた時の見え方は同じです。遠近両用メガネの遠くと近くの度の差を加入度と言います。この場合、両方のメガネとも加入度は+1Dです。遠近両用メガネはその人の老眼の進み具合に応じて加入度が変わります。レンズの度は0.25Dが基本単位になりますが、老眼になりたての40代後半で加入度は+0.75~1.25くらい。50代で+1.25~2.25くらい。60代以降一般的な視生活では、加入度は+3.00くらいまでです。+3.00とうのは、その人の調節力が0でも33cmが見える度です。

メガネ店では、それぞれの人の調節力を測定して足りない分をちょうど補うような度のメガネを作ります。言いかえれば、その人の(残っている)調節力をしっかり発揮した上で足りない部分をメガネで補っています。メガネを掛けると老眼が進むのではと勘違いしている人もいますが、老眼の進行というのはだいたい加齢に比例し、個人差は若干です。脚の筋肉などは、衰えを遅らせるために日々のトレーニングなどで、60代でも30代なみの人がいるかもしれませんが、調節力はそういう訳にいきません。外見が若く見える60代の人でもさすがに30代に見られることは滅多にないのと同じで、個人差はあっても年相応の調節力の衰え、すなわち老眼になります。これは、学術的にもそうですが、私どもが日々多くの方を検眼していても例外がないことがわかります。すなわちメガネを掛けても掛けなくて老眼は進みます。一番問題なのは、見づらい状態で我慢して見ていることで、目にストレスがかかり眼精疲労や肩こり等の不調の原因にもなります。

今の遠近両用メガネは遠くを見るエリアと近くを見るエリアを連続的に度が変わって滑らかに結ぶエリアがあり、見た目は境目が無く単焦点メガネと変わりません。上下のわずかな視線の移動で遠くから近くまでピントが合います。また、使う人の目の状態や用途に応じて、各メーカーから多種のレンズが発売されています。メガネ店の重要な役割としては、それぞれの方に最適の度数やレンズの種類を選定することと、フィッティング技術などで目とメガネの正確な位置関係を実現することです。人は全体の情報量の80%を目から得ているとも言われています。老眼になっても無理をして見ているということは、ストレスがかかると同時に重要な情報を効率的に入手できないということです。適切な遠近両用メガネでスマートに仕事や生活の質を上げてみませんか?

市民タイムス8月掲載「知っておきたい遠近両用メガネの話」第4話

第4話「遠近両用メガネの価格のちがいについて」

遠近両用メガネの性能の差と、それに伴う価格の差について説明したいと思います。

フレームの価格差も大きいのですが、ここではレンズについて説明します。大きくは、素材やコーティングの差と、設計の差があります。このうち、素材やコーティングの差は比較的わかり易いと思います。薄型、超薄型のように、度の強いレンズを少しでも薄く、軽くすること、また、よりキズが付きづらいコート、青色光カットのコート等で、これによって一般的には値段も違ってきます。一方、設計の差についてはわかりづらいのではないかと思いますので、今回はこの設計の差を説明したいと思います。一言で言うと、遠近特有の周辺部の歪み(右図の両サイドの点線の外側の部分、なお、実際のメガネはこのような線はありません)や目線を横に移動させた時の像のユレをいかに少なくするかということになります。

遠近両用メガネの構造図

価格の差に関係してくる設計の違いは大きく3つのグループに分かれます。

1.外面累進タイプ(スタンダードタイプ)

累進(面)とは右図の中間の部分です。遠用部と近用部をつなぐところで連続的に徐々に度数が変化しています。この累進面により、以前のような境目がなくなり、また、遠くから近くへ自然に焦点が合うようになりました。メーカーは、多くの人に合うような累進設計を予めレンズの外面(表面)に施しておき、注文が入ると、裏面でそれぞれの人に合った、近視や遠視や乱視の度数を研磨して作り上げます。洋服で言えば、セミオーダーメイドです。

2.内面累進タイプ(カスタムタイプ)

累進面をレンズの裏面(内面)に施すと、歪みやユレが軽減されることは、光学理論上は早くからわかっていましたが、累進面と近視や遠視や乱視の設計を全て裏面に持って来ることは、設計上も生産技術上も困難でした。このことが、1990年代の中ごろからできるようになりました。当初はかなり高額なレンズでしたが、段々コストもこなれてきて、最近は内面累進タイプの遠近が増えてきました。洋服で言えばオーダーメイドで、注文後にそれぞれの人に合った設計でレンズを研磨します。

3.両面制御タイプ(カスタムタイプ)

最近新たに開発された設計で、基本は上記の内面累進タイプですが、外面にさらに内面と連動した設計を施しています。具体的には、レンズを通して物を見ると、倍率と形が微妙に変化します。この変化をできるだけ、元の大きさや形に近づけるような工夫が外面に設計されています。

上記の1→2→3の順により快適な視界が実現されます。特に、老眼が進んできて、遠近の度数の差が大きくなってくると、性能の差が明確になります。新しい設計や生産技術は、開発費や生産設備の新規投資等のコストが上乗せされるため、価格面でも差があります。

市民タイムス5月掲載「知っておきたい遠近両用メガネの話」 第1話

第1話 「遠近両用レンズには1人ひとりに最適の設計がある」

遠近両用レンズは、いろいろなメーカーから多種多様なレンズが販売されています。薄型化など素材やコートの種類もありますが、遠近両用レンズは、さらに設計の違いで種類が豊富になります。

私は、メーカーで長年メガネレンズの企画開発を行ってきました。遠近両用レンズは、見た目は普通の透明なレンズですが、上部に遠くを見るエリア=遠用部、下部に近くを見るエリア=近用部、それを結んで徐々に度が変わるエリア=中間部、が設計されていて、両サイドに少し物が歪んで見える=収差が出るエリアがあります。(図の点線の外側)ごく簡単に言いますと、遠用部や近用部を広くとると、収差の度合いが強くなります。こういう設計をハード設計と言い、一般に近視系の目の人に合います。一方、収差の強さを抑えて、全体にマイルドな見え方にしたものはソフト設計で、一般に遠視系の目の人に合います。(遠視系のメガネは凸レンズで、物が少し拡大され、収差を感じやすいため。)また、中間部の長さ=累進帯長は、1mm刻み、10mm~15mmくらいで、短いほど収差が強くなります。あと、遠用部と近用部の度の差=加入度は、0.25飛び、1.00(40代後半)~3.00(60代後半以降)くらいで、大きくなるほど収差が強くなります。中間部が短いと上下の幅の狭いフレームに対応できたり、遠用部や近用部を広く取れます。しかし、加入度が強くなると収差が気になったり、パソコンの画面などを中間部で見る時に狭さを感じます。では、できるだけ累進帯長を長くすればいいかというと、あまり長いと目線が近用部に届かないという問題がおきます。以上は遠近設計の基本ですが、さらに遠用重視の設計、近用重視の設計等、使う人の使用環境や目の状況に合うよう、多くのバリエーションがあります。

このようにレンズはいろいろ開発されていますが、メガネとして活かされるかどうかは、使用者の目の状況と使用環境を適切に把握し、最適な設計のレンズを選び、加工や調整で目とメガネの距離や角度等、位置関係を正確に合わせるといったメガネ店の技術にかかっています。私はメーカーでレンズの企画開発に携わりながら、こうしていろいろ開発されてきたレンズの特性を最大限活かした、最高のパフォーマンスの遠近両用メガネを自分の手で提供したいという思いが次第強くなっていき、6年前にメガネ店を開設しました。この間多くの方々に遠近両用メガネをお作りする機会を得て現在に至っています。

遠近両用メガネの説明

遠近両用メガネは40代後半以降の老眼をサポートする便利なメガネです。

老眼とは目の調節力の衰えです。調節力とは、物を見る時に、目の水晶体の形状を変化させて、遠くから近くまで瞬時にピントを合わせる働きで、加齢による水晶体の硬化等で衰えてきます。そうなると、遠くが見える状態で近くが見づらくなります。遠くが見える状態でというのは、近視の人は、老眼になってもメガネを外せば近くは見えますが、遠くは見づらく、メガネを掛けて遠くが見える状態では近くが見づらくなります。

老眼で見えづらいのを無理して見ていると、目が疲れたり、肩こりの原因になったりします。また眉間にしわを寄せて、印象が悪かったり美容的にもよくありません。

そこで、普段メガネを掛けない人は、近くを見る時にメガネが必要になります。近く専用の老眼鏡は、掛けると遠くは見えなくなるので、掛けたり外したりがめんどうで、つい鼻メガネになったりします。また、近視で普段からメガネを掛けている人は、おでこにメガネを上げて近くを見たりしますが、周りから見ると結構年齢を感じさせるしぐさです。

遠近両用レンズの構造図

そんな時に便利でスマートなのが遠近両用メガネです。今の遠近両用メガネは境目がなく見た目は普通のメガネと同じです。遠近両用メガネは視線の動きを利用して遠くから近くまでピントが合うように作られたメガネです。透明で見た目にはわからないのですが、その構造(設計)は図のようになっています。上部が遠くを見るエリア=遠用部、下部が近くを見るエリア=近用部、その2つのエリアを結ぶエリアが中間部です。この中間部は連続的になだらかにレンズの度が変化していて、累進帯ともいいます。そして、光学的にどんな遠近レンズでも両横に少し物が歪んだりぼやけたりする収差が発生します。レンズメーカーはこの収差をできるだけ小さくする開発を続けていますがなくすことはできていません。

遠近両用レンズの設計の基本について触れておきます。遠用部と近用部を広く取ると収差の出るエリアは狭くなりますが、収差の度合い(歪みやボヤケの度合い)が強くなります。このような設計をハード設計といいます。収差の出るエリアが少し広くなりますが、その度合いを弱くしたのがソフト設計です。ハード設計は近視系の人、ソフト設計は遠視系の人が使い易いと言われています。また、同じ設計でも、遠用部と近用部の度数の差=加入度、が強くなると、収差が大きくなります。加入度は0.25単位で1.00~3.00くらいで、老眼が進むと高加入度にしていかないと近くが見づらくなります。個人差がありますが、40代後半で1.00~ 50代で2.00前後、60代以降2.00~3.00 あと、累進帯長は10mm~15mmくらいが多く、長くなるほど収差は小さくなります。

遠近両用レンズはいろいろなメーカーから多様な設計のものが出されています。上記の基本的内容の他、遠方重視の設計、近方重視の設計など膨大な種類になります。それは、使用者の目の状況や使用環境を想定して用意されているためです。

メガネは、目とレンズの位置関係が重要ですが、遠近両用メガネは特に重要です。メガネ店では、フィッティングと加工の技術で、適正な目とレンズの距離、レンズの適正な傾き、正確な瞳の位置、などを作り出すと共に、その人に最も合ったレンズ設計を選定します。それで、遠近両用メガネを購入する時は、現在感じている、見る事に関する不具合点や、使用環境を説明できるようにしておくといいかと思います。例ですが、オフィスワークでパソコンを使うことが多く、パソコンの画面はどれくらいの位置。車の運転にも使う、等。

最後に、遠近両用メガネは使いづらいと感じて使ってない方もいると思いますが、その場合3点ほど原因が考えられます。1つは、何らかの原因でレンズの度数が合っていない場合、2つ目は目とレンズの位置関係が合っていない場合、3つ目がレンズの設計が合っていない場合です。この3つが適正に作られていて、慣れ方や使い方のコツがきちんと説明されていれば、特別な事情を除いて遠近両用メガネが使えないということはありません。

シニアの快適視生活

40代後半からの視生活を快適にするメガネとして、「遠近両用メガネ」「中近メガネ」「近々メガネ」「老眼鏡」があります。前者3つは、累進レンズというジャンルに入ります。累進レンズとは、1枚のレンズの中で、連続的に度数が変わる領域を持っているレンズのことを言います。

遠近両用メガネは、上部に遠いところを見るエリア、下部に近くを見るエリア、真ん中にそれを結ぶ中間エリア=累進帯(長さ11~14mm)が設計されています。目線を使い分けることで、遠くから近くまですべてに焦点があう万能メガネです。

では、何故、中近メガネや近々メガネというものが存在するのかということですが、遠くから近くまで自然に焦点が合うということは、30代くらいまでは、当たり前のことなのですが、これを可能にしているのが目の調節力で、無意識のうちに目(水晶体)を膨らませて、目というレンズの度を変えています。この調節力が衰えるのが老眼で、調節力がないと、焦点は一定の距離だけになってしまいます。それを補うのが、遠近両用メガネ等ですが、いろいろな生活シーンで若いころと同じような快適な視生活にするためには、道具としてのメガネを使い分ける必要があります。具体的には、デスクワークや読書等、近いところを見る時間が長い場合、また、かなり細かいものを見る場合、50代以降で調節力がだいぶ衰えてきた場合、等で、遠近両用メガネにプラスして、もう一本メガネがあると快適です。

遠近両用メガネは1枚のレンズの中で、遠くから近くまで焦点が合うように、各エリアが詰め込まれていて、その結果、遠くを見るエリアは比較的広いのですが、近くを見るエリアや中間エリアは少し狭くならざるを得ません。その狭いエリアを使って、長時間近いところを見たり、非常に細かいものを見るのは疲れます。また、調節力の衰えは年齢に比例して進行するので、それに合わせて、遠くと近くのレンズの度数の差も大きくしなくてはなりません。累進レンズは、レンズの横の方に「もの」が少し歪んで見えたり、ボヤけたりするエリアが存在し、慣れると気にならなくなりますが、度数の差が大きくなるほど、このエリアが大きくなります。したがって度数の差の弱いレンズよりも、各エリアのスペースが狭くなる、すなわち、近いところをより狭いエリアで見る事になります。

中近メガネはこのような時に快適に近くを見る事ができるように、遠近両用メガネより中間エリアや近いところを見るエリアを広くしたメガネです。特に中間エリアはかなり広く、24mmくらいあります。遠近両用に比べると、遠いところを見るときに少しもの足りなさを感じるかもしれませんが、室内程度の遠さは大丈夫なので、室内では掛けたまま歩いたりして過ごせます。パソコンを使うときに、遠近両用では目が疲れたり、アゴを上げる姿勢で首や肩が凝ったりすることがある場合、中近を使えばかなり楽になります。

老眼鏡は、累進帯がない単焦点レンズで、手元のみが良く見えます。メガネ全体どこで見ても手元はよく見えるので、読書や手元の作業等に便利です。しかし、手元だけなので、少し離れたところもボヤけ、掛けて歩くことは不可能です。

老眼鏡に少し奥行きを付けたのが、近々メガネです。老眼鏡だとパソコンの画面は、かなり近くにしないと見づらくなりますが、近々メガネは手元+少し離してもパソコンの画面くらいまで見えます。

このようにな特徴のある各メガネを上手を使い分け、効率良い仕事や、趣味を楽しまれている方がたくさんいらっしゃいます。見づらさや、見る事による疲れなどの不具合を感じていらっしゃる場合、メガネにより解決できるかもしれません。

今回は、シニアのメガネを説明しましたが、1人ひとりの目の状態や視生活環境は千差万別なので、その方に最適のメガネは、いろいろお聞きしながら、メガネの知識と技術を総動員して作りあげています。

スポーツ用遠近両用メガネ

遠近両用メガネは、遠いところを見るエリア(遠用部)、パソコンの画面やその少し先を見るエリア(中間部)、手元を見るエリア(近用部)、がレンズの中で上から順に配置されています。ゴルフ等のスポーツでは、このうち遠用部の見え方が一番重要で、この遠用部を広くクッキリと見えるようにした設計の遠近両用メガネが適しています。そして、近用部の度数(加入度)を通常の遠近より少し弱めることによって、近くのものは通常の遠近よりすこしだけ離して見ることになりますが、その分側方(レンズの横の方)の収差が少なくなり、目線を横に移動したときの遠近特有の像のユレや歪みが大分解消されます。さらに加入度を弱めるということは、近用部の距離が少し遠くなるので、ゴルフ等足元を見るスポーツでは一般の遠近より見やすくなります。屋外スポーツでは、さらにレンズに機能カラー(コントラストを上げたり、チラツキを削減する)を着ければ、芝目や起伏やボールが見やすくなります。

フォーサイトの遠近両用メガネ、その背景には・・・

40代中ごろからの老眼はやっかいなもので、遠くも近くも見えるのは当たり前だったのが、遠くがよく見えると近くが見づらい、近くを見やすくすると遠くが見づらい、見づらいとしかめっ面になったり、シワになったり、肩こりの原因になったりします。今までメガネの必要がなかった人は、老眼鏡を掛けたら遠くは見えない、掛け外しが面倒で鼻メガネに、でも鼻メガネは結構年齢を感じさせるスタイルです。

そこで、解決策としては遠近両用メガネ!しかし、遠近を使っている人の中にも見え方が気に入ってなかったり、そもそも遠近を試したが自分には合わないと思っている方も。

遠近両用メガネは40代後半以降の視生活を快適にすることに間違いありませんが、条件があります。

私は、メーカーでメガネレンズの企画開発を長年行ってきました。遠近両用レンズはいろいろな設計が工夫されメーカー間でしのぎを削っています。メガネ業界も、技術の進歩で自動化された検眼機やメガネ加工機で、マニュアル的にメガネが出来るようになってきました。しかし、メーカーがどんなにいい製品を開発しても、遠近両用メガネはメガネ店の技量で出来上がりに差が生じてしまいます。私はメーカーの企画部門にいた時に、ハード面でレンズを企画開発するだけでなく、メガネとして仕上げるメガネ店が最適の遠近メガネに仕上げるためのソフト面でのソリューション(解決)提案ができないか考えました。いい遠近メガネを作るためには、通常の検眼だけでなく、使用者がどういう環境で使用するか(例えばデスクワークが多く、パソコンの画面は少し離して見る等)や、今までどんなメガネを掛けてきたか、等の個別情報を基に、最適のレンズ設計を選定し、メガネとして適正な状態(目とレンズの位置関係等)で掛けられるようにフィッティング(調整)することが重要だからです。しかし、メーカーの立場でこのようなしくみを作ることは結局できませんでした。

それで、いろいろ考えた末に、自分自身でメガネ店を運営していいメガネを提供することを決め、6年前にこの店を開業しました。小規模な店ですが、自分の経験を活かして、ユーザー(お客さん)一人ひとりに満足していただける遠近メガネを、できるだけ価格も抑えて提供すること、遠近メガネの講習会を行うこと、などの活動を行っています。

遠近両用メガネを買いに行くときの準備事項

遠近両用メガネを買いに行く時の準備として、

1.普段メガネを使っている方はそのメガネをご持参下さい。

2.今のメガネでの(メガネをしてない人はしてない状態で)不具合点を説明できるようにしておいて下さい。

3.「見る」という観点から、仕事やオフでどのような時間が長いかを説明できるようにしておいて下さい。

4.眼科関係で何かあったら説明できるようにしておいて下さい。

では次に、それぞれについての具体例や、よい遠近両用メガネを作るために何故そのような情報が必要かを説明したいと思います。

1について、例えば、運転用とお手元用を使い分けている等、複数のメガネを使用している場合は、両方ご持参頂いた方がいいと思います。また、コンタクトレンズをお使いの方はその種類(ハード/ソフト)と度数。新しくメガネを作る場合は、それまで目が置かれてきた環境の情報は非常に重要です。目をお測りしてピッタリの度数で作ったとしても、今までお使いのメガネと大きく違う度の場合、慣れられないこともあります。また次の2と関係しますが、お使いのメガネでの不具合点を改善するためには、お使いのメガネの度数や、掛けたときの状態(目に対する位置関係等)を確認する必要があります。

2について、例えば、新聞の字が見ずらい。パソコンの画面が見づらい。また、もう少しテレビの画面をはっきりみたい等、ご希望点という観点でもよいかと思います。何故今のメガネでそのような不具合点が生じているのかの原因を1つ1つ追求し、検眼によりどの程度の改善(度数)が必要かを判断します。

3について、例えば、読書の時間が長い、パソコンの時間が長い、検査の仕事をしている、スポーツをしている等、目の置かれている状況の確認ですが、より具体的に説明していただけると、最適のレンズ設計を選んだり、度数を決めることができます。読書する時の目と本の距離、パソコンとの位置関係、目からの距離や画面の位置(目に対して正面か下の方か)、どれくらい細かいものをどの位置で検査するか、等。遠近両用レンズの設計は見た目にはわかりませんが、多くの種類がメーカーから用意されていて、メガネ店でこの中から最適なものを選べるかは大きなポイントになります。

4について、例えば、白内障の手術を受けたとしたらいつ受けたか等、お伺いできる範囲での確認。

最適のメガネを作るために、メガネ店のスタッフはこのような情報を伺いながらひとつひとつ判断していきます。遠近両用メガネは特に技術的要素の高いメガネですから、正確な情報が伝わるよう、予め上記のようなことを頭の中で少しまとめてから店舗に赴くとよろしかと思います。

 

遠近両用メガネの価格の差、性能の差

遠近両用メガネの性能の差と、それに伴う価格の差について説明したいと思います。

フレームの価格差も大きいのですが、ここではレンズについて説明します。大きくは、素材やコーティングの差と、設計の差があります。このうち、素材やコーティングの差は比較的わかり易いと思います。薄型、超薄型のように、度の強いレンズを少しでも薄く、軽くすること、また、よりキズが付きづらいコート、青色光カットのコート等で、これによって一般的には値段も違ってきます。一方、設計の差についてはわかりづらいのではないかと思いますので、今回はこの設計の差を説明したいと思います。一言で言うと、遠近特有の周辺部の歪み(右図の両サイドの点線の外側の部分、なお、実際のメガネはこのような線はありません)や目線を横に移動させた時の像のユレをいかに少なくするかということになります。

価格の差に関係してくる設計の違いは大きく3つのグループに分かれます。

1.外面累進タイプ(スタンダードタイプ)

累進(面)とは右図の中間の部分です。遠方部と近方部をつなぐところで連続的に徐々に度数が変化しています。この累進面により、以前のような境目がなくなり、また、遠くから近くへ自然に焦点が合うようになりました。メーカーは、多くの人に合うような累進設計を予めレンズの外面(表面)に施しておき、注文が入ると、裏面でそれぞれの人に合った、近視や遠視や乱視の度数を研磨して作り上げます。洋服で言えば、セミオーダーメイドです。

2.内面累進タイプ(カスタムタイプ)

累進面をレンズの裏面(内面)に施すと、歪みやユレが軽減されることは、光学理論上は早くからわかっていましたが、累進面と近視や遠視や乱視の設計を全て裏面に持って来ることは、設計上も生産技術上も困難でした。このことが、1990年代の中ごろからできるようになりました。当初はかなり高額なレンズでしたが、段々コストもこなれてきて、最近は内面累進タイプの遠近が増えてきました。洋服で言えばオーダーメイドで、注文後にそれぞれの人に合った設計でレンズを研磨します。

3.両面制御タイプ(カスタムタイプ)

最近新たに開発された設計で、基本は上記の内面累進タイプですが、外面にさらに内面と連動した設計を施しています。具体的には、レンズを通して物を見ると、倍率と形が微妙に変化します。この変化をできるだけ、元の大きさや形に近づけるような工夫が外面に設計されています。

上記の1→2→3の順により快適な視界が実現されます。特に、老眼が進んできて、遠近の度数の差が大きくなってくると、性能の差が明確になります。新しい設計や生産技術は、開発費や生産設備の新規投資等のコストが上乗せされるため、価格面でも差があります。

遠近両用メガネ相談会実施中

まちゼミ(松本まちなかゼミナール)で「遠近両用メガネのしくみと快適な使い方」をテーマにセミナーを行ったところ「知りたい事が聞けてよかった」というお声を多数いただきました。そこで、引き続き個別相談会という形で実施したいと思います。